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フィギュアスケートを死なせたくない……(ブログ版)

フィギュアスケートを死なせたくない……(ブログ版)

荒川静香

荒川静香(プロフィギュアスケーター)<後編>「フィギュア採点方式に異議あり!?」より抜粋

 ジャッジは猫でもできる!?

二宮: 実際にフィギュアスケートを体験したことがない私にとって、一番わかりにくいのが採点システム。毎年のように基準が変わるので、新方式についていくので精一杯です(苦笑)。選手たちは滑っていて、このくらいの点数が出るというのはわかるのですか?

荒川: だいたいは分かりますが、自分がつけた点数と違うということはよくあります。ジャッジも人間なので、主観が入ったり、名前や演技内容に引っ張られてしまうところがある。トップクラスになると、本来の滑りが出せなかったり、少々のミスがあったとしても高得点が出るだろうという選手もいます。世界選手権のメダリストクラスが、ショートプログラムで失敗しても下位になることはないのは、そのためもあるかもしれませんね。。

二宮: 同じ演技でもジャッジによって、点数が大きく異なることもあります。プロがつけていて、こんなにも差が出るものか。疑問を感じます。

荒川: 今のシステムでは、まず技を認定するスペシャリストがいて、そのジャッジが定めた技の基礎点に対して、他のジャッジがそのできばえをプラス3からマイナス3までの幅で評価しています。私にも、どうしてプラス1のジャッジがいればマイナス3のジャッジもいるのかわからない。本当に見ていたのかなって思っちゃう時も実際のところありますね(苦笑)。

二宮: 荒川さんがわからないんだったら、一般の人はもっと分からない。

荒川: もしわからなかったり、見逃したならば0をつければいいと思っちゃうんです。こんなにバラバラなら正直、猫が座っていてもボタンを押すだけなので同じなんじゃないかと(笑)。プラス3からマイナス3までアトランダムにつけたのと変わらないですから。
 と、いうことにならないためにも、技ひとつひとつに点数を持たせる採点法を取り入れる以上、選手がやったことに対して、スペシャリスト以外のジャッジも含めて、自信を持って点数をつけていく、目の前で起こったことをしっかりと明確に見極められる「目」を持つ必要があると思うのです。その点数の積み重ねが、選手の運命を左右するのですから。

二宮: 点数について解説するのも一苦労ですね。

荒川: 今の方式は解説する側にとっても難しい。なぜ、この選手の点数が伸びなかったのかを説明しようにも、同じように演技した選手が意外にも得点を伸ばすことがある。そうなるとどうしてこのような点数が出たのか指摘しづらいこともあります。そうすると演技を褒めるしかなくなるんです。これでは、納得のいく解説にはならないですよね。
 
二宮: 裁判員制度みたいに、これからは一般の方も加えるのも一案かもしれません(苦笑)。

荒川: 「猫と一緒じゃない」って反論するくらいの自信と信念、誇りを持っているジャッジに採点してほしいですね。実はジャッジにはフィギュアスケートの未経験者もいるんです。ルールだけを勉強して受験を受け、ジャッジを務めている。「本当はこれは高度な技なのに」と思うものが適切な評価にならなかったり……。

二宮: 現行のルールは採点基準を明確化するために導入されたと聞きましたが、選手の感覚からすれば実態は逆だと?

荒川: 基準を細かくすればするほど、明確じゃない部分が目立ってしまうんですよね。そもそもフィギュアスケートは人の主観が入る競技。採点の明確化をウリにできるものではないかなと。技の認定には「何秒、その状態を保つか」「何回転するか」といった数値が定められていますが、フィギュアの特徴にはそぐわない。これでは、たとえ音楽に合わなくても、3秒、技を続けたほうが点数になるという話になってしまいます。

二宮: 以前はジャッジ別に国籍と点数が出ていましたが、近年は誰が何点をつけたのかわからないシステムになっていますね。

荒川: ソルトレイク五輪で判定に対する疑惑が浮上して、国同士での採点の裏取引を防止するためにジャッジの匿名化が行われました。でも、不可解な点数を出せば、そのジャッジが責められるのはプロである以上、当たり前。点数の出所をあやふやにしたら、ジャッジ能力は全く問われなくなってしまいます。選手よりもジャッジを守るためのルール改正と思わざるを得ませんね。
 



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