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高知県立坂本龍馬記念館 館長日誌

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第26回 反日感情?

  60歳だから出来たウルムチ新疆大留学記  (第26回)


 2003年、西安で起きた日本人に対する嫌がらせ騒動を、ご記憶の人は少なく
ないと思う。日本人留学生のおふざけが、引き金になった。広東のホテルでは、日
本人宿泊客の暴走が、売春事件としてひんしゅくを買い、二つ合わせて騒動に発展
した。
 私はこの騒動を、まず日本からの友人のメイルで知り、インターネットで確認し
た。それから、こちらの新聞をめくって小さな記事をやっと見つけた。つまり、新
疆では積極的には報道されていなかった。いたずらにコトを拡大させない、そんな
裏の思惑を感じたものである。
それについて、ここでとやかく言うつもりはない。
ただ、やはり、知るべき所は、ちゃんと知っているから、中国という国、新疆と
いう地域の複雑さを改めて認識するわけである。今回の場合、“知るべき所”の一つ
に我々、留学生も入っていた。
その連絡は、新大外事処の「焦健=ジャオジエン」氏からあった。
「ご存知と思います。、西安の事件です。こちらにあまり影響はないでしょうが、
注意するに越したことはないので、、、、」。
心配させないように配慮いっぱいの口ぶりで、日本人留学生の一人での夜間外出
禁止、飲酒制限。緊急事態の連絡など、やんわり警告を受けた。口調は柔らかだっ
たが、緊張感が伝わってきた。
 スリの被害に遭ったとか、けんかしたとか、日本人留学生の巻き込まれた事件報
告もいくつか聞いている。一つ、歯車が狂えば、西安のような事態を招く火種はあ
ると思う。イラク戦争が始まった際には、留学生寮のアメリカ人は、自室に引きこ
もった。
日本の自衛隊イラク派遣の際は、留学生教室のドアに、“日本人は出て行け”の意
味の落書きがされた。
外事処は、この種の事例には神経を尖らせている。すぐ、公安がチェックだ。そ
んな時、普段は忘れがちな“ここは中国。新疆だ”を再認識する。
    *     *  
 落書きは多い。万国共通だ。トイレは“落書き教室”みたいなものだ。
教室だと机の中。内容は、ラブレター、学校批判。日本と変わらない。ただ、ナ
イフで、掘り込んであったりする中で、民族の嘆きを訴えるものが少なくない。「祖
国」「統一」「独立」などの文字が気合を込めて躍っている。これにはギクリとする。
 たまたま、一般教室で朝の授業があった。寒い日。凍った窓ガラスに「日本人・・・
・ ・・」の落書きがあった。「張洋=チャンヤン」先生も気づいた。先生は笑いな
がら、実に素早く手で消して“困ったものだ”そんな顔をされた。
あまり早く消されたので内容は理解できず、先生に聞くと、言葉を濁して、答え
てくれなかった。反日感情は根強く残っている。簡単に落書きとして表現されると
ころに、根深さを想像する。
その話を少数民族の友に話したら
「その時は、おれたちが守ってやるさ」。あっさり言った。その自信に満ちた、そ
して挑発的な目の光が印象的だった。
以前、トルコと中国がサッカーの試合をした。トルコが勝って喜びの歓声が上が
った。新疆はそんな所だーと聞いたことがある。“新疆は中国の中東です”友人の言
葉の意味が少し理解できたように思う。しかし、それも中国の一部なのである。何
もかもひっくるめて、中国はばく進している。
実感させる日常がある。


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