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アインス宗谷の雑記ノート

アインス宗谷の雑記ノート

南薩線

 初めてひとり旅をしたのは、いまから25年も前、鹿児島への旅でした。
 当時、西鹿児島(現・鹿児島中央)駅まで、少々奮発して寝台特急「はやぶさ」のA個室寝台を使いました。

 西鹿児島から伊集院まで戻る普通列車の車内で、乗り合わせたおばあさんから、手作りと思われる大きな饅頭をいただきました。あんこがたっぷり入った直径15cmほどの黄色い饅頭で、もらったは良いのですが、飲み物を持っていなかったので、のどを詰まらせそうになりながら、「おいしいです」と、おばあさんに作り笑いした顔を向けました。
 あの時の顔、ひきつってただろうなぁ…

 伊集院からは、今は廃止となってしまった鹿児島交通の南薩線のディーゼルカーに乗りました。オレンジに紺の帯を巻いた塗装の古めかしい車両で、トンネルを通るとき、車内が暗く、揺れも大きかったことが印象に残っています。

 途中、なんとなく日置という駅で降り、あたりをぶらついていたら、小学生の女の子が「こんにちは」と声を掛けてきました。
 あとで知ったんですが、あの頃は、登下校の時、出会った人に挨拶をするように指導していた小学校って、結構あったんですね。
 同じ頃、三重県では、下校してくる小学生たちに「ただいま」と挨拶されたことがありました。

 当時、まだ20歳前で、世の中に慣れていない自分は、曖昧な笑顔しか女の子に返せなかったのですが、細い道の南薩線の踏み切りのところで、しゃがんで花を見ながら挨拶してくれた女の子の姿が、今も目に浮かびます。

 夕方、オレンジの車体が夕陽を浴びていっそう紅く染まった南薩線の列車で、枕崎を目指した車内のどこか寂しげな雰囲気は、今も胸の底にあって、忙しい日常、ふと思い出すときがあります。
(2005,6,2 改訂)


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