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カテゴリ:1974年頃のディスコのお話
ブルースリーとチャイナタウンそしてディスコ
‘74年のブームとして忘れてならないのが、香港が生んだスーパースター・ブルースリーです。アメリカ映画「燃えよドラゴン」の超大ヒットで、世界的なヒーローとなったブルースリーですが、残念ながらその栄光のBENEFITを受ける間もなく他界してしまいました。(合掌) 74年はそんな彼が残した過去の作品(香港映画)が続々と公開され、空前絶後のカンフーブームと相成りました。 ディスコでもカンフーや空手を取り入れたダンスバージョンが現れ、踊りにもそんな影響がチラホラと出ておりました。 以前にご紹介した「吼えろ!ドラゴン・カンフーファイティング」なども、その典型的なパターンで、一時「カンフー」などという踊りも出たりしました。 何のこたぁない、ハッ、アチョーッとか言って空手の真似をするだけなんですが、これが結構面白くて、ジェームスブラウンのLAのライブ(委員長はVIDEOで見たのですが)では、JBでさえ、良く分からん構えで空手の真似なんぞもしてましたね。 竹中直人(漢字間違ってない?)氏が、デビュー当時よくこの「燃えよドラゴン」のワンシーンの物真似をしてましたが、あんな感じの人がディスコにはザクザクおりました。 サントラ盤なんかも時々かけるDJがいたりして、フロアでブルースリーの物真似合戦みたいなことになったこともありました。 さすがに委員中はSOUL小僧だったので、どちらかというとブルースリーよりは黒人武道家ジム・ケリーの方に関心がありました。 彼もB級映画では「ブラックドラゴン」の名で活躍しており、かなりの人気がありました。 つい最近では、「UNDERCOVER BROTHER」っていうかなりおバカな黒人B級映画にゲスト出演しています。ちなみにこの映画、なんと、あのJBもゲストで出てますし、70年代のディスコヒットや、当時の黒人のファッションとか文化が散りばめてあって、道楽者の親爺にはお薦めの映画です。 ということで、当時委員長が働いていた新宿南口ビバヤングの従業員も、皆一様にかぶれまして、特におサルのボーイ長などは委員長が高校生の頃に買ったヌンチャクをプレゼントしてあげたら、異常に喜んで、仕事が終わると赤いちゃんちゃんこを脱いで毎晩振り回しておりました。 もちろんこのワイロのおかげで委員長の待遇がずば抜けてよくなったのは言うまでもありません。 それとは別に、このカンフーブームを冷ややかな目で見る一人の道楽親爺がおりました。 彼の名は、藤井幹候(カンコウは名前じゃなくて幹部候補生の略ですヨ)、別名仏のフジさん。 麻雀がやたら弱いくせにすぐに仲間に入りたがり、もらったばかりの給料を丸ごとむしりとられてもちっとも懲りずに遊びたがる、変なおじさんでした。 元々は車輌部で重役方の運転手をしているのですが、大した仕事もなくぶらぶらさせておくのはもったいないということで、夜の6時頃から11時までは店に勤務させられたのでした。11時を過ぎると、系列のキャバレーやクラブへ接待のお客様の送迎をしたり、重役の送迎などに回ります。 特別、運転手の仕事がない日は閉店時間の深夜2時間まで店にいて、閉店後は皆で麻雀を打ったり、飲みに行ったりしていました。 鴨がネギ背負って歩いているような、すでに30歳近いボーっとしたおっさんでしたが、委員長たち若手には結構人気がありました。彼のポジションも結構いい加減ではっきりした序列もないので、中途半端な存在がバイト組と似ていたこともあり、歳の差があるわりにはよーくつるんで遊びました。 運転手と言っても早いときは11時に送迎に行って、12時前に帰ってきてしまいます。 もちろん本来なら早く送迎が終われば、また店に戻らなければいけないのですが、そこはそれ、もしそんな真面目な人だったら、この歳までこんなとこでグダグダしてるわきゃないので、間違いなく道楽者の一人でもありました。 そして委員長たちは、このおっちゃんが送迎のあとの社用車を自由にできることを見逃しませんでした。 バイトのお仕事は12時で終わりです。 送迎が早ければ11時30分にはおっちゃんが戻ってきます。 遊び盛りの道楽者が集まれば悪事の相談も即決です。 DJのマチャアキとか酒屋の息子などが委員長と一緒になって、おっちゃんを遊びに誘います。仏のフジさんは子供たちに慕われるとイヤとは言えません。 それに下手に逆らうと、フジさん一番の楽しみである麻雀の仲間に入れてもらえません。 ということで、麻雀でフジさんから巻き上げた金で懐が少し暖かくなると、今度はドライブをおねだりして深夜の六本木「ソウルエンバシー」などへ繰り出す委員長たちでした。 こんだけカモられてもグチのひとつもこぼさず、一緒に遊んでくれた仏のフジさんですが、 ついにその本性が露になる事件が起きました。 ある日のこと、いつものようにフロアで暴れるタコを皆でボコボコにして店から放りだしたところ、なんとこのタコが応援を連れてリベンジに現れたのです。 