2007/09/02(日)20:19
名古屋の先生再び
一昨日の日記に愛知医大の「形成のひと」からコメントをいただきました
まずはコピーします
うきふねさん、私のコメントを引っぱり上げていただいてありがとうございます。そして、こんなに反応があって、びっくりしています。
私は医者になって16年目で、そのほとんどを愛知県内の基幹病院と呼ばれる病院で過ごしてきましたが、乳房再建は1年に1~2件ぐらいしかなく、海外と比較して何でこんなに少ないのだろうとずっと疑問でした。それで、一度、乳がんの治療の現場を見ておく必要があると思い、愛知県がんセンター乳腺科で短期ですが研修をしました。そこで分かったのは、形成外科医が乳がんそのものや、患者さんのことを理解していなかった(再建にしかかかわらないので)こと、乳腺外科の先生たちも形成外科でできることをそれほど分かっていないこと、そして、再建の希望を持っている患者さんは思ったより多いということでした。
私が愛知医大で診療を始めたのは今年の4月で、まだ半年も経っていませんが、乳腺外科との意思疎通も良好で、すでに数名の患者さんの手術を行いました。今後は、診療の質を上げていくことは当然として、東海地方の乳腺外科医や患者さんに対する情報発信も重要な仕事の一つと考えています。その意味でこのブログにコメントできたのは幸いでした。なんとか不毛地帯の名を返上できるように頑張ります。
今のところ、東海地方で脂肪のみの移植(穿通枝皮弁といいます)で乳房再建をやっているのは私だけかもしれません。私は穿通枝皮弁を始めて10年ぐらい経ちますが、いまだに非常にマニアックな手術ととらえられていて、形成外科医でも否定的な意見を持っている人がいます。慣れればそれほど難易度が高い手術とは思わないのですが・・。筋肉を含めて移植する手術ならば、できる先生は何人もいます。
この地方には若手で乳房再建をメインの仕事にしようとしている人もおり、そういう人たちと勉強会を始める準備をしたりしています。少しずつですがいろいろ進めております。
このコメントには乳房再建が抱えるいろいろな問題が含まれています
まず、基幹病院であっても乳房再建手術が年1~2例しか行われてないこと
形成外科医に乳癌患者に対する理解が欠けていること
乳腺外科医が乳房再建の理解が欠けていること
乳腺外科と形成外科の連携がなされてないことです
医療の狭間にあって乳房を取り戻したい患者が取り残されてしまう様子が良く分かります
実際、二期再建する患者さんはとても少ない
形成のひとさんが行っているのは即時再建なのではないでしょうか?
人は乳房がない状態に慣れるのです
そして人生において、自分のために時間とお金と気力を使う時期ではない時はやりません
家族のために、仕事の責任感のために、拾った命を費やします
余裕ができたらおっぱいも欲しいな~と思っているうちに、病院とも疎遠になってしまいます
名古屋に限ったことではないのです
これから乳癌手術を受ける場合、温存できない時は必ず再建を選択肢として提示できるようにしてほしい
全摘をしてしまった胸を抱えて生きている人には、たとえ胸筋がなくても乳房が取り戻せるという情報を、何らかの形で伝えたい
でも手術は怖いです
何かきっかけがないと踏み切れません
私は乳房再建のサポートを2年以上続けてきて、患者同士支えあう効用をしっかり実感しています
乳房再建は大変だけど、心躍る体験です
取り戻した後は「再建ハイ」と私たちが呼んでいる、幸福感が長期に渡って続きます
首都圏で横浜市大センター病院の患者さんと、慈恵医大の患者さんが病院の枠を超えて交流し
情報を交換し合ったり、お見舞いに行ったりしているように
名古屋の患者さんにもサポートグループができると良いと思います
二期再建を踏み切るきっかけは、先輩患者の話を聞いて、取り戻した乳房を見ることだと思うからです
愛知医大で頑張っている、「形成のひと」さんを、患者の立場から応援していこうと思います