感染ルンです。。。

2009/05/30(土)08:27

アオリのお勉強

テクニック(60)

えー、andoodesignさんのブログで、ノクチルックスのレンズが何らかの不具合で曲がってしまったがために周辺でピントが合っているのでは、という話題がありました。僕はそれなりに別の要素を説明しました。そのときでてきたのが、アオリの法則。これを今回はお勉強いたします。写真の技術として知っておいて損は無いと思います。 そもそも「アオリ」とはなんでしょうか。 表記方法がカタカナなのですが、外来語ではないと思います。たぶん傾けるという「あお・る」から来ていると思います。 一般的に「アオリ」ができるカメラとは、レンズとフィルム面が可動できる大型カメラ(ビューカメラ)です。中判の一部の機種およびライカ判に特殊なレンズを使うことで、「アオリ」が可能になります。 アオリの動きを確認しましょう。 カメラを構えて、手前からフィルム面、レンズ面、被写体という順になっている場合、この直線をZ軸と仮定します。被写体の位置を固定した場合、ピントを合わせるためには、レンズ面あるいはフィルム面(カメラそのもの)をZ軸上で前後させます。 アオリとは、レンズ面あるいはフィルム面を動かすことです。 被写体に対してフィルム面あるいはレンズ面を平行移動させます。特にY軸上に上方向を「ライズ」、下方向を「フォール」、と言います。X軸上に左右方向移動することを「シフト」と言います。また、上下左右に平行移動することをまとめて、「シフト」と呼ぶこともあります。 次に、フィルム面あるいはレンズ面の中心軸で傾ける動作があります。Y軸を中心とした面を左右に首振りすることを「スイング」といいます。X軸を中心とした面を上下に首振りすることを「ティルト」といいます。 この8種類、2面で計16種類の動きを組み合わせることで、パースペクティブコントロールとピント面コントロールをすることが「アオリ」です。 この内、「ライズ」、「フォール」、「シフト」は主にパースペクティブコントロールの役割を担い、「ティルト」と「スイング」は主にピント面コントロールの役割を担います。 パースペクティブコントロールを使う例。建物を見上げると上すぼまりになります。そこでカメラを建物に対して水平に構えて、レンズ面を「ライズ」させることにより、通常なら切れてしまう建物の上部を写し、かつ平行を保つことができます。 片目を閉じて目の前に親指と人指し指で輪を作り、モニターを見てください。そのときは、モニターの中央部しか見えないと思います。視点はモニターの中心を直視したまま指の輪を上に動かすと、視界の中にモニターの上部が視界に入ってきます。 ピント面コントロールを使う例。手前から奥までピントを合わせたいとき、一眼レフのようにアオリができないカメラの場合は、絞ることで被写界深度で合わせます。しかしそれは本当にピントが合っているのではなく、許容錯乱円内まで光束を小さくするから、ピントが合って見えるのです。そこで、ピントの合う面を移動させることによって、開放であっても手前から奥までピントを合わせることができるのです。 これを逆手に動かして俯瞰撮影したのが、ミニチュア風写真ですね。 そして、人間はレンズ面とフィルム面が固定されていますから、シミュレーションできません。 ここまでで重要なことをおさらいします。 レンズ面とフィルム面が平行に固定されたカメラでは、ピントは1点(面)にしか合わないということです。つまり、レンズ面とフィルム面によって距離を合わせた被写体の、平行な面のみにピントが来るということです。 この「平行の面しか合わない」状況を「平行じゃない面にピントを合わす」ことがアオリによって可能になります。しかし闇雲に16方向動かしたところで、日が暮れるだけです。ピントが合うための「法則」がちゃーんとあります。 これを「シャインプルーフの法則」(あるいは原理)といいます。英語表記すると、「Scheimpflug principle」です。 ♯ andoodesignさんのところに「シャインプフルグの法則」と書きましたが、僕はそのように教わったのです。Google的には「シャインプルーフ」の方が多いので、今後はその読み方で(汗) 「シャインプルーフの法則」を言葉にすると、 「レンズ面とフィルム面の仮想延長面がある1つの軸で交わるとき、その同じ軸で交わる被写体面に焦点が合う」 ということです。 わかりにくいので図にしてみました。 上の図は、カメラ側の2面が平行の場合、ピント面も平行になる、というほとんどのカメラの状態です。 下の図が「アオリ」をした場合です。わかりやすくするために、フィルム面は垂直のままにしました。このようにレンズ面を「ティルト」させることでピント面が斜めに移動します。そのピント面は、ピントを合わせたフィルム面とレンズ面の中央を結んだ水平線の先の被写体から、フィルム面から出る補助線とレンズ面から出る補助線の交わる点に向かう斜めの面となります。これによってフィルムには、手前から奥へ向かう面に対してピントが合うことになります。 もちろんこの交差する点は任意に定めることができるので、ほぼありとあらゆる「面」に対してピント面を移動させることが可能になります。 以上が「アオリ」の仕組みと法則です。 ちなみに、レンズ面とフィルム面の「ティルト」と「スイング」の動きには、異なる意味があります。レンズ面の動きによるピント面の移動には被写体のパースペクティブが変化しないことに対して、フィルム面を動かすとパースペクティブが変化します。理由ですが、フィルム面が動くということは、被写体に対して近づくあるいは遠のくわけですから、被写体のサイズが変わります。つまり、近づけば大きく写るし、遠のけば小さく写ります。したがって、誇張させることが可能になるということです。 基本的にフィルム面を動かした誇張は、妙な感じになることが多いのであまり使いません。ならばレンズ面を動かすことを多用すればよいかと言えば、これまた困ったことが発生します。それがレンズのイメージサークルの大きさに制限されてしまうことです。イメージサークルを外れてしまえば、写りませんから。 ここにもレンズ沼が大きく存在していましてねぇ、大判用レンズにもラインナップがあるんですよ。焦点距離と明るさという関係は一眼レフと同じですが、イメージサークルの大きさという別の選択肢も入って来ます。当然ながらイメージサークルの大きいレンズの方が使いやすいのですが、設計が難しいので高額です。 だから、今度のキヤノンのTS-E 17ミリレンズがばかっ高いんですよ(泣) 「ちなみに」が長くなっちゃいました。 最終話。僕が「andoodesignさんのノクチルックスのレンズが曲がっているとは思いにくい」という結論を出した理由、わかりますよね? ライカ、ノクチルックスという2面の関係と、ピント面とピントがあるように見える周辺を「シャインプルーフの法則」で考えたとすれば、相当な角度にレンズが曲がっていなければならないのです。加えて数枚で構成されている内の1枚が不具合で曲がっていたとして、法則よろしくピント面が移動するとは考えにくいのです。故に、ノクチルックスに不具合は無いと考えられますよ。つーこと。 大判カメラはこの「アオリ」が楽しいんですよねぇ。 絶滅種になりかけていますが・・・(泣) 久しぶりにレンズベビーを使って遊んでみようかなー♪ & 日記が面白かったという人も、web拍手をクリックしてくださいね♪

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