『世界でいちばん不運で幸せな私』
■原題 『JEUX D'ENFANTS(仏)』 『Love Me If You Dare(英)』 ■監督 ヤン・サミュエル ■キャスト ジュリアン:ギョーム・カネ ソフィー:マリオン・コティヤール ■ストーリー :★★★☆☆ ■映像 :★★★☆☆ ■音楽 :★★★★☆ ■総合評価 :★★★☆☆-------------------------------■コメント■-------------------------------2004年11月。この機会を逃したら見に行けない!と、ボジョレー解禁日に午後休を取ってまで見に行きました。試写会情報が流れた時からずっと見に行きたかったんだよね~。 まず、宣伝ポスターにやられた!か、かわいすぎる!色使いがとてもおしゃれでおもちゃ箱のよう。 それもそのはず。監督をしたヤン・サミュエルはイラストレーター・漫画家・絵本作家といろいろな顔を持つ人です。これが長編デビューとなるらしいんだけど、フランスでは公開初日に興行成績トップになったそうな!幻想的な作品の仕上がりから、ティム・バートンと比較されることが多いようですが、あちらは影の黒とか雪の白とか空の青とか固体のものひとつひとつの色を印象的に表現するのに対し、(シザーハンズのラストの雪なんてとても印象的でしたね。)こちらは虹色の色使い。グラデーションといった感じです。子供の頃の空想シーンなんて、「飛び出す絵本」のようにメルヘンチック。絵本作家のバックグラウンドをもつだけあります。-------------------------------■ストーリー ■-------------------------------文章にすると至ってシンプル。主人公の少女と少年の様子を30年にわたって眺めていきます。ホームページやパンフレットにこういう案内文がある。 『これはある1つの“ゲーム”にとらわれた2人の長い長い“愛のお話”です。』だけど単純な初恋ストーリーで終わらないのがフランス映画!ソフィーとジュリアンは幼なじみ。ソフィーはポーランド移民の家庭に生まれた女の子。学校ではそれが元でいじめられっ子。ジュリアンは大好きなお母さんが病気で寝たきりになりがち。父親からは理解されず、寂しい思いをしている男の子。こんなふたりがはじめた「ゲーム」。 『「ゲーム!!のる? のらない?」「もちろんのるさ!」 相手に「条件」を出し、それがクリアできれば次は相手の番。』先生に汚い言葉を使うは、お姉さんの結婚をぶち壊すわ、辛い現実から逃げ出すようにこのゲームにのめりこんでいきます。 『お互いのことを好きだと認めるということを除けば何でもやった。』 そして迎えるラスト。ハリウッド映画なら、あたくしの大好きな『恋人たちの予感』のように 「10年たって、お互いが一番大切だとわかりました。終わり。」となるのでしょうが、そこはフランス映画。一筋縄ではいきません。ま、ラストに関しては賛否両論でしょうなぁ~。私も見終わった後には「え!?なんで!?」と思いました。今となっては、「それもアリなのかなぁ~」なのですが。ラストは意見が分かれるところなので、「面白いから絶対見て!」と素直に薦めにくい映画であります。「大人のおとぎ話」と評されていたけど、「自分のやりたいこと」よりも「いかにまわりに迷惑をかけないか?」を重点に置く「自己責任論」が生じる日本人にはとうてい理解できない世界かもしれません。ポスターのデザインに魅かれ、デートムービーとして見られた方。・・・ご愁傷様です。悪い映画ではないのですが、こちらの期待を裏切ってくれてるのですよ。-------------------------------■ここが見どころ! ■-------------------------------2人が始めたゲームは、子供の時と、彼らが思春期を迎えた後では質が変わっていきます。子供のときは ・校長室でお漏らしをしろ! ・お姉さんの結婚式をぶち壊せ! どちらかというと、大人を困らせるために、困っている大人を二人であざ笑うかのようないたずらを仕掛けていきます。それが思春期以降では ・(自分の気に食わない)女と寝てイヤリングを取って来い (指令 by ソフィ) ・試験の当日に服の上に下着をつけてプレゼンしろ (指令 by ジュリアン)と、相手に恥ずかしい思いをさせ、陥れるようなゲームを次々と仕掛けます。