わしゃようしっとった。
主人、「こんなもんや、文士なんてこんなもんや、ゲポッ、わしゃよう知っとった」と一人言をくり返し、酔払いつづけてねてしまう。「こんなもんや××なんてこんなもんや。わしゃよう知っとった」というのは、この夏ロシア旅行したときの連れ、八十過ぎの銭高老人の大阪弁の口癖だ。銭高老人はロシア各地をまわる間「こんなもんや、ロッシャなんてこんなもんや、わしゃよう知っとった」「こんなもんや、砂漠なんてこんなもんや、わしゃよう知っとった」「こんなもんや、どこの国でも王様というもんは。皇室同士、宝物をやったりとったりしとるんや。わしゃよう知っとった」とつぶやくので、主人も竹内さんも、その口調を真似て何か言ってはふざけたのだ。