1343586 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

シン・足立淳のブログ彼岸花

シン・足立淳のブログ彼岸花

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Rakuten Card

Profile

足立淳

足立淳

Calendar

Favorite Blog

まだ登録されていません

Comments

人間辛抱@ Re:団扇4泥。(06/16) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
マシーンデブ殺し川井さん17歳@ Re:団扇4泥。(06/16) ねえ、あだちさん、インガオーホーって知…
ボイスロイドのファン@ Re:団扇4泥。(06/16) ここ最近のボイスロイド界隈への攻撃、ネ…
http://buycialisky.com/@ Re:昨日のイベントの感想とか(09/10) cialis superis cialis safe for womencia…
http://buycialisky.com/@ Re:氷菓画像3.伊原摩耶花(07/08) find search 76k cialis viagra pagescial…

Headline News

Freepage List

2011/01/04
XML
カテゴリ:同人
 ある意味、今年の冬コミの目玉というべき本、サークル「蛸壷屋」さんの新刊、「俺と妹の200日戦争」。「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」のパロディ本(同時に『積み木くずし 親と子の200日戦争』も下敷きにしている)。

 原作のライトノベルや、アニメを見た人が、まず一概に感じるのは「桐乃は嫌なヤツ」ということだと思う。もちろん、桐乃を可愛いと思う人もいるだろうし、むしろ真奈美や黒猫、あるいは沙織に対して嫌な感じを持つかも知れないが、それでも桐乃に対して「ヤなヤツ」とか「生意気な中学生」という感情は、共通のものだろう。

 なにせ、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、モデルの仕事もやっている。もちろん性格が優しくておしとやかで謙虚なら言うことないのだが、超わがままで高飛車でナマイキ。この作品のメイン読者は、いちばん相手にしたくない存在だ。頭のてっぺんからつま先まで、全身から「嫌」の記号を発信している。なんせ原作者の伏見つかさ先生自身が、「嫌なヤツとして描いています」と発言しているくらいだ。読者やファンが桐乃を嫌ってもなんのおとがめもない。

 もちろん私も、桐乃はかなりムカつく存在だ。が、この作品でいちばん腹の立つのは桐乃ではない。その兄、つまり作品の主人公である、高坂京介である。

 京介は、作中ではあくまで「ごく普通の、どこにでもいる市井の高校生」として描かれている。それはかまわない。ライトノベルの主人公は、あの作品もこの作品もどの作品も、読者の共感を呼びやすいキャラクター像、つまりは「凡庸な学生」だから。京介が普通の高校生でもかまわない。

 が、京介はなぜか「自分の普通ぶり」に、揺るぎない自信を持っているのだ。

 小説ではひととおり自分の紹介をして「どうだ、普通だろう?」と胸を張り、妹や他の人たちの、ちょっと変わっている人を引き合いに出しては「普通がいちばん。ビバ、普通の人生だ」とうそぶく。そして、京介本人は、その「普通」のままでいたいと思い、昨日と同じ今日がまた明日以降もつづいていればいいとだけ願っている。特に趣味もない、部活やサークルに打ち込んでいるわけでもない(原作5巻からゲーム研究会に入るが、別にゲームを作りたいわけではない)。何もしていないのに、何もしていない自分の人生が素晴らしいと、なぜか根拠なく思っている。

 そして、自分から見て「普通の世界の仲間」と認識している田村家に入り浸っては、幼馴染みの真奈美やその弟に安心感を抱いている。しかし、真奈美も髪を切るし、弟もイメチェンをはかったりする。今の自分に満足できずに、何とかして変わろうとしてあがく。それが本当の、「普通の若者」なのだ。自分のことをパーフェクトだと思っている桐乃だって、やめられないオタク趣味をなんとかしようと、日々もがいているのだ。

 それに比べて、主人公京介の、なんと向上心のないことか。「今がいちばん」という視点で、実は京介は他の人間をバカにしているのだ。もちろん、作品ではそういう具合には描かれてないし、アニメも京介に対して何の含みも持たせたキャラクターの立て方もしなかったので、おそらく皆さん見過ごされていると思うが、高坂京介、実は相当の「ナルシスト」なのである。けど、「俺の妹」の二次創作作品は、ついぞそういう視点で描いたものはなかった。

 蛸壷屋さんは違った。桐乃、(原作からちょっとアレンジされた)あやせ、黒猫、沙織、そして真奈美たちの目を通して、京介をちゃんと「嫌なヤツ」として描いてくれた。45ページ、「フフ」と軽く笑う京介の後ろ姿に「アレ? オレってもしかしてヤリ●ン?」と重なるモノローグ。これ、「京介=ナルシスト」という認識がなければ描けないだろう。

 桐乃はその生意気さが仇となって天罰を受ける。そういうシナリオは誰でも書ける。けど、生意気なのは桐乃だけではない。兄の京介も同じくらいかそれ以上に生意気なのだ。

 「なあ桐乃、俺達は大人の真似事をやるには早過ぎたのか?」

 これである。「京介と桐乃が揃って嫌なヤツ」ということを踏まえている蛸壷屋さんだからこそ、呟かせることのできた心情なのだろう。

 だから、蛸壷屋さんの作品が、ハッピーエンドなわけがない。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2011/01/04 05:26:04 PM
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.