写真のミレーのバックパックは僕が手にした初めての大型パックで、モデル名はイェルバハ60/65といいます。多分20年近く前のものかと思いますが、本格的なバックパックを購入するのが初めてでしたから手にするまでにかなり悩んだ記憶があります。本当はベクターシステム(多彩なアタッチメントでバックパックをカスタマイズする)を採用し魅力的なバックパックをリリースしていたオスプレーや、バックバック界の鬼才ディナ・グリーソンが手腕を振るっていたディナデザインの大型パックが欲しかったのですが、両者とも価格がすこぶる高く手が出ませんでした。今でこそオスプレーのバックパックは機能とコストのバランスの良さをウリにして比較的リーズナブルに入手できますが、当事はメイドインUSAを貫いておりまして(現在は生産ラインを東南アジアに移している)その分価格もアッパークラス向け(?)の設定でした。ディナのバックパックはというと現在はミステリーランチとして入手可能ですが、そのありえない程の高価ぶりは周知の通りで、過去に遡ってもディナのバックパックというのは高嶺の花だった、という訳です。いえ、このイェルバハだって当事の僕としてはかなり思い切った買い物だった、ということは付け加えておきますが。
もともと僕には垂直移動の山岳志向は全く無く、なぜバリバリのアルパイン系メーカーであるミレーのバックパックだったのかは今となっては謎です。シンプルな構造でとにかく頑丈ですしクセのない寸胴スタイルなのでパッキングもしやすそうだった(実際しやすいですが)というのが決め手になったのだろうと思いますが、のんびりバックパッキングの旅にもフィットするニオイを僕の嗅覚が感じ取ったのかも知れません。今あらためてこのバックパックを見てみると、使われている生地の分厚さもストラップ類の太っとさも背面パッドの肉厚さも、全てにおいてヘビーデューティーな作りで軽量化などという発想は微塵も感じることはできません。現在の同じ容量の軽量バックパックとの比較であればおよそ2個分の自重を誇るでしょう。しかし強靭さに特化した割りきりの良さは中途半端な軽量パックに見慣れた今ではある意味とても潔いバックパックとも思えます。
さて、先日の巻機山で久々にこのオールドスクールなバックパックをフィールドに連れ出してみました。山頂までの往復登山でしたが山中一泊、テント泊装備一式と珍しく肉や生野菜といった食材を詰め込んだ為パックウェイトは18キロを超えてしまいましたが、ほとんど荷物の重さを気することなく快適に背負って歩くことができました。背面パッドが軟らか過ぎるのがちょっと気になったのと、ヒップハーネスに強度がもう少しあればしっかりと腰に荷重がかかり肩への負担がなくなるかも、と感じましたが一泊程度であれば特に問題視することでもありません。現在でも十分に機能するバックパックというのが実感です。
前ばかり、新しいものばかり追い求めていては時に疲れてしまうこともあります。ふと立ち止まって後ろを振り返ってみたい時、そんな山旅の相棒にはもってこいのバックパックなんだろうな、と思いました。
目立った経年劣化もほとんど見られず、時代を越えて独自の輝きを放つバックパックに敬意を払うとともに、これからも大切なアウトドアイクイップメントとして末永くつきあって行きたいと考えています。
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