失恋。
大好きだった。心のそこから大好きだった。だった。顔だけ見れたら幸せだと思った。学校にいるだけで幸せだと思った。本当に大好きだった。世界で一番好きだった。その思いは自分だけがあったらいいと思った。心から思っていた。私だけが彼を好きだったらと、思った。昨日、友達に呼んでもらってチョコを渡した。先生が呼んでるよって、一人、連れてきてくれた。不思議そうな顔している彼にあげるって、チョコを押し付けて逃げた。あまりに恥ずかしくて一人で泣いた。友達は、よかったねって、言ってくれた。私もよかったと思った。今日、彼は、彼のことを好きな女子に、廊下に呼び出された。私は廊下で騒ぐ大勢の女子を見てそしてその中で照れながら笑っている彼を見て後ずさりするように逃げ、後ろを向いてトイレに逃げる。何か目からあふれてきた。そしてもうひとつお腹の奥のほうから何か黒いものが湧き出してくる。とまらない。憎悪か?嫉みか?どちらにしても、それは黒く、汚いものだと思った。これではいけないと思って、セーターで目をぬぐい、笑いながら教室に戻った。彼はカーテンの向こう、外を見ている。隣の席の女子に、何があったの?と聞く。答えてはくれない。国語の時間が来た。今日は意味調べと漢字。あふれてくるものをセーターでぬぐいながら、漢字を書く。ただ文字を書くだけのロボットになれたらと心のそこから思った。ブレザーで目を押さえるそこには染み込まず、大きな雫となったものがあった。私はそれが、何かいけないものがこもった、黒く汚い水にしか見えなかった。手でこすって、なかったことにしたかった。・・・・・後ろから会話が聞こえる。「さっきどうしたん?」班の男子が言う。「なんかな、今度一緒に遊びに行こうって誘われてん。」ひそひそと言う。私は鉛筆を止めて聞く。でも、もう聞きたくないと思った。「よかったなぁ。ついに春がきたな!」男子は冷やかす。彼は照れる。嬉しそうだ。あの人は、彼をこんなに笑顔にしたのか。いけない。駄目だ。人を嫉んではいけない。心で叫ぶ。いけない。いけない。あの人だって、がんばって恋を実らせようとしてるんだ。許せない。違う。そういう意味じゃない。許せないなんて思ってはいけない。私も彼女と同じ立場だ。こんな我侭思ってはいけない。ユルセナイユルセナイニクイカレニチカズクアノオンナガニクイ違う!!!!!違うよ・・・。私は・・・・!?私は何だ?昼休みに友達をひっぱって、3号館に行った。泣いた。もう泣くしかなかった。その後、昼休み中2人でダベッた。友達と話していくうちに、少し、気が楽になった。5,6時間目の私は私じゃなかった。いつもいちいち気にする時計も見なかった。自分の席にいたくなかった。嫌でも後ろからその話題が聞こえる。3年生に送るお守りを作る時間だった。男子は皆、彼の横に集まってはやし立てる。「幸せにな~!」「相合傘しろよ~!」私は友達の席に逃げた。もう目の前は暗闇。真昼なのに黒かった。曇った空が自分の心の中のようで憎かった。終わった。あぁ、終わったんだ。この恋は。集まってる友達の席に行った。男子は今度は廊下側のドア際に集っている。無意識に聞いてしまう。「どうしようかな・・・」え?付き合ってるんじゃないの?まだ返事してないんだ・・・さっきまで黒かった目の前に、一筋の光が見えた。私は・・・!今、何か歯止めをうっておかないと本当にあの大好きな人が行ってしまうんだと思った。それは恐怖に感じた。イカナイデ・・・イカナイデイカナイデイカナイデ!!!!!イカナイデ!!!!!!!!!叫びそうになった。私の知らない遠くの世界に行かないで・・・。彼女でもない、ただの片思いなのに・・・なんてやつだ。私は・・・。どうしようか、とつぶやく声が後ろから聞こえる。行かないで・・・。友達は、そう本人に伝えろと言う。私も伝えたかった。心のそこから行って欲しくないと願った。これは神が与えてくれた最後のチャンスか?これを言わないと、本当に行ってしまいそう。でも。あの女子は・・・でも私は・・・・・私は止めたい!止めないと嫌だ!!!!!友達は彼に、先生が呼んでると言ってくれた。彼は階段のところに来てくれた。私は言いたい。それだけしか考えてなかった。「あの・・・なんかわかんないけど行かないでください!」それだけ言って逃げ出した。いや、逃げそうになった。逃げてはいけないと思った。でも彼は帰ってしまっただろう。そう思って階段の角をのぞくといてくれた。私がちゃんと全部言いきれてないとわかって、待ってくれていたのだろうか?「あの・・・・・その・・・!行かないで欲しいです・・・ごめんなさい・・」「・・なんのこと?・・てか、なんでそんな、俺謝られても・・・。」「いや・・その。ごめんなさい・・・今日、遊びに行くの、誘われてたよね・・・。」「あぁ・・・」「勝手に盗み聞きしてごめんなさい・・・でも・・・好きやから・・!行かないで欲しいんです・・・ごめんなさい・・!」言ってしまった。「好き」初めての告白がまさかこんな形になるとは・・・。「あの・・・あと、昨日のチョコ、義理じゃないから!」「うん、ありがとう。」彼は笑ってくれた。笑顔がすごく優しかった。私は彼に「行かないで」と伝えるとき、ただ、ひたすら謝っていた。その「ごめんなさい」には困らせてごめんなさい折角誘ってもらったのに、こんなこと言ってごめんなさいいきなり呼び出してごめんなさい勝手に気持ちを押し付けてごめんなさい好きになってごめんなさいきっと、いろんなことがこめられていた彼はきっと、行きたかっただろう。折角誘ってもらったのだから。それに、彼女の気持ちもちゃんとわかっていたのだろう。そこに私が乱入してしまった・・・彼にはものすごく迷惑をかけてしまった。もし、行こうか行かまいか迷ってる理由のひとつにほかの人からもチョコをもらったというのがあったら・・・あぁ、私は自分のコトしか考えてない。あの女子だって勇気を振り絞ってがんばって誘ったんだと思う。私だって、喋るだけで恥ずかしいなのに。私は自分がよければ他人はいいと言う考えなのか?私は他人がよければ自分はいいという人間になりたい。大好きな人を困らせたくない。あんな優しい顔で笑ってくれた彼を困らせたくない。明日・・・私は謝る。昨日、勝手なこと言ってごめんって。それと・・・・・もう昨日言ったことはいいから楽しんできてよっ。でも今度、私とも遊びに行ってもらってもいいかな?