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福岡市個別指導塾慶應修学舎の記憶「石橋の思考」

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2025.05.04
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カテゴリ:日常

ある日、ふと川辺に立って、ゆるやかに流れる水を眺めていた。すると、ずっと昔に読んだエピソードが思い出された。レオナルド・ダ・ヴィンチが川の流れを観察し、そこから人間の心臓の弁が開閉する仕組みを導き出したという話である。

ニュートンのリンゴの話に比べるとあまり知られていないが、この逸話はどうやら事実らしい。強い流れのある狭い水路では、その出口において逆向きの流れ、いわば渦のような動きが生まれる。ダ・ヴィンチはそれを見て、血流と心臓の動きの関係性を直感したのだという。

科学は、壮大な実験室の中だけで生まれるものではない。自然の中で、身体を動かしながら、目を凝らし、肌で風や水の動きを感じる中で、ふとした発見に至ることもある。これはきっと、昔も今も変わらない真理だろう。

私はときどき、川の上流域でカヤックを漕ぐ。そう聞くと、ほとんどの人は「上流?すぐ流されて下ってしまうんじゃない?」と不思議そうな顔をする。でも実際には、数百メートルの区間を登ったり下ったりして、同じ場所にとどまり続けることができる。水流の中には、想像よりもずっと複雑で、繊細な動きがあるのだ。

たとえば、写真を撮ったときに岩の後ろの水面が静かであることに気づくことがある。どんなに激しく流れる瀬の中でも、岩の陰には水が動かずにたたずんでいる場所がある。そういうところを見つけると、まるで自分の中にも「静けさのポケット」があるような気がして、少し安心する。

意外なことに、下流域よりも上流域のほうが、漕ぎ上がりやすいことすらある。上流では水の勢いが一方向に偏っておらず、岩の配置や川底の形によって、自然にブレーキがかかるような構造になっていることがあるのだ。自然のリズムに身体を重ねてみると、自分の呼吸や筋肉の使い方までが、その流れと調和していくのを感じる。

自然をよく観察すれば、人間の身体の不思議も少し理解できる。なぜなら、私たちの身体も、自然によって形づくられたものだからだ。たとえ都会の中で暮らしていても、週に一度でも、月に一度でも、自然の中に身を置く時間をつくることで、人はどこか「整う」。

整うという言葉は、いまやサウナブームの影響もあってよく使われるようになったが、本来はもっと広く、深い意味を持っているのではないかと思う。川の流れのように、自然の中には「強いけれど優しいリズム」がある。そこに身を委ねると、知らず知らずのうちに、自分の中の乱れたリズムが調整されていく。

自然に学ぶというのは、単に理科的な知識を得ることではなく、心と身体の調律を取り戻すことでもあるのかもしれない。静かな川の流れの中で、ふとそんなことを思った。





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Last updated  2025.05.21 08:37:37
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