夜明け が来る
「夜明け前が最も暗い」というのは本当です。「夜明け」が日の出前、空が真っ暗から白み始める頃なら、その前の3時頃でしょうか。この時間帯に自殺する率が高いと聞いたことがあります。山路茂は 不屈の男といわれ,縮小事業相次ぐ出版界では知名度が高かった。だが、今年になって手を出したゲーム系の出版は読み物としてはいかにも中途半端だった。取引先のゲームソフトの会社が出した不渡り手形はもうどうしようもない。再建の道を探ってもう幾晩も寝ていない。ぐっとウィスキーをあおる。貸し渋る銀行の支店長の顔。事業最盛期には揉み手・土下座で金を借りてくれと泣きついた男。今は、にこやかに対応しているが 書類も部下に渡し、迷惑顔。我慢できないのは、あのフチなしの眼鏡の奥 憐れみの目。優越の目。優越感から温かく対応してみせてるが絶対に金は貸さない目だ。妻の顔、一人息子と、二人の娘たちの顔。彼らは何も知らない。今まで傘のように自分たちの上で雨を寄せ付けなかった夫が、父が今やただの骨だけになっていることを。知られたくない。知らせたくない。従業員の顔。取引先の不渡り手形に驚いて手が震えていた経理の鈴木君。「大丈夫。」と言ってにっこりしたらホッとしてすぐ笑い返したな。大卒で去年採用したばかりだからわからんだろうが、こんな零細企業に2億なんて大丈夫なわけないだろう。下請けの大泉産業はいずれ債権者筆頭として押しかけてくるはずだ。先週支払いを先延ばしした時、大泉の不安・猜疑の入り混じった目。「お願いしますっ!」と頭をさげられた。その後ろにいる社員たちすべての生活がかかっている取引だった。オレの会社も同じだ・・・。だが、不可能なんだよ。努力しても努力してもどうにもならないことがあるんだよ。「許してくれ。」この時間、魔物が跋扈し、人は迷路に陥り悲観的になる。深い闇の時間だ。この時間をやり過ごせば光がみえてくるのだが、そこに思いを至らす事が出来ない魔の時間・・・。島崎藤村といえば昭和の作家と思いませんか。ところが代表作「夜明け前」の主人公青山半蔵は、藤村の父がモデル。江戸時代から明治維新の人。不思議だけど、昭和の初めに活躍された方の父上は、江戸生まれもありです。今、祖父母は江戸時代の方という高齢の方たちは多いはず。ちょんまげのおじいちゃんと会話してたのですよね。いや、もどれ「夜明け前」の話。明治維新前の士農工商の日本が暗黒で維新が夜明けという話ではないのです。維新後、一新できない地方の暗黒、青山半蔵の苦悩が「夜明け前」の深い闇だったのです。主人公は狂い、死に至るという夜明け前。ホントに暗いです。夜明けをアップするのに夜明け前の暗さをいつまで書いているんやすみません。前置き長すぎでした。夜明けだよ~希望の光!生命の時。魔物が退散していく。眠れるものを目覚めさせ、動植物を育む光。夜明け5分間の変化。空の色が微妙に違います。空が暗いと光がより明るく見えます。夜明けの空は暁(あかつき)、東雲(しののめ)、曙(あけぼの)、黎明(れいめい)などと呼ばれお日様がポッコリ顔を出す直前の空の色です。薄明かりも同様です。太陽の光を浴びて自然の流れに素直に入れば最悪の事態からは脱出するはず。頑張れなければ頑張らず、時間を耐えて、自分にできることをするのみ。病気も怪我もしかり。ましてや人間関係や仕事こそ。以前紹介した「空の名前」に朝の空の色とか説明が載っていますので載せておきます。私は初めて知って「ヘェ~」という解説も多いしなにより写真が多いので本物の空と見比べながら楽しく読んでいます。空の名前改訂版4版