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LOYAL STRAIT FLASH ♪

LOYAL STRAIT FLASH ♪

第五話

5 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:21:09.56 ID:vbwFTNTZ0
第五話 「彼女」


僕は再び白い壁を眺めていた。
いつの間にか足の傷は何事もないように治っている。
しかし、僕の頭は、それとは違う思考でいっぱいだった。

そもそも、一体この白い部屋は何処なんだろうか?
そんなことを僕は考えていた。
しかし、謎を解くにはここには材料が無さ過ぎる。
とりあえず、ここから出ないと…

しかしこの部屋には、どこにも出られるところは無い。
だったら、壁でも壊してやろうか…?

と思った瞬間。僕の手にはハンマーが握られていた。

( ^ω^)「…やってみるお」

僕は壁の前に立ち、思いっきりそれを振りかぶる。
しかし、次の瞬間、僕は予想とは違った感覚を手に覚えた。

6 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:21:48.10 ID:vbwFTNTZ0

ぼよよん。

そんな擬音がぴったりであろうか?
幾ら叩いても、跳ね返るばかりで、ヒビすら入らない。
その後、ドリルやつるはし、斧やチェンソーなど、
もっと強力な道具を思い浮かべ、それを手に取ったが、
結果はやはり同じだった。

(;^ω^)「なんなんだおこれは?」

さっぱりわけわかめである。

そうこうしているうちに、また目の前の空間は真っ白になる。

8 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:22:19.94 ID:vbwFTNTZ0

しかし、今回はいつもとは違う変化だった。
その眩しさはいつまで経っても、消える事は無かったのだ。
眩しさに目が眩みつつも、僕は薄目になりながら目の前を見る。

そこには、今までと同じく、ドアがそびえ立っていた。
しかしその色は、一番最初の黄色よりも、
この部屋の色の白よりも眩しく、
それでいてなお、金色のように鮮やかだった。

僕はゆっくりと足を進める。
そして、そのドアノブに手を伸ばす。
いつもならば、違和感と吸い込まれる感覚、
その二つを感じていたが、今回はそれが無かった。
むしろ、暖かくて何か懐かしい感じ。

僕は迷わずドアを開けた。

9 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:22:53.36 ID:vbwFTNTZ0
しかし僕はドアを、思わず閉めるのを忘れてしまった。
それくらい、その光景は美しかったから。

空は黒に染まっていたのにも関わらず、辺りは明るかった。
そこは大きな門の前。
その門には電飾が所狭しと並べられている。
もしかしたらこの世の全ての鮮やかな色が、
そこには有ったのかもしれない。
それが、天井の黒との対比で鮮やかに浮かぶ。

( ^ω^)「………はっ!?」

僕は慌てて後ろのドアをようやく閉める。
そして振り返ると、一人の男が立っていた。


10 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:23:25.71 ID:vbwFTNTZ0

頭はアフロへアーでその色はまぶしいほど赤く、
顔は白く塗られていて、その中心には赤い玉があった。
服は、赤白青の三色の布を縫い合わせたような変な形をしている。

(;^ω^)「ドッ…ドナルド!?」

では無くピエロのようだった。
彼はなにやら左手に何かを持っていた。
それは上に伸びた数本の紐のようなもの。
その一本一本の先にはちょっぴり細長い球体。
それらの色は一つ一つ違っている。

そして彼はそのうちの一つを僕に手渡してきた。
反射的に僕はそれを受け取る。
そして彼は頭を下げ、右手の肘を曲げ、
手の平を胸に当てて、深くお辞儀をした。
その後、彼は右腕を門の方に地面と平行に伸ばす。


11 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:23:59.23 ID:vbwFTNTZ0
(;^ω^)「入れ…ってことかお?」

彼は無言で頷いた。
それと同時に閉ざされた門は開く。
すると地面から、色とりどりの光が、
レーザーのように真っ直ぐと、ばらばらに伸びる。
それは門を照らし、その色をさらに鮮やかにする。

(;^ω^)「おお~~すげ~~」

もはや、その言葉しか出てこない。
というか、その美しさを形容する言葉が出てこなかった。
僕の足はゆっくりと門に吸い込まれていく。



12 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:24:38.56 ID:vbwFTNTZ0
(;^ω^)「うわあ…」

