つれづれ浮世草

2018/05/13(日)10:15

ホラーではありません

読書(45)

​1976~84年にかけて3分冊で刊行された埴谷雄高の長編小説『死霊』を読み終えました。かなり集中しても50日近くかかりました。 今までも何度か挑戦しましたが、仕事をしていてこれを読破するのは無理でした。 実はこの作品、難解な小説として有名なんです。我が国ではあまり聞かない観念小説、形而上学小説です。書いてあること自体も難しいですが、文章が独特で、一文が長い長い。もうお経を読んでるような気分になってきます。テーマは人間とは、生命とは、宇宙とは何か? 革命論あり、宗教論あり。とにかく一言では言えぬ壮大な世界が展開されます。 私は若い頃にこの本を買って、ずっと気になっていたので今回がんばって読みましたが、他の人にも奨めようとは思いません。でも不眠症の方にはいいかも(笑) こんな感じ。(第七章「最後の審判」のラスト近くの一文です。436文字あります。これって原稿用紙一枚以上!) そして、いいかな、この全宇宙史中まったく無敗無傷な時空の永劫の鉄の環の取り除き法をただただ思索に思索を重ねる無限大の苦痛の果てまでついに思索しつくした果てに、無敗無傷な筈の時空の最も弱い環の暗い秘密をこの俺こそが全宇宙史のはじめのはじめに創ってしまったことを思いもかけず思い出してしまったこの俺が、あっは、その暗い不可触禁断の密封事項を時空の側の愕然たる無限苦悩を無視したまま粛然と開いてしまえば、この「単一者」の俺からも、俺の永劫の伴侶たる「虚」からも、「満たされざる魂」の半ば以上が取り除かれてしまうのではあるまいかとこの上なく疑い危惧し思いあぐね怖れつくしながらも、はあて、いいかな、ぷふい、このいまのいま、「影の影の影の国」のお前達にも、また、全宇宙史にわたる「すべてのすべて」に向っても、その不可触禁断の至上至高驚くべきこの「時空」の暗い密封の堅固な封印をついについに完璧に開きに開くべく、あっは、この俺こそは、まさにまさに、黙りに黙りつづけて、黙っているのだ! ​

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