冗談じゃないですから、ホント

2013/08/29(木)12:36

文化を創るのは歴史だけ

旅行(61)

 降りようとしている人を押しのけて乗ろうとする中国人が嫌だ。車で歩道を走りながら、クラクションを鳴らして歩行者を追いやろうとする中国人が嫌だ。やたらと大声で言い合っている中国人が嫌だ。北京に来て7日目。いまだに、この国に馴染めない自分がいる。かみさんは、中国人のそういうところがおもしろいんじゃない、という。中国に留学していたかみさんと、仕事で毎月台湾に行っていた僕との違いなのだろうか。  思慮深く、礼節を知る中国人。もしかしたら、そんなものは書物の中にしかないのかもしれない。古の日本の文人たちが、中国の書画や詩歌から勝手に作り上げた妄想でしかない。日本人の中国文化に対する一方的な片思い。現実に存在しないものほど、美しいものはない。実際、20年前に中国を訪れた自分だって、サントリーのコマーシャルに乗せられただけじゃないか。「この国では、時間はゆっくり流れている」。そんなわけないって。  道端で真剣に軍人将棋をしている中国人が好きだ。それを覗き込んで、端からああだこうだと勝手なことを言っている中国人が好きだ。道路で赤ん坊におしっこさせている中国人が好きだ。胡同の路地で自転車にぶつかって、大声で怒鳴っている中国人が好きだ。ぶつけられたおばさんが、ムキになって怒っている。ワラワラと野次馬が集まってくる。そんな中国人が好きだ。  考えてみたら、謙譲の美徳なんて平和な国の戯言なのかもしれない。この国では、誰もが自己主張をしないと生きていけない。施政者が次々と変わる社会にあって、自分の生活を守るのは自分だけなのだ。それは何千年もの歴史が作り上げた、一つの文化なのだ。  社会主義革命と文化大革命がなかったら、中国人は老人に席を譲るようになっていたか。おそらくなっていないだろう。老婆を押しのけて座ろうとし、老婆も大声で抗議する。そして、ワラワラと野次馬が集まってきては、口々にああだこうだと言い出す。それが中国であり、それが中国人であり、それが中国人の文化なのだ。  列を作って並ぶのも文化なら、人を押しのけて乗るのも文化。フォークは左手に、ナイフは右手に、なんてこうるさい英国人家庭教師じゃあるまいし。四本脚のものなら、テーブル以外は食べる。二本脚のものなら、親以外は食べる。上品なマナーなんて、額に入れて飾っておけばいい。  社会主義革命も文化大革命も、文化を破壊することなんてできやしない。文化を破壊し、文化を創造できるのは、人々の日々の生活であり、日々の生活の積み重ねが歴史となる。100年たっても、中国人は人を押しのけているかもしれない。あるいは列を作って並んでいるかもしれない。自らの権利を声高に主張しなくもよくなれば、新しい文化が創造されることもあるだろう。  そう考えると、少しばかり中国人がわかってきたような気がするとは言っても、あの荒っぽいフットボールだけは、御免蒙りたいけどね。  今日は、いよいよかみさんと合流。もうまもなく、僕の北京一人旅は終わろうとしています。明日は天津。川崎フロンターレの試合が楽しみです。 ----------------- sent from W-ZERO3

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