『ドキドキした話』 ロマンチックノベルで初めてのキスはレモン味とか、甘いとか、甘酸っぱいとかを読んでいる少女の憧れがしぼみむ保健の講義は役に立つのでしょうか。
子どもの頃キスすると妊娠すると思っていました。その後 ロマンチックノベルで初めてのキスはレモン味とか、甘いとか、甘酸っぱいとか・・・を読みキスが憧れに変わろうとした頃です。中学の保健体育の授業、キスすると性病になると散々教育されたのです。キスへの恐怖が再び頭にしみつきました。その上、必勝痴漢撃退法として 股間を蹴り上げる。キスされたら、舌を噛み切る。これで絶対男は逃げるって、今思えば 笑ってしまいます。ところが、笑えない事態が起こりました。その頃飼っていた雑種犬のサブの散歩には、自宅から1キロほど北の公園に行っておりました。遊具のあるグラウンドの北側は急斜面ですが階段状に石が積んであり高台にはベンチがありました。その見晴らしベンチは私のお気に入りの場所でした。その日、初夏の新緑の香が風にのってわたるような心地よさ、見晴らしベンチから町をぼうっと見下ろしていました。「われ、気持ちいいやん。」急に声をかけてきた男「キスしよ。」抵抗できない力で引き寄せられぶちゅー・・その時、条件反射のように例の教えが実践されてしまいました。ただ、私の反応が早くて舌でなく彼の唇を歯で奪った形。男は 飛びのくと口からツルルーとたれた血を手の甲でぬぐいました。「われ、女を殴りたくないけん・・・」と言いながらまぶしそうな目で私をじっと見ました。そしてまた何か言いましたが聞こえません。私は男の股間から目が離せなくなりまたもや条件反射、こちらから飛び掛かりました。でもそれは届かず 空を蹴り上げてあっという間に万策つきたのでした。男はふっと失笑して「われ、きのう**隊、辞めてきたんや・・・」というと階段を下りるのではなく崖を登って 見えなくなりました。下のグラウンドを見ると とっくに逃げ出したサブが走り回っています。急いで下りサブを捕まえ水のみ場で懸命に口をすすぎました。短い怖い白昼夢のような出来事でした。