映画と英語の雑多な日々

2005/09/20(火)22:51

『オペラ座の怪人』

洋画 ドラマ(5)

 ■原題  『The Phantom of the Opera』  ■監督  Joel Schumacher  ■作曲/脚本  Andrew Lloyd Webber  ■キャスト    The phantom:Gerard Butler  Christine:Emmy Rossum    Raoul:Patrick Wilson  Madame.Giry:Miranda Richardson    Carlotta:Minnie Driver Meg Giry:Jennifer Ellison  ■ストーリー :★★★★☆    ■映像   :★★★★★  ■音楽    :★★★★★    ■総合評価 :★★★★☆ 2005年2月、六本木ヒルズに見に行ってきました~。 ヒルズ内のヴァージンシネマは音響設備が素晴らしい~! ------------------------------- ■コメント■ ------------------------------- 原作はガストン・ルルーが1911年に発表したミステリー小説。 オペラ座の怪人は劇団四季のミュージカルのCMで流れる 「ジャーン・ジャジャジャジャジャジゃーン」というテーマ曲で有名ですね。 脚本家であり、作曲家であるアンドリュー・ロイド・ウェーバーがミュージカル化しました。 今回はそのミュージカル版を作ったウェーバー氏が映画にもスタッフとして参加しています。 本場ミュージカルの脚本・作曲を手がけるウェーバー氏が製作スタッフとして 加わっているため、安心して見られた作品。 しかも今回、この映画のために作られた新曲付き。 ミュージカルファンにはたまらんです。 ------------------------------- ■ストーリー ■ ------------------------------- オープニングは古ぼけたオペラ座の中。 時は1919年。ベルサイユ条約が結ばれた頃ですね。 1900年代とはいっても今から考えるとずいぶん前。 老紳士、老婦人が集まってオークションを行っている。 猿が上に乗ったオルゴールが出品され、老紳士に落札される。 その後「オペラ座の怪人のいわくつきのシャンデリア」が「せり」に出されます。 そこから場面が変わり、1870年代にワープしていく。 1870年代のオペラ座。 やたらとうるさいだけのプリマドンナ、カルロッタが事故で舞台に上がれなくなってしまう。 チケットは完売。 関係者達が頭を抱えている中、マダム・ジリーが秘密の練習を行っていたクリスティーヌを 主役に推薦します。 見事に期待に応えたクリスティーヌを、幼馴染みで今やオペラ座のスポンサー となったリッチマン、 ラウルが見つめる。 ラウルはクリスティーヌを誘い出そうとするが、クリスティーヌの歌の先生である 「オペラ座の怪人」は快く思っておらず、姿を隠しつつ、クリスティーヌを独占しようと 画策する・・・。 ------------------------------- ■ここが見どころ! ■ ------------------------------- まずなんてったって、音楽。 特に冒頭のシャンデリアを「せり」にかけているところから1870年代にワープする時に、 例のオペラ座の怪人のテーマ曲が流れるのですが、それまでほとんど音楽が流れていなかった分、 圧倒されます。 これは、劇場で生オケ(生オーケストラ)でぜひ聞きたい! いくら音響施設の良い映画館でも、生オーケストラにはかなわないでしょう。 そしてこの映画、1919年と1870年代の間を時間の流れが頻繁に変わります。 1870年代のストーリーの合間に現在のエピソードが挿入されるわけなのだけれど、場面の転換が 全く気にならない。 特に、クリスティーヌとラウルが屋上で愛をささやいているところをファントムが嘆くシーンから 1919年代に戻ってくるところなんて、作り方がうまいんですよ。 ハリウッド映画だけじゃなく、日本映画にもよくあるのだけれど、場面が変わる瞬間、 いかにも「フィルムを切ってつなげました」というような つなぎ目がわかってしまったり、ひどいものになると「ぶつっ」という音まで 聞こえるものもある。 せっかくのストーリーの流れがいったん切れてしまう感じ? あれだけ場面の転換があるのに、それを全く感じさせません。 二つの時代を行ったりきたりしているのに、それが気にならなかった理由がここに あると思う。 これから見る方は「映画の作り」についてもチェックしてみてくださいな。 ------------------------------- ■ キャストについて ■ ------------------------------- 驚いたことに、ファントム、クリスティーヌ、ラウルの主要三役は吹き替えなし。 ミュージカル映画ってけっこう吹き替えが多いのですよ。 「天使にラブソングを」だって、意外と主要キャストが吹き替えだったりする。 「オペラ座の怪人」の三役は「歌える俳優」をキャスティングしたとのこと。 特にファントムとクリスティーヌが素晴らしい! ファントム役のジェラルド・バトラーは12歳で舞台デビュー。 その後、スクリーンと舞台の両方で活躍してきたそうな。 劇団出身で歌のトレーニングを同じように受けている俳優さんって、 歌い方が似てきてしまって、個性が消えちゃう人が多い。 しかし、ジェラルド・バトラーは、この人自身の個性が出る歌い方で、しかもセクシー。 観ていて気持ちが良かったです。 マスクに隠れているその姿がとてもミステリアスに感じる。 