道楽者の昔話その183
FUNKYな道楽者人生。委員長が本当の意味でFUNKYというものを感じた一曲があります。KOOL & The GANGのGOOD TIMESというアルバムに収録されているFATHER, FATHERという曲がそれです。とても美しいスローナンバーで、イントロダクションにブラザーの語りが入っています。これは「天なる父」への問いかけから始まる、ちょっとシリアスな詩でもあります。この詩のどこがFUNKYかはうまく説明できませんが、ブラザーの語りがあまりにもシリアスな分だけ人間の作り出した世界への問いかけがここにあり、それこそがFUNKYとしか言いようのないものであるからです。哀しく可笑しい、そう言葉で表現してしまうとあまりにも陳腐ですが、心の中に沸き起こってくる感情がまさにFUNKYとしか表現できないものでした。以下にコピーを付けましたので興味のある方は是非読んでみて下さい。和訳は付けません。なぜなら、この詩の解釈は「宗教」と同じで本人の心次第で見えるものが違うからです。文章は簡潔ですし、さほど難しい単語も含まれていませんから、是非ご自身でチャレンジしてみて下さい。詩の中に隠されたFUNKYさを感じて頂ければ委員長は本望です。(音源が手に入れば尚更素晴らしいですね)*FATHER, FATHERFather, where’s the love I thought there would be?Where’s the happiness in me?Is life just an endless walk to nowhere?With streets that just lead to dead ends?Where parents water their flowers with hateAnd children do the sameBut who’s to blame?Spring?No, it’s just a gentle thingBut man flies around the moon and sings a song that stars with JuneAnd eats his lunch at every moonIn harmony he does thisBut with love, is out of tuneFather, father, father, you were surely rightIf the world should end tomorrowIt would be by man’s own mightLord have mercy on usSeems to be a favorite lineWherever we’re down or in troubleOr blocks to eternal divineFather, there’s war and worryLord, there’s hurt and sorrowAnd won’t you live to see tomorrowFather, father, father, what can we do what’s rightLord, please smile upon usGive us your guiding lightFather, where’s the love I thought there would be?Where’s the happiness in me?Lord, you know, I know you know, fatherその昔、一緒にバンドごっこをして遊んだシゲルが、赤坂に引っ越して来たばかりの委員長のアパートにやってきました。この頃のシゲルも彼なりの道楽のツケに追われ行き詰っていたようでした。夜中にひょっこりとやって来たシゲルは何を思ったか、突然委員長に散歩に出ようと誘ってきたのです。夜の東京歩きはまんざらでもない委員長は、早速身支度を始めると、その横でシゲルは小さなジョイントを取り出して煙を漂わせていました。枯れ草が燃えるような独自の香りが部屋に充満して、煙が委員長の鼻の中にもすーっと入り込んできて気分はもうすっかり出来上がっていました。「おっとゲルシー(シゲル君のあだ名です)、今日は気合い入ってるね」煙を飲み込んで息を止めたままのシゲルはジョイントを委員長に差し出しました。アパートを出た二人はそれぞれのウォークマンにお気に入りのテープを詰め込んで、霞ヶ関方面へと歩き出しました。人通りも少ない真夜中の霞ヶ関近辺は道楽者のお散歩コースには最適です。特にこの初夏の風の香りは、翔んでる二人のイマジネーション・ゲームを一層心地良いものにしてくれます。(しかし傍から見たらまるでモーホーだよね)東京タワーをバックに霞ヶ関のビル郡のベンチに腰掛けて更に一服かます二人。唐突にシゲルが委員長に言いました。「ロニー、黒人音楽って何色だと思う?」難しい質問でした。何かを暗喩していることはわかりますが、適当な答えが見当たりません。「う~ん、そりゃやっぱり黒じゃないの?」それじゃ当たり前だろって。シゲルは夜空を見上げていました。「オレはね、あきらめの色だと思うんだよね」が~んって感じでした。頭を後ろから殴られた感じでした。言葉に詰まってしまって次の語が出てきません。シゲルもそれ以上は言いませんでした。恵比寿駅前に住むシゲルは在日中国人の母親と日本人の父親の間に生まれた所謂ハーフでした。幼い頃から見てきたものはお互いに違っていても、心の底に流れている深い哀しみは同じだったような気がします。「目黒の麻薬犯罪捜査事務所に行ってみない?」またも唐突にシゲルが言い出しました。彼が何を思いついたのか知りませんが、翔んでるボクラがそんなところに行くのも中々オツなもんだと思い、二人は大通りからタクシーに乗って目黒へ向かいました。見るからに冷え冷えとする感じの建物は高い金網フェンスに囲まれていて、暗闇に不気味な存在感を漂わせていました。「ポールがパクられたのはここだよね」「ああ、確か去年だったよな」「何日くらいここに収監されたのかな」「さあ、2~3日じゃないの。ミソスープが不味かったって言ってたよね」「押収された大麻はどこに保管されてんのかな」「えっ?まさか盗み出そうとか言うんじゃないだろうな」「ここの職員、絶対吸ってるよね」「そりゃ、どうせ皆燃やして処分するんだから、テキトーにちょろまかしてもわかんねぇだろうな」「オレの友達がパクられた時ね、ここの奴等ウォークマンして仕事してたって言ってたよ」他愛もないこんなやり取りをしながらフェンスの周りをぐるりと回った委員長とシゲルは、再びウォークマンを聞きながら恵比寿のシゲルのウチまで歩いて帰りました。途中アメリカ橋の上で突然シゲルが立ち止まって委員長に言いました。「オレさぁ、ベース売っちゃった」委員長は何も言わずシゲルの肩を叩きました。思えばコイツとも妙な関係でしたが、無口な分だけ彼の言葉や行動は世の中の核心を突くようなストレートなものだったような気がします。ちなみにシゲル君、この日の4年後、麻取(麻薬取締官)の手により御用となり、委員長30歳の年貢の納め時、一世一代の結婚披露宴をドタキャンしたのでした。何もこんなときにパクられなくたって良いものを、まさに道楽者の腐れ縁とでも申しましょうか最後までファンキーなヤツでした。