2005/12/16(金)20:49

本気かそうでないかの区別

詩 ~月闇と指先~(30)

   こいつは眠る前いつも白い錠剤を呑む。    「何なんだ、それ。」    「錠剤だよ。」    「俺を馬鹿にしてるのか?」    「何てことだ。知らなかったよ。馬鹿だったんだね。」    「お前、とんでもなく俺のこと嫌いだろ。」    「それこそ、とんでもない。愛してるよ。世界中で下から三番目ぐら     いには。」    「・・・・・泣いていいか?」    「舐めるように慰めてあげるよ。」    「遠慮する。まだ死にたくないからな。」    「そんな七面倒くさい事をしなくても君は何時でも死ねるよ。」    「何で俺が死ななきゃならないんだ。」    「皆いつかは死ぬよ。」    ありがたいことに、とこいつはいつものように笑う。    「で、何なんだよ。その薬は。」    「遠回しに君には言いたくないって言っているのが分からないのか     な。」    「分かってるぜ?」    「君ってそういう人間だよね。」    「で、効用は?」    「永劫の眠り。」    「・・・・・・・・・・・・。」    「冗談だよ。」    こういう時だ。        こいつののらりくらりとした口調と割と何も考えてない笑みに。    本気かそうでないかの区別がつかない・・・・・・。

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