『感動した話』 勇敢な猫の話
わが家で飼っていた黒トラのメス猫の話。小学生の娘が学校帰りに拾ってきた小猫はわが家に来た日から水玉の座布団を自分の寝床に決め、以前からここにいた家族のように家にも人にもとけこんでしまいました。ミトンと名付けられ、1年。そっくりな黒トラの子猫を4匹生みました。2ヶ月目、2匹はもらわれていき、残り2匹ルイジー、マリオ(子どもが名付けた子猫の名前)と若い母猫は毎日遊びまくっておりました。そんなある日、実家で不幸があり、急遽 夜中に一家で発つことに。猫を預ける暇もなく、とにかく全員車に乗せ 東名をひた走りました。翌朝、母はなんで連れてきたのかと怒り、「猫は物置に入れて出さないように!」と言い渡しました。仕方なく、上の方に小さい窓がある物置に水と煮干を置いて3匹を閉じ込めました。家で行うお葬式は忙しく猫の様子を見に行くこともできません。長いお経で頭の中に平坦な畝が出来てきた時ガシャーン!!物置に駆けつけると戸の周りはガラスの破片だらけ。そっと戸を開けてみると、ミトンがルイジーをくわえています。母猫は2匹の子猫と脱出するため、高い窓に体当たりしたのです。多分頭から飛び込んだにちがいありません。閉じ込められた恐怖はいかばかりだったのでしょう。私はこの若い母猫を抱きしめて、自分も若い母親だったので誇らしくもあり、心の中で賞賛しました。それから2ヶ月、夏休み、八ヶ岳キャンプ場へ。テントの中に子猫がいれば、母猫は戻るということで、ミトンはリードなし。子猫達は、大きな深い籐のカゴに入れておりました。思惑通りミトンはいなくなっても子猫が泣くとすぐに戻ってきました。3日目の夜。テントの前を甲斐犬が通りかかりました。テント出入り口近くの籐カゴから子猫の匂いがしたのか、甲斐犬の足がふっと止まったその時、どこから来たのか、トン!と甲斐犬の前にミトンが立ちました。「ガルールー!」甲斐犬は鼻にシワを寄せ牙をむいています。「シュウ シュウ フー」ミトンは総毛だって尻尾のほうを高く持ち上げ臨戦体制です。しばらくうなり合っていましたが「シャー」という一声とともにミトンが甲斐犬に飛び掛りました。一瞬で勝負は決まり、甲斐犬は鼻から血を流しながら逃げ去りました。ミトンは 籐カゴで満足気に子猫達の体をなめていました。甲斐犬の飼い主の方には申し訳なくお詫びしました。が、飼い主の方は、「体を張って子猫を守る姿の揺るぎのなさ、その勇気に感動しました。その血をひいた子猫をぜひ譲り受けたい。」と申し出てくれました。母猫そっくりで活発なマリオはもらわれていきました。