門を抜けたとき、もはや言葉らしい言葉を出すのが躊躇われた。
思わず風船を放してしまう。

僕の目の前を横切るのは一つの隊列。
その先頭にはシンバルを持ったサルのぬいぐるみ。
着ぐるみではなく、ぬいぐるみである。
それが生き生きと動いている。

その後ろには、ラッパを吹くネコのぬいぐるみ。
さらに、太鼓を叩くイヌのぬいぐるみ。
ライオンのぬいぐるみが雄々しく歩いている思えば、
その上をカエルのぬいぐるみが飛び跳ねている。
ニワトリのぬいぐるみが美しい声で歌えば、
ウサギのぬいぐるみがダンスで応える。

それは、不思議で別世界のような光景だった。

そして、その隊列の行進が通り過ぎた頃、
僕の目に一つの人影が写っていた。

14 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:25:14.09 ID:vbwFTNTZ0
ξ゚ー゚)ξ 「いらっしゃい」


それは、僕と同じ位の年頃だろうか?
背丈は僕より頭一つ小さい位。
服装は、純白のワンピース。
髪は、少し茶色く、毛先はくるりと渦巻いている。
肌は、そのワンピースに負け無いくらい白く、
透き通っているように見えた。

(;^ω^)「………」

先程の赤い扉の中の出来事もあり、少し身構えたものも、
彼女はただ、優しく微笑んでいるだけだった。
その笑顔を見ていると、なぜだか分からないけど癒される。
そしてどこかしら、懐かしい感じがした。


15 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:25:35.89 ID:vbwFTNTZ0
ξ゚ー゚)ξ「…?…どうしたの?」

(;^ω^)「あっ!?いや、なんでもないですお」

ξ゚ー゚)ξ「ふふふっ。別にそんなにかしこまらなくていいわよ」

(;^ω^)「そうですかお…」

ξ゚ー゚)ξ「別に敬語じゃなくていいわ」

(;^ω^)「…んじゃ、お言葉に甘えて…」

ξ゚ー゚)ξ「…相変わらずね」

その言葉に僕は何か引っかかった。
彼女は、僕と会った事があるのか?
いや、というかむしろ僕が彼女に見覚えがあった。
しかし、誰だったかは上手く思い出せない。


17 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:26:06.00 ID:vbwFTNTZ0
(;^ω^)「…つかぬことを伺いますが…何処かでお会いしましたかお?」

ξ♯゚△゚)ξ「ああ~っ!!もうまどろっこしいわね!!
       タメ語でいいって言ってんの!!」

Σ(;゜ω゜)「はうあっ!!…はっ…はいですお!!」

彼女の天使のような微笑が、急に修羅の顔へと変わっていく。
そのギャップに僕は驚いた。

ξ゚△゚)ξ「まったくもう…キャラ変えるのも疲れるわ」

(;^ω^)「…で何処かで会いましたかお?」

ξ♯゚△゚)ξ「うっさい!!次敬語で喋ったら、鉄拳喰らわすわよ!!」

Σ(;゜ω゜)「ひいっ!!…イ…イエッサー!」

彼女の迫力には何故か逆らえないものがあった。
なぜか反射的に返事をしてしまう。


18 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:26:45.55 ID:vbwFTNTZ0
ξ゚△゚)ξ「んじゃあ、行くわよ。付いてらっしゃい」

(;^ω^)「はい…」

僕の質問は何処へいったのだろうか?
疑問をよそに、彼女は僕の手を引っ張り、駆け出していく。

(;^ω^)「何処に行くんでs…だお?」

ξ゚△゚)ξ「ジェットコースターに乗るわよ!!」

その視線の先には、赤色に輝く巨大なレールがあった。
次第に、そのレールは大きくなっていく。
そして、その根元には無骨な鉄でできた階段。
しかし、その色は照明のせいか鮮やかに輝いている。
彼女はハイヒールを履いているにも関わらず、
器用に階段に駆け上がっていく。

そして、その先にはジェットコースター。見てみると、
それの先頭にはネコの顔が彫られた可愛らしいものだった。

19 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:27:23.26 ID:vbwFTNTZ0

ξ゚△゚)ξ「安全器具つけた~?」

( ^ω^)「はいだお」

僕は首元に厚いスポンジのようなものが巻かれたパイプを固定して、
横に座る彼女に返事をする。

ξ゚△゚)ξ「んじゃ、レッツゴ~!!」

その掛け声とともに、ジェットコースターは出発する。

(;^ω^)「おおおおおおおお!!」

体に急激なGを感じる。
ジェットコースターってレベルじゃねえぞ!!


