筆墨を友として・・・・・書作家・梅原千鶴

2009/03/04(水)20:37

梅花富士

芸術(51)

 昔から『1月は往く、二月は逃げる、3月は去る』と言われています。  早いもので、今日で2月ともお別れです。  日本絵画が印刷されているこのカレンダーは、今年は堅山南風先生の作品です。  梅が富士の姿と共に描かれているこの素晴らしい絵とも『今日でお別れ』です。  カレンダーの最後に、南風画伯の年譜が書かれています。  1歳未満で母が落雷により死去、5歳で父親とも死別して祖父に育てられるも、高等小学校を中退して家計を助けたと記されています。  23歳で画家を志して東京に出て、若くして世間で認められ、文化勲章もうけておられながら、目指すものの大きさ高さゆえに、90歳を越えてもなお、苦しみ通されたようです。  画業は天命と観念し、上手な絵描きにならなくても自分器量だけ描けたらいい『知足安分』と自身をなだめて、画業70年誠実に描き続けられたのです。  晩年は、邪心の無い『子供の心』になりたい……と願われたように、作品から天衣無縫の境地に達しつつあったことが窺い知れる、と結ばれています。  芸術家の心のあり方に感じ入って、身の引き締まる想いでこの絵と『さよなら』しました。

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