お互いのことを大切に思っていて、代わりは他にはいないということを痛いほどよ~くわかっているのに、わざと相手を辱めるようなことをさせる。それも相手に男/女の存在があるときは特にひどい。う~ん。愛情の裏返しなのでしょうか!?イタズラの対象が「大人たち」から「自分たち」へと変わっていきます。学生、社会人になって、子供ができて・・・と、足かけ30年を追っていくのですが、最後のほうは「なんでこういうふうにしか愛情を表現できないの!?」と切なくなります。-------------------------------■ キャストについて ■-------------------------------ソフィー役のマリオン・コティヤールがいいですね!ソフィーの子供時代を演じたジョゼフィーヌ・ルバ=ジョリーもさらにいい!子役から大人役に移った時って抵抗感があるもので、この監督はどういう風にするのだろう?と思ったのだけど、 ソフィーもジュリアンも、役の移り変わりはとても自然でした。この子達が大きくなったら、こういう風になるんだろうなぁという想像通り。特にソフィーのキャストは、ちょっとコケティッシュでクレイジーなソフィーのキャラが子役時代から十分に発揮されていて、子役から変わってもぜんぜん違和感がありませんでした。-------------------------------■ 音楽について ■-------------------------------「バラ色の人生(La Vie En Rose )」がいろいろなバージョンで映画を彩ります。この音楽がまた良いのよね~。「バラ色の人生」はシャンソンの女王といわれるエディット・ピアフの代表作。聞き飽きた感もあるくらいのスタンダード・ナンバーですが、映画を見終わった後は思わず口ずさみながら出てきたくなるくらい。見終わった後にHMVに駆け込んだのですが、ありませんでした・・・。ネット買いしかないか・・・。久しぶりにサントラもほしくなるような映画に出会いました。-------------------------------■ 英語の台詞 Check it out! ■-------------------------------今回はフランス映画なので、英語の台詞チェックはありません。その代わりと言ってはなんですが、タイトルについて。 原題は『JEUX D'ENFANTS』。邦訳すると『子供たちのゲーム』。英語タイトルは『Love Me If You Dare』。日本語は『世界でいちばん不運で幸せな私』原題は『JEUX D'ENFANTS』。邦訳すると『子供たちのゲーム』。これはこれで、映画そのまんまのタイトル。大人になっても大人になりきれず、子供の頃のゲームをそのまま引きずっている彼らの様子を表現しています。英語タイトルにある「dare」には 「あえて~する」とか「思い切って~する」っていう意味があり、時には皮肉的な言い方にも使用される。受験英語の例文にでも 「How dare you say such a thing!?」という表現がでてきます。 「よくそんなこと言えるわね(怒)」ってニュアンス。『Love Me If You Dare』には「やれるもんならやってごらん。」っていうような挑むような感じがします。あたくし的に訳すと「好きになれるもんならやってみたら?」。このタイトル自体がゲームに挑む二人の姿勢みたい。反対に、日本語のタイトル『世界でいちばん不運で幸せな私』は、主人公の二人の「時間の流れ方」を表現しているようで、あたくしはこちらのほうが好きですね。「お互いを想い合い、大切に思ってるんだけど、どこかタイミングが合わなくてすれちがいばかり。 いろいろ回り道しちゃったけど、最後はやっぱり私たちって幸せだと思わない?」という感じ。さてさて。どのタイトルがぴったりくるでしょうか???------------------------------- ■ 総評 ■-------------------------------好きな映画ではありますが、単純なハッピーエンドストーリーではないので、ポスターに魅かれてデートムービーとして見た方達は、気まずかっただろうなぁ・・・。他の人には薦めにくい・・・ 。特に、ソフィーがジュリアンを振りまわす様子は、男性にとってはお怒りモードフルスロットルでありましょう。見た人からぜひ感想を聞いてみたい!