20 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:28:07.26 ID:vbwFTNTZ0
みるみるうちに、周りの景色が変わっていく。
そして、気がつけば暗闇の中に居た。
しかしその所々に白く輝く点が散らばっている。

不意に後ろから圧力を感じる。振り返ってみると、
そこには巨大な隕石が追いかけてきている。
それは次第にスピードを上げ、近づいてきた。

(;^ω^)「ぶつかるううううう!!!」

と叫んだ瞬間、ジェットコースターは下降する。
そして頭上スレスレのところに隕石は通り過ぎる。


21 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:28:30.12 ID:vbwFTNTZ0
そして、再び前を見ると、今度は目の前に惑星が迫っていた。
その星は茶色いまだら模様をしていて、
それを囲うようにドーナツ状の輪が囲んでいる。
目の前の茶色に向かって加速し、
気がつけば輪の上に着地していた。
そのままそれに沿うように激しくカーブしながら走る。
一周した後、その勢いで輪のレールから跳躍。

次に現れたのは、凸凹の多い惑星。
次第に高度を下げて、その表面に着陸する。
しばらく平坦なところを走っていたが、
急に先の地面が見えなくなる。
そこには巨大な大穴が広がっていた。
これがクレーターと呼ばれるものだろうか?
その直径は100メートルはある。
今度はその底に向かって急降下だ。


22 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:28:57.51 ID:vbwFTNTZ0
(;^ω^)「死ぬううううううううううう!!!」

クレーターの中は光が届かないのか、
先は真っ黒で底が無いように感じた。
そして、そのまま吸い込まれるかのように、
僕の視界は暗闇に包まれる。

しかし、その先には一筋の光が見えた。
次第にその光は明るくなる。
そして辺りが明るくなると、
再び僕は宇宙空間の中に居た。

後ろを振り返るとそこには、
黒く渦巻くブラックホールが見えた。
そうか、あそこから抜け出してきたのか。
再び前を見ようとする途中、
横では羽の生えた白い馬が併走していた。
その体には星のような点がいくつか浮かんでいる。


23 名前:猪(甘党)[] 投稿日:2006/12/23(土) 20:29:22.41 ID:vbwFTNTZ0
我に還ると、ジェットコースターは再び、
金属のレーンの上にあり、その動きを止めていた。
ふと、右手の手のひらに暖かい感触。
ゆっくりと、右下に視線をやると、
僕の手をか細い彼女の手のひらが包んでいた。

(;^ω^)「…あの…手が…その…」

Σξ;゚△゚)ξ「っ!?」

それに彼女も気づいたのか、ぴくり、と体を震わせた。

※ここから携帯

31 名前:猪(やせ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 21:24:04.61 ID:E32VWjc1O
ξ;゜△゜)ξ「………」

ξ//△/)ξ「…わっ、私が落っこちないように、つかまってただけだからねっ!!」

慌てて、彼女はそう切りかえす。
顔が赤く見えるのは気のせいだろうか?

ξ//△/)ξ「…ほっ、ほら!!さっさと次行くわよ!!」

そう言うや否や、彼女は僕を押し出し、
ジェットコースターから降りる。
そして、僕の手をとり、また何処かに駆け出していく。
彼女の顔は後ろからは見えないが、
なんだか微笑んでいるような気がした。



33 名前:猪(やせ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 21:31:45.67 ID:E32VWjc1O
次にやって来たのは、西洋風の城の前だった。
その壁々には二人の悪魔が向かい合うかのように、
手を繋いで飛ぶ様子が、彫刻されている。
その様子はこの城の壮厳さと不気味さを引き立たせていた。
その上には血のように真っ赤に染まった月が浮かぶ。
そしてそれをバックにして、
蝙蝠の群れが円を描くように飛び回っていた。