ボコボコにされてゴミくずのようになったあんちゃんが連れてきたのは、ボタンのない蛇腹の学生服を着たガタイの良い二人組でした。 支配人以下黒服数名が居並ぶ、ビバヤングのフロントに現れた二人組は静かに、そして迫力のある言葉で言ったのです。 「どういう理由でコイツがこんなめに遭わされたのか説明してもらおうか」 結構な迫力に少しは引きかけた支配人のネズミの梅ちゃんは、その強面の顔とは裏腹に意外と小心者だったので、すぐに黒服たちに問いかけました。 「誰か知ってるか?」 そこで結構イケイケな黒服、白川カンコウ、大池カンコウが名乗りをあげます。 「踊り場で暴れたから帰ってもらっただけだけど、こっちも商売だから他のお客さんに迷惑がかかると困るからね」 騒動を聞きつけて、その他の黒服やウェイター君たちがどっとやってきます。 学ラン二人組はひるまず言い返します。 「だからってこんなに殴ったり蹴ったりしていいのか」 「こっちも従業員が抑えるのに怪我してんだよ」 大池カンコウがフロント前エレベーターの横の非常口を開けて言います。 「ここじゃ他のお客さんの迷惑になるから、こっちで話そう」 これは話じゃ埒があかないから殴り合って決着をつけようという無言の合図です。 大池カンコウ、白川カンコウの二人が先導して非常口に出ます。 ボコボコ野郎はエレベータ前に置き去りです。 4人が出て非常口のドアが閉まりかける寸前、仏のフジさんがパッと滑り込みました。 ガーンと音を響かせてドアが閉じた瞬間、ドタンバタン、ゴツゴツ、ンナローッ!ウッ!バタッ。 静かにドアが開いて目に青あざの大池カンコウ、蝶ネクタイがちぎれた白川カンコウ、そして鼻血と口から血を滲ませた学ラン二人組が出てきます。 その後ろから仏のフジさんが出てきて、エレベータの下階ボタンを押します。 フジさんは委員長を見つけて「下まで送ってやって」と声をかけます。 委員長はおずおずと開いたエレベータにボコボコ野郎を乗せて、1階のボタンを押します。学ラン二人組とフジさんが乗り込みます。 従業員全員の熱い視線の中、エレベータのドアは閉じました。 密室の中、出入口のボタンを押す委員長、その後ろに学ラン二人組とボコボコ野郎、そしてその後ろにフジさん。この時ほど1階までの到着時間が長かったと感じたことはありませんでした。無言のまま到着したエレベータから降りる学ラン二人組。 目頭と口に血を滲ませた学ランがフジさんに一瞥くれて、 「あんたも若いねぇ」 そう言い残して3人は紀伊国屋方面へと立ち去りました。 前で手を組んだ姿勢のフジさんの手の甲は、皮がすりむけて血が滲んでいました。 その時のフジさんの顔はいつもの仏顔でなく、蒼白のホラー顔になっておりました。 「奴らさぁ、パッと見たときにさ、拳ダコがあったからさ、こりゃまずいと思ったのさ。いくら大池でもさ、やばいかなと思ってね」 この痩せ型の単なるボーっとしたオッサン、藤井カンコウが剛柔流二段の凄腕であることを、この時初めて知った委員長でした。 つまり、運転手の仕事もその腕を見込まれてのことだったわけですが、みかけは単なる淋しいオッサンのクセにこんなかくし芸があったことは皆知らなかったのです。 さて、話は戻りますが、委員長他道楽者一派はこうしてよくフジさんをそそのかしては、夜遊びを繰り返していたのです。しかも遊ぶ金はその本人から麻雀で巻き上げた上に、会社の車を持ち出させたあげく運転手までさせて、やりたい放題の道楽三昧。 ところが、度重なる夜遊びに、ちょっと疲れたフジさんからクレームがあがりました。 「ディスコもいいんだけどさ、俺踊れないし、酒も飲まないから。。。。俺はどっちかというと麻雀の方が良いんだけどな」 さあ困った委員長はすぐに見え透いた企画をぶち上げます。 「フジさん、横浜行ったことある? 中華街。あそこはさ、やっぱカンフーの本場だからさ、スゲーのがいっぱいいるらしいよ」 「カンフーていうとやっぱり少林寺拳法かな?」 異常にノリ安い人でした。 「さあ、太極拳とか、色々あんじゃないの?」 更に膨らます委員長。 「そんな奴らがウロウロしてるの?」 フジさんだいぶと本気です。 「さあ、俺も見たわけじゃないけど、結構腕自慢がゴロゴロしてんじゃないの」 ここまでくればサクセス! 「行ってみようか?場所分かる?」 しめしめ、今夜は横浜まで遠出だぜい。 12時、待ち合わせの甲州街道でフジさんと落ち合った委員長たちは唖然とします。 なんとチャイナ服を着込んだフジさん、しかも丸型のサングラスをかけてニヤニヤしています。更に車のトランクを開けて、自慢げに委員長たちに見せたものは、ヌンチャク、トンファ、サイ、白の空手着、一体この人は。。。。。。。。。。。 さすがにビビッた委員長でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年06月03日 17時03分08秒
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