やっぱりお金がすべてか
2015年から、J1リーグは、2ステージ制+ポストシーズン制を導入することが決定された。正確に言うと、2ステージ制+スーパーステージ+チャンピオンシップなわけだけれど。なぜ、このように大会方式が変更になったのかが、いまひとつわからない。そこで、Jリーグの中西大介競技・事業本部長のインタビューと川崎フロンターレ代表取締役社長 武田信平氏の「J1リーグ大会方式の変更について」の説明会から、まとめてみることにした。
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●現状認識
・テレビ視聴率の低下
→2006年に3.9%とれていたのが、2012人には3.1%に低下
・地上波でのテレビ放映の減少
→2006年に17試合放映されていたのが、2007年には7試合に減少
・スポーツへの関心度の低下
→Jリーグに関心のある人 2006年は46%、2012年には30%台
・Jリーグの平均入場者数
→J1 2008年は19,278人 2012年には17,566人
→J2 2008年は7,072人 2012年には5,805人
・クラブごとの平均収入
→2008年は4億5千万 2012年が30億7千万
まとめ:さまざまな指標が右肩下がりになっている。
このままだとお客さんの減少に歯止めがかからなくなる可能性がある
Jリーグは、2008年をピークにして、それ以降は緩やかな下降線を抱いている。これはJリーグに限ったことではなくて。プロ野球でも同様のことが言えて。視聴率、地上波でのテレビ放映が減少している。社会全体として、スポーツへの関心が下がってきている。プロ野球の視聴率も下降気味ではあるが、Jリーグに比べれば倍くらいの開きがある。Jリーグの方がより大変な状況にある。このままでは、顧客は継続的に減少していくことが考えられる。
●課題点の抽出
・放映権料、Jリーグのスポンサー、協賛金の契約
→2013年度で契約が切れ、2014年度から新規の契約を締結
→現状のままでは、10数億のダウンが見込まれている
・Jリーグのライセンス制度
→3年連続赤字だとライセンス剥奪
→債務超過をしてしまうと一発でアウト
Jリーグの放映権料、スポンサー、協賛金の契約は、2013年で切れるため、新たな契約を結ぶ必要がある。現状のままでは10億円の減少となり、それは直接J1、J2クラブへの配分金が減少することになる。
●課題点解決の方向性
・スタジアムにお客さんを呼ぶ
→入場料収入が増加、スポンサー収入も増加
・試合の質を上げる
→選手の質の向上。チームの価値を上げ、試合の価値を上げる
→スタジアムの質の向上
現状を考えると、何らかの手を打って下げ止まりをさせて、上昇に転じる必要がある。そのためには、スタジアムに人を呼ぶことが必要。スタジアムに人を呼ぶことによって、入場料収入が増加するのはもちろん、スポンサー収入も増加する。
スタジアムに人を呼ぶためには、選手の質の向上、スタジアムの質の向上などで、試合の質を上げることが重要となる。
●課題点解決のための具体的な手段
・メディアへの露出と若手の育成への集中投資
・投資のための原資の確保
→2ステージ制+スーパーステージ+チャンピオンシップの導入
試合の価値、質を上げるためには、ばらまきをしても意味がない。メディアへの露出と若手の育成に集中投資を行う。集中投資するためには原資が必要で、その原資を確保するために今回の大会方式の変更、すなわち2ステージ制+スーパーステージ+チャンピオンシップの導入に踏み切った。
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だいたい、まとめてみると以上のようなことかなと。現状認識については、意外な感じ。確かに地上波でのテレビ放映は少ないし、視聴率も稼げないだろうと思う。ただ、スタジアムへ足を運んでいる自分としては、平均入場者数が落ち込んでいるというのは意外。等々力競技場では、ほぼ毎試合満席で。むしろ、観客は増えているんじゃないかとさえ、思っていたくらい。
課題点の抽出については、やはり2014年の10億円の減少というのが大きい。分配金の減少は、J1で1クラブあたり5千万、J2で1クラブあたり2千万くらいが減るという。おそらくJリーグ側としては、2015年に大会方式を2ステージ制+ポストシーズン制に変更するということで、2014年の契約更改を優位に進めたいという目論見があったのだろう。このことは武田信平社長も認めていて。「実はテレビ局からの条件もありました」と語っている。
今回の大会方式の大幅な変更は、いろいろなことが言われているけれど。実はこの2014年の契約更改時だったという点が大きい気がする。10億円のダウンになるか、10億円のアップになるか。このままなら分配金が減るけど、それでもいいのか。こう脅されると、クラブとしては2シーズン制+ポストシーズン制という大会方式の変更に賛成するせざるを得ないのもわかる気がする。
問題点解決の方向性として、スタジアムに人を呼ぶこと、試合の価値、質を上げるということには異存はない。ただ、スタジアムに人を呼ぶためには、平日開催を減らすことが必要だし。試合の価値、質を上げるためには、試合数の削減が必要になってくる。これが2シーズン制+ポストシーズン制の導入とは、完全に矛盾してくる。
最後の課題点解決のための具体的な手段。メディアへの露出を増やすことと、若手の育成には賛成。それはJリーグとしてやっていかなければならないことだと思う。ただ、そのための原資の確保が、2シーズン制+ポストシーズン制しかないのかどうか。また2シーズン制となると、各ステージが比較的短い期間となるため、即戦力が求められる。これは若手の育成とは、真逆のことのように思える。
それでも、2014年の新規契約を結ぶためには、実行委員会としては大会方式の変更を飲むしかなかったんじゃないか。そんな気がしてくる。大会方式の変更が最後は駆け足で決まったことに対して。中西大介競技・事業統括本部長は、こう語っている。「大会方式を変更した場合、スポンサー料やテレビ放映権料をかき集めたら10億円程度。合わせれば20億円の開きがあった。反対していた実行委員がオセロみたいにひっくり返った」。「14年からの契約にあわせて決めなければならなかった」。悲しいけれど、やはりお金がすべてか。