クリスティーヌよりもセクシーに感じました。 とある理由により、仮面で顔の半面を隠してはいるけれど、出ている部分の半分がとても整った 顔立ちをしているので、仮面の部分が露わになると、余計その醜さが引き立ってしまう。 それゆえ、屈折した想いを歌に託してクリスティーヌに伝える姿は、切ないです。 クリスティーヌ役のエミー・ロッサムは、最初はそんなに美人には 思えなかったんだけど、その歌声にまず驚き、聞きほれてしまいました。 自然とものすごい絶世の美人に見えてくる。 特に、カルロッタの代役として舞台に立った姿。 白いドレスと髪にちりばめた花形の髪飾りをつけて立っている彼女は、 ミュージカル「エリザベート」のタイトルロールになっている「エリザベート」の姿に似ていて、 あー、この女優にエリザベートをやらせても面白いな。と思いました。 歌声と演技力も両方ある女優ってそう多くはいないと思うから、今後の活躍に とても期待。 ------------------------------- ■ 音楽について ■ ------------------------------- あえてひとこと言わせていただければ・・・。 クリスティーヌがファントムに連れられてオペラ座の地下通路を通り、 ファントムの部屋に連れて行かれるところで、「The Phantom of the Opera」を二人が 歌うのだけれど、BGMが妙に現代的。 なんか、この曲だけがほかの曲と比べると浮いて感じてしまいました。 ま、ひじょーに細かい感想ですが。 反対に、良かった音楽は、ラストに近いところでクリスティーヌとファントムが歌う 「The Point of No Return」という曲。 これはこの作品オリジナルの曲。  ⇒と思ったら、新曲ではなかったようです。すみません。 詳しくは「英語の台詞 Check it Out!」を参照~。 あまりの曲の良さに、おかげでサントラも即買い。 CD屋でやたらと並んでる理由が、この映画を観てやっとわかりました。 サントラも2タイプ出ていて、1CDで歌を厳選してのせているものと 2CDでライブ版のように、ストーリーに関係がある部分を丸ごと切り出しているものがありました。 2CDのほうは、会話の部分など入っていたりします。 映画の雰囲気をそのまま楽しみたいなら、2CDのほうをお勧めします。 ただし、日本語解説が入っているEditionはなかったので、解説が入っていない輸入版を買いました。 後から知ったのだけど、3月に日本発売版が発売されるそうです。 それを知っていたらそっちを買っていたのに・・・。 ------------------------------- ■ 英語の台詞 Check it out! ■ -------------------------------  「The Point of No Return」 クライマックスにクリスティーヌとファントムがファントム作のオペラ「ドン・ファン」で 唄う歌のタイトル。 まさにその時の二人を表すタイトル。 訳すと 「ここに来たからには もう戻れない」 ファントムは、自分の作ったオペラの脚本を提供する代わり、主役にクリスティーヌを指名します。 オペラ座のスタッフ達は、ファントムの要求をのむふりをして捕まえてやろうとクリスティーヌに 主役を演じさせる。 クリスティーヌが主役として舞台に立つということは、ファントムにとっては 「クリスティーヌはファントムの要求をのんだ」ということの表れ。 クリスティーヌへそれを確かめるかのようにこの歌をうたいつつ、迫ります。 このシーンはものすごい緊迫感。 邦訳を意識しつつ映画を観ていると、ファントムの想いの強さにぞっとしました・・・。 ------------------------------- ■ 総評 ■ ------------------------------- ずいぶん前に原作を読んだのだけれど、映画版とラストが違うような気が。 でも、あたくし的には映画版のほうが良いと思う。 先につながるようなラストだったもので。 クリスティーヌとファントムの物語が終わった後、再び1919年に戻ってきます。 猿のオルゴールを手にした老紳士が墓地にやってきて、ある墓の前で立ち止まり、 そっとオルゴールを置く。 ここでやっと老紳士がラウルであったことがわかるんだけど、じゃぁ、オークションで そのオルゴールをせりあってた女性は誰? 一緒に観に行った友達とは意見がわかれました。 友達は「マダム・ジリーなんじゃない?」と言ったのだけれど、 それにしてはラウルが年を取りすぎているように見える。 あたくしは、ラウルのふけ方から考えると、マダム・ジリーの娘であるメグだと思いました。  以下、ネタバレのため、反転。  でもこれは、プログラムを見てわかったんだけど、マダム・ジリーだったそうです。  あたくしの見方も間違っているわけではなく、クリスティーヌに先立たれたラウルは  急に老け込み、ずっと年上であったマダム・ジリーより、あたかも年を取ったように  見せたかったとのこと。  うーむ。芸が細かい。  そしてラウルは気がつく。墓石の上に赤いバラが一輪捧げてあることを。  この赤いバラだけがモノクロの背景から浮き上がっていて、ファントムの存在を  アピールしているようでした。 最後の最後までどっぷりと映画に入り込める作品。 ミュージカル映画はNGと思った人にとっても入っていきやすい映画だと思います。 歌ってストーリーが進んでいくなんて、なんか嫌!という人でも、 良いきっかけだと思うので、ぜひ見てみてくださいな。

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