高橋 葉介 「夢幻紳士 」
暗い畦道をぞろぞろと人の波が続き、その先は、夜店の裸電球がやけに明るい。発電機の音や老若男女子供らのざわめき、泣き声、笑い声。収穫の終わった村々はこの一時の娯楽を見逃すまいぞと押し寄せる人波で、今宵限りの芝居小屋もはちきれんばかりさ。狐も狸もこの姦しさに逃げていきおった。人だかりの向こう、ひときわ甲高い声・・・「さあ さあ さあ こんな辺鄙な田舎町。そこに建ったこの御殿。今夜見せます、この世の天国、地獄。お兄さんお姉さん、百歳過ぎた年寄りもいいってことよ。だけんど年端のいかない坊ちゃん嬢ちゃんだけは勘弁しておくんなさい。世界中から集まった奇想天外いわくつき、夢か現か、鱗人間、親の因果が子に報いろくろく首をさらしてる生娘も、ふしだらな女の因果応報オオイタチ。さあさ、見てごらんよ。半面獣もいるけれど、エログロじゃあないよ、さあ、立ち止まらないで中に入ってはいって、さあさあ・・・・・」中にも呼び込みばあさん・・・「ここはあの世の入り口か、奇妙な生き物を集めた醜悪な見世物小屋とお思いかい?一日が夜明け前の漆黒から始まって黄昏までにどんだけ姿を変えるか知ってるかい。SもMもHも一人の人間の中にちゃあんとあるのさ。へび女が、醜女で下品で猥雑なら高貴で気品あふれる美女でもあるのさ。お疑いなら真実を知る方法を教えよう。まぎれようもない真実を。あなた、鏡を見てごらん。そこに映っている女は悪魔かい?天使かい?怪物かい?夢幻界の妖怪は、『人間』って言ってるけどねぇ。おやまあ遅くなっちまった。魑魅魍魎が跋扈し始める前に退散たいさん・・・」夜店の明かりも遠くなった。帰路は暗いトンネルの中へ入っていくようだ。妖怪たちに見つからぬようそうっとそうっと・・・。以上!プロローグでした。この話は不思議に満ちた怪奇の世界、夢か現か幻想迷宮、軽妙洒脱、奇妙奇天烈、曖昧模糊、妄想が暴走する深層心理世界、夢の謎解き。見世物小屋で怖いもの見たさの読者を、夢幻魔実也が思う存分活躍して夢の謎解きをしてくれます。夢幻魔実也は、かなり変幻自在な内面をもつようで、話によって違う面がでているのでそこも魅力。作者(高橋 葉介)は「学校怪談」など たくさんの本を出していてどれも面白いので、続けて読んでみたくなることでしょう。夢幻紳士(幻想篇)価格:1,470円(税込、送料別)夢幻紳士(怪奇篇)価格:1,050円(税込、送料別)夢幻紳士(迷宮篇)価格:1,470円(税込、送料別)夢幻紳士(逢魔篇)価格:1,470円(税込、送料別)