2005/08/24(水)15:50
NHK、VOD向け番組販売――民放参入の呼び水期待
NHKが七月から通信事業者やCATV(ケーブルテレビ)のビデオ・オン・デマンド(VOD)サービス向けに番組の販売を始めた。VODは視聴者がテレビの好みの番組を好きな時間に呼び出して楽しめる。これまでは米ハリウッドの映画などが品ぞろえの中心だったが、NHKの動きを呼び水に民放の番組ソフトが今後どれだけ増えるかが注目される。
NHKは番組販売会社のNHKエンタープライズ(東京・渋谷)を通じ、過去に放映した番組の販売を始めた。番組は「プロジェクトX」「NHKスペシャル」などのドキュメンタリーや教養、生活情報番組六十五本で、視聴者が払う料金は一本百五十―三百円程度。著作権の手続きが終わり次第、ドラマや娯楽番組も加え、提供番組の種類を四百―五百本に増やす計画だ。
七月からの提供先はKDDI、NTTコミュニケーションズ、NTT東日本系のぷららネットワークス、ソフトバンク系のビー・ビー・ケーブル、CATV最大手のジュピターテレコム、インデックス子会社のVOD事業会社、ネオ・インデックスの六社。来年三月までにさらに三社ほどの増加を見込んでいる。
VODは利用者がセットトップボックス(STB)と呼ばれる専用受信機を購入したり借りたりして、ネット回線をSTB経由でテレビと接続して視聴する。テレビ番組などのパソコン向けインターネット配信と並び、放送と通信の融合サービスの目玉の一つになるという期待がブロードバンド(高速大容量)通信やCATVの関係者の間で高まっている。
こうしたテレビ番組ソフトのブロードバンド配信は著作権処理の煩雑さなどが壁になり、放送局の取り組みは進んでいなかった。しかし、今年三月、著作権者の団体などの間でテレビドラマ配信の権利処理の暫定ルールが固まり、事業環境が整う兆しが出てきた。
NHKはこうした環境変化をにらみ、昨年七月から実験してきた番組供給の事業化に踏み切った。取引条件も最初に固定料金を徴収する形から番組の利用頻度に応じた料金を通信事業者などから徴収する形に改めた。
視聴者の人気が高いNHKの番組が利用できるようになる通信事業者やCATVなどはこうしたNHKの動きを歓迎している。NHKの動きを呼び水に、民放がドラマなどの番組ソフトをVOD向けに販売するようになればと各社は期待する。
ただ、現時点ではテレビ向けVODへの番組販売について、放送局側の姿勢は様々だ。
NHKは番組のパソコン向けネット配信よりもVOD向け番組販売を優先している。教育番組やニュースの一部映像をネトで配信しているが、放送番組の補完という位置づけ。「番組丸ごとのネット配信も研究中」(NHK)だが、放送法が定める公共放送としてのNHKの役割に当てはまるかどうか、総務省や民放などとの間で合意が形成されていないためだ。
民放ではフジテレビジョンがパソコン向けネット配信とテレビ向けVODへの番組販売を両にらみで展開する構え。日本テレビ放送網はパソコン向けネット配信を優先しているもようだ。
現時点ではパソコン向けネット配信はパソコンの普及で利用者数は多いが、品質確保や不正コピー防止の面で放送局側に不安が残っている。一方、VODは品質確保や不正コピーの心配は少ないが、STBの普及はパソコンに及ばないという弱みがある。
こうした違いはあるものの、将来、放送局はネット配信、VOD向け販売をともに本格化すると通信事業者やCATVの関係者はみる。NHKがVODに提供する番組は、民放各社にとってVOD向け番組の需要見通しを探る先行事例として参考になりそうだ。(2005/08/24, 日経産業新聞)
VODによる映像ビジネスが本格化したら、テレビ局の番組制作も視聴率を獲る番組作りからVODで売れる番組作りへ・・・という考え方になってくるかもしれない。今後は、質を重視した作りになるなら歓迎だ!
ただ、先行したNHKのコンテンツでは売れるには弱いと思うが・・・。
最後に、今日の一言
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視聴率からVODへ、物差しが変わる!?
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