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2010年05月08日
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テーマ:緊張した話(611)
カテゴリ:緊張した話
寒い冬の日、中学3年生の私は、セーラー服の上に紺色のオーバーを着て山手線に乗り込みました。受験高校の下見に行くだけでしたが、つり革につかまり車窓から見えるいつもと違う景色に少し浮かれた気分になっていました。

その時、ポケットに入れていた左手に生温かいものが!!!

心の中では「ギャーッ!」と叫んでいたのですが
どうしていいかわからず、本当に緊張して木になったかのように固まっていました。

しばらくして、そっと目だけで隣を見てみると、
20代後半ぐらいのスーツに黒いオーバーを着た男が、車窓を見つめ真っ直ぐに立っていました。笑うでもなく怒るでもなくなんだろう、全く感情のない横顔。男はピタリと体を寄せると強く手を握ってきました。

「!・・・」

私の降りる駅のアナウンスが流れた時、急に呪縛が解けたように声が出ました。
「おりまーす」
(かすれているがはっきりした声だ)と自分では思いました。

その時、男はポケットから手を抜くとその駅に先に降りていきました。
私はもうその駅ではおりられません。
そのまま山手線をまわって帰宅してしまいました。

父に電車での出来事を話すと

「その男は気狂いだ!病気だ!精神病院にいれなきゃいかん!!」

と怒りまくりあまりの剣幕に(父を精神科に連れていったほうがいいのでは)とすら思いました。

後に私は そういう男を痴漢というのだ ということを知りました。





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最終更新日  2010年05月09日 15時14分56秒
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「遠くのものはつかめない」
虹をつかむことはできますか。
雲をつかむことはできますか。
近寄ると見えない虹。
雲は近づくと雲ではない。
リンゴ狩りをすると遠くのリンゴが赤く見えます。遠くの木まで行き、採ってみるとなお遠くのりんごが美味しそうです。山岳の花、海中の貝、宝石のように輝いている川底の石も拾い上げてみると、とたんに輝きを失います。
自分の周りの煌めきにはなかなか気づきません。
12月・・・自分の感性を磨きじっくり周りを見てみよう。


「人間は弱い」
父の口癖「人は弱いもんだよ」
「人間は体も弱い。意志も弱い。誘惑に弱い。」
だから、現金を見えるところで数えたりすると、悪事を誘うようなことだと怒られた。
人に優しく、自分に厳しく、清く正しく貧しく生きた人。自分のしたことには責任を取る。逃げない。書いていると息が詰まりそうだ。
「人は弱いものだから、お金や情実で裏切ったりもするさ。でも怨んじゃいけないよ。」
だが、父は自分を裏切った人を許せなかった。死ぬまで交流しなかった。できなかった。
人は弱いものでしょう?なぜ許してやれなかったのだろう。心から「許す」というのはまず、相手が「許し」を請うてきて始まるのかもしれない。私は父を裏切った人が亡くなった時、火葬場で父に会った。父はずっと怒った表情で黙ったままだった。彼女は謝らないまま旅立った。「死」は和解の機会を永遠に奪ったのか。それとも「死」は恨む対象が存在しなくなることで、父の心に氷解をもたらしたのだろうか。

「幻の選択」
もしあの時こうしていたら・・・「自分の人生を振り返った時、ふと考えてしまうんだよなあ。こういうのを『幻の選択』っていうんだよ。」
ベッドに横たわる老人は、自力で食事もできない状態でしたが、わずかに微笑んでいました。彼は自分の夢を捨て、家族のために生きたことを後悔していたわけではありません。愛する者のためなら命を捨てることも躊躇しない男でしたから。
ただ、長い人生の中では何度も岐路に立ち、その中には夢をつかむチャンスもあったのでしょう。
「幻の選択」は、終焉にて彼がみた甘く切ない『夢』なのか。
パラレルワールドがあるのなら、その人生では自分の夢を選択してるのかなあ。いや、彼はどの世界でも、家族とともに歩む。そして最期にちょっと感傷的に自分の『夢』を思い出すが、「わが人生、幸せだった」と微笑むに違いない。

「死」
彼が亡くなった。もう二度と声をきくこともないのだと思うと悲しかったが、その「死」はなんか遠い信じられないものだった。お棺の中の死に顔を見た時、「美しい死に顔で・・・。」というささやき声が聞こえたけど、私は怖かった。
まるで粘土で作られたお面のような顔、「生きている」はずもないが、「生きていた」という感じも残っていない。本人でなく別人、いや別物、「物体」になってしまった。
生きる実感を得るために死に近づく人がいるが、「生きること」は何なのか考えてほしい。いや、教えて欲しい。「生きること」は「苦」ですか?


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