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この数年、ヨーロッパの有力フットボールクラブ、G14(ユヴェントス、ACミラン、インテル、R.マドリッド、バルセロナ、MAN.ユナイテッド、B.ミュンヘン、アヤックスなど)とUEFA(欧州サッカー連盟)の間では、ひとつのプロジェクトがテーブルに乗っています。 それは「ヨーロッパ・スーパーリーグ」、つまり、現在のチャンピオンズ・リーグを発展させ、欧州各国のビッグクラブが、年間を通じてひとつのリーグ戦を戦うというプラン。 もしこれが実現すれば、ミランvsバルセロナ、マンチェスターvsバイエルンといった試合が、毎週のように観られるようになるでしょう。フットボールファンにとっては夢のような話です。 5、6年前までは想像もつかなかったこんな構想が現実味を帯びて語られるようになった背景には、衛星を利用した有料TVの急速な普及と、EU圏内での選手移籍を事実上自由化した「ボスマン裁定」という、'90年代後半の欧州サッカー界に起こった二つの「国際化革命」があります。 有料TVの普及は、それこそ世界中から「聴取料」という形で金を吸い上げ(皆さんが払っているWOWOW、スカパーなどの聴取料もそうです)、「TV放映権料」としてクラブに還元する新たな「回路」を作り出しました。 実際、特に国際的な人気を誇るビッグ・クラブにとっては、リーグ戦の入場料よりも、欧州カップ戦などから得られるTV放映権料の方が、今や何倍も重要な収入源です。 また、試合が世界中で放映されることによって、これらのビッグ・クラブは、地元や自国の人々だけでなく、世界中の人々をファンとして獲得することになりました。 もうひとつの重要な要素として「ボスマン裁定」は、財政的に豊かな各国のビッグ・クラブがヨーロッパ中の有名選手を買い集め、「夢のチーム」を作ることを可能にしました。 最初に挙げたクラブの中には、レギュラーの中に自国の選手よりも外国人選手の方が多いチームも少なくありません。この点でも、欧州フットボール界の「国際化」は急速に進んでいます。 この二つの「国際化革命」は、欧州プロサッカーを、地域のサポーターに支えられた「都市のスポーツ」から、TVを通して全世界が楽しむことのできる「国際的なエンターテインメント・ビジネス」へと、急速に変貌させつつあるのです。 しかし、この「国際化革命」は、同時に、各国のリーグ内で、一握りの「ビッグ・クラブ」とその他の「弱小クラブ」との二極分化をさらに加速させてもいます。 国内リーグ上位を独占するビッグ・クラブは、欧州カップに戦出場してTV放映権料を手に入れ、その人気を生かしたサイド・ビジネス(マーチャンダイジング=グッズ販売など)でも収入を上げて、それをまたチーム作りに投資する。 一方、金も国際的な人気もない、地元のサポーターだけが頼りの弱小クラブは、それに太刀打ちできずますます弱体化する--という構図です。 こうして、各国のプロリーグでは、いくつかのビッグ・クラブによる寡占状態がさらに進行しつつあります。 その結果、各国のリーグ戦の多くのカードが、以前より魅力を失いつつあることは事実です。 勝敗が最初からはっきりしている(ように見える)試合を喜んで観る人はそう多くないでしょう。 そうなったときに、ビッグ・クラブが、国外には戦って商売になる相手がたくさんいるのに、どうして国内の弱小チームとばかり試合をしなければならないんだ、と考えるのは、ある意味で当然です。 そして「ヨーロッパ・スーパーリーグ構想」は、まさにそこから生まれたアイディアなのです。 「エンターテインメント・ビジネス」としての視点から見れば、確かにこれは魅力的なプランです。 ファンの立場からすれば、ユーヴェvsエンポリ、インテルvsピアチェンツァといった試合よりも、ユーヴェvsユナイテッド、インテルvsバルセロナといった試合を毎週観たいに決まっています。 スカパーだって、ブレシアvsレッチェなどという試合をわざわざ買って放映することに利点はないでしょう。 したがって、ビジネスとしての「市場」のことだけ考えれば、「スーパーリーグ構想」は、世界的な成功がすでに約束されているといっても大げさではありません。 もし実現すれば、欧州プロフットボールは、現在とは桁違いの規模を持った国際的エンターテインメント産業に発展することになるでしょう。 しかし同時に、この構想は、各国のビッグ・クラブによる弱小クラブの「切り捨て」という側面をはっきりと持っています。 というよりも、まさにそれが目的だと言った方がいいかもしれません。 国際的な「商品価値」を持つクラブだけが国を越えて集まり、世界規模の「エンターテインメント・ビジネス」の舞台として新たなリーグを設立しようというこのプランは、各国の国内リーグを二次的な位置に追いやり、ビッグクラブだけで世界規模のビジネス「利権」を独占しようとするものだからです。 これは、地域と都市を基盤とし、「どんな小さなクラブでも頂点にたどりつく可能性を持っており、またどんなクラブもそこから際限なく滑り落ちる可能性がある」という前提で成り立っている、これまでヨーロッパで100年以上かけて育まれてきた「文化としてのスポーツ」の否定です。 しかし、もはやプロフットボールが「文化」である以上に「ビジネス」であり、世界中にそれを支えるだけの潜在的な「市場」を持っていることもまた、否定できない事実です。 今のところ、この「スーパーリーグ構想」は、数の上では圧倒的に多い「弱小クラブ」の当然の反対、そして国別リーグのシステムを崩すことを望まないFIFAの反対(UEFAは乗り気)もあって、実現の見通しは立っていません。 しかし、それを求める「需要」が、世界的に高まっていること、そして今後も更に高まるであろうことは間違いない以上、近い将来、本当に実現に向かうことになる可能性も小さくはないでしょう。個人的には、そうなった時に、取り残された数多くの「弱小クラブ」や各国の国内リーグが衰退しないことを祈るばかりですが・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 2, 2004 12:45:29 AM
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