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2005.03.02
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カテゴリ:心理学の利用
 成績のよいセールスマンは、人間心理を熟知しているものだ。心理学をとくに勉強していなくても、業務上の経験から、人はどうすれば買いたくなるかを経験的に学んでおり、それをセールスに生かしているのだ。そんなセールスマンが使うテクニックに、「前提条件を暗示する」という方法がある。

 たとえば、鍋やフライパンなどの台所用品をセールスする場合、「何か必要なものはありませんか」とか「どのようなものが、ご入用ですか」と聞いたのでは、「いまは間に合っています」と断られてしまうのがオチである。

 そうではなく、「炒め物をよくしますか。それとも煮込み料理ですか」と、具体的な選択肢を提示して、質問するのだ。

 そう質問されると、聞かれたほうは「どっちが多かったかしら」と考えることになる。そこで、「炒め物が多いわね」となれば、「それなら、このフライパンがいいですよ」とすすめるのだ。

 つまり、台所用品を買うか買わないかは、いっさい聞かないで、台所用品を買うことがすでに前提条件になっているかのように話を進めていくのだ。前提条件をつくることで、お客に買わなければならないという錯覚を起こさせるのである。

 こうした前提条件に惑わされやすい人間心理は、つぎの実験でも明らかにされている。成城大学の堀川真義教授が行った実験で、時計とほかのものがいっしょに写っている写真をベテラン刑事に見てもらい、何分かしてら、写真に写っていた時計の時刻を質問する。

 このとき、「何時でしたか」と聞くと、「五時」「十時」と正確な時刻を答える人が多い。ところが、「時計が指していたのは、三時でしたか九時でしたか」と聞くと、じっさいには十時を指していたにもかかわらず、「三時」とか「九時」と答える人が増えるのだ。漠然と「何時でしたか」と聞けば正確に答えられる人でも、選択肢を前もって提示すると、それが、間違いでもその一方を選んでしまったのである。

 選択肢を提示すると、その時点で、人間の思考の幅は非常に狭くなる。正しいか間違っているかではなく、どちらかから選ばないといけないという方向に心理が働くためだ。

 そのため、大前提となる話を飛ばし、具体的な選択肢を提示すると、相手の気持ちを自分の望む方向に誘導することも可能なのである。


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Last updated  2005.03.08 02:56:56
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