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2010/11/24(水)22:33

唄え五弦の琵琶よ:正倉院夢物語3

奈良夢小噺(11)

正倉院展に入るのに一時間弱、そして一番の目玉である五弦の琵琶を一目みようとする長蛇の列待ちが約一時間。 が、そんな長蛇の列をしり目に、後ろ側に回ると・・・・琵琶の表側は見えないが、裏の美しい螺鈿細工はしっかり見ることができた。 しかも、時間無制限w。 瑚「きれいだね~」 と、見ていた私の横で元大使様(元貴族様)がこれまたぼっつり 貴「これ、二つあったんだよね・・・。男琵琶と女琵琶みたいに対になっていたんだよ」 にょえ~~、びっくり← 貴「これ、男琵琶かな、女琵琶かな?」 瑚「あ、女琵琶の方みたいだよ。白っぽくて髪の長い女性がみえるし、女性ですって言ってる。・・・泣いているみたい・・・」 ************ 一瞬シンクロしたのか・・・、 あらしの中、真っ暗な海の中に沈んでいく、もう一つの琵琶の姿がみえた。 手を伸ばそうにも届かない、あの人の手も。 声にならない叫び。 互いに必死に心を結ぼうとするが、それすらもできない距離にあの人は沈んでいった。 海深く。 海深く。 ************ その場はそこでいったん離れ、薬コーナーに行ったが、先ほどの女性がどうも泣いて呼んでいるような気がして、再び戻ってきてしまった。 今度は、さつきのひかりさんと一緒に観賞。 さ「奇麗だね」 瑚「うん、あのね・・・、なんか泣いてい呼んでいるようなのが気になってまた来たんだけど・・・。 相方はもう、海に消えてしまったじゃない。 最愛の人を亡くした悲しみって、どうお話したらいいのかなと思ってね・・・。呼んでもらっても何か役に立てることがあるといいけど・・・」 とにかく、泣いている琵琶に話しかける。 すると・・・。 琵琶『しくしく・・しくしく・・、相方もすでにこの世になく、弾いてくれる者もなく、 楽器としての本生を生きることもかなわず・・・。悲しくて悲しくてたまらないのです・・・』 う~ん、それは楽器として命を受けたものなら、確かに悲しいよね・・・ けど、私は弾けないし← どうしようかと困りながらも、さつきのひかりさんに報告。 瑚「相方もいないうえに、数百年も弾いてもらっていなくって悲しがっているけど、どうしたらいいかなぁ」 さ「あ、じゃあ、最近、上の人で中国系の人が出てきたから弾こうか?。男性と女性とどっちがいいかな?」 おおおおおおおお~~~~、 さつきのひかりさんお上のお方に弾いてもらえるなら、こんなに素敵な事はないじゃないですか!!!!。 さっそく、琵琶さんに「男性の奏者と女性の奏者とどっちがいいですか?」と聞いてみると・・・。 琵琶『しくしく・・しくしく・・・。弾くのがうまい方・・・しくしく・・・』 ・・・・ ・・・・ 意外にしっかりしてるね。 さつきさんにその事を伝えると、「あ、じゃあ女性の方かな」との事。 これで、奏者が決まったので精霊移しを実施。 まず私に入って貰ってから掌に移ってもらい、さつきのひかりさんの手に「はい」っとバトンタッチ。 これで本当に行くのかなぁと心配していたのですが、 さつきのひかりさんが「弾いているよ」と、おっしゃるので一安心。 しかし・・・。 国宝の精の望みとは言え、なんとなく罪悪感。 けど、本体と精はつながっているから、精が満足したらきっと本体の輝きも、保存に対する持久力も大分違うよね。と・・・ い い わ け orz。 その後、貴族様と合流。 琵琶を何で弾いていたかの話になった。 貴「あの琵琶は手で弾くようになっているみたいなんだけど、バチで弾いた傷跡が残っているんだって」 瑚「へ~、そういえば、なんか白い象牙?のバチのイメージが一緒に浮かんでたわ。」 その後、さつきさんの実況中継によると、琵琶の希望で上の中国女性は何時間も弾かれていたよう。 さつきさんいわく、本当に久しぶりに弾かれるので、琵琶自身、自分がどうやって弾かれたら一番いい音が出るかわからなくなって、手やバチなど使いながら色々な方法を試して 『自分の音』をつかみたがっていたそう。 よかったね、 よかったね、 楽器として本望だね。 これからは、数百年分、思う存分唄ってください。 さて中途半端になったバチの謎だが、この記事を書く前にこんなイメージが出てきた。 ************ 嵐の海。 荒れ狂う波の間に、木の葉のように見える4隻の船が、頑張って母国を目指して命をかけていた。 かくいう間に・・・一艘の船が波間に消えた。 「沈んだぞ!!!!」 「頑張れ!!!」 「死にたくねぇ!!!」 「水をかき出せ!」 怒声と雨と波の音が入り混じる阿鼻叫喚の中、 一隻の船の舳先近くで、舞う方がいらっしゃる。 神への祈りを込めた命がけの舞い。 船の倉庫では、舞いの為に五弦の琵琶を奏でる貴族が一人。 琵琶は指でつま弾くタイプだったかもしれないが、 外で舞う彼女と天に少しでも届くようにバチで奏でたようだ。 『死ぬかもしれぬ時に、常識も何もないだろう? ただ目的を達する事に集中すべきで、手段はその為にこうずるものなのだよ。 運命を変えたいと願う強さを心にもつなら、固定観念と言うものを越えなければいけないんじゃないかな?』 のちに、酒を傾けながら貴族が語ったのを感嘆しながら聞いたような気がする。 命をかけた見事な巫女の神舞と、大使の心意気を乗せた琵琶の音が神の心の琴線に触れたのか・・・。 四隻あった船のうち、大使を乗せた船ともう一隻が嵐を乗り越える事が出来た。 当時、無事に海を渡り終える事は至難の業であり、 貴重な書物や物品は分けて積み込まれた。 全てを失うより、一部でも伝わることに賭けたようだ。 そして、海へと沈んだ2隻の中に、五弦の琵琶の片割れが乗せられていた。 ***************** バチの跡つけたの貴方だよ貴族様(爆笑

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