(;^ω^)「…ここは?」

ξ゜ー゜)ξ「…一回行ってみたかったのよね」

そうとだけ呟くと彼女は僕を中に引っ張っていく。
その中は、たいまつの光が点在するのみで薄暗く、
まるで石のブロックで出来た洞窟のようである。
そして、それを抜けると大きいホールのようなところに出る。




34 名前:猪(やせ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 21:34:53.06 ID:E32VWjc1O
その中は、先程の洞窟と同じように、
前面石のブロックで囲まれている殺風景な雰囲気だった。
しかし、その奥には、裂ける様に大きく口を開け、
根を張るように床に四肢を付けた石の悪鬼の姿がある。
それは、今まさに僕を喰らい尽くさんばかりの表情だ。
そして、その周りにはゆらゆらと、
燭台の上で数百本の蝋燭の火が揺れる。


しかし、それを見つめているときに、あたりを包む突風。
揺れるように火は一瞬で消え去ってしまった。
そして、辺りは暗闇に包まれる!!


「キャアアアアアアアッ!!!」


その空間を埋め尽くすのは女性の悲痛な叫び声。
そして、僕の前に、青白い炎のようなものが浮かぶ。
それは、次第に揺れながら形を変え、
全身黒のローブを纏った男の形になる。
そしてその右腕には、僕の前に居た彼女が抱えられていた。


36 名前:猪(やせ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 21:39:06.46 ID:E32VWjc1O

「フハハハハッツ!!!!!
 姫、そしてお前の妹は預かったぞ!!
 私は魔王ベルゼバブ!!
 助けたければ魔龍城まで来るのだな!!
 さもなくば…生贄にしてくれようぞ!!!
 しかし、『聖なる石』の無いお前に、
 私が倒せるかな?」


そう言うと、どこかのゲームか漫画で聞いたような、
テンプレ通りの台詞を吐き捨ててその男は消えてしまった。
居場所と攻略法をわざわざ知らせるとは親切である。
実は彼はいいやつなのかもしれない。
それにしても僕の妹…?
何かぼんやりと女性の顔が浮かんだが上手く思い出せない。

気がつくと、蝋燭の火は再び灯り、辺りは明るくなっていた。
そこで、始めて僕は体に異変に気づく。
僕の左手には盾。なにやら獅子の顔お様なものが彫刻されている。
僕の右手には剣。その刀身は燃える様にギラギラと輝く。
そして、いつの間にか僕は胸当てに小手、マントを纏っていた。

ふと、左を見ると、そこには上へと続く石の階段がある。
凄くわかりやすいな、と思いつつ僕は足を進めた。
が、その奥から、カチャッ、カチャッ、と、
鉄をこすり合わせるような鈍い音が聞こえてくる。


37 名前:猪(やせ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 21:42:48.22 ID:E32VWjc1O
その音がはっきりと聞こえた頃、
僕は、その姿をはっきりと確認できた。
それは、真っ白な人骨。それが人の形を成していた。
そして、その頭は、錆び付いた鉄の兜で覆われ。
その手には錆び付いた、鈍く輝く剣が握られていた。
その骨の塊は、カチカチ、と音を立て、顎を上下させている。

(;^ω^)「うあああああ!!ホラーマンktkr!!」

その、彼とも彼女とも居えない物体は、
僕の姿を確認したかのようにこちらを向き、
急にこちらへ駆け出していく。

(;^ω^)「NOオオオオオオッツ!!!」

僕も、反射的に、背を向けてダッシュする。
そして、悪鬼の石像の方へと向かっていく。
当然後ろの骸骨は追いかけてくる。
僕は走る!走る!走る!!!
見る見るうちに目の前の石像は大きくなってくる。
そして、気がつけば蝋燭の炎は目と鼻の先にあった。


38 名前:猪(やせ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 21:44:45.31 ID:E32VWjc1O
僕は急いで回れ右をして、方向を変える。
そして、その背中に風圧を感じる。
見てみれば、蝋燭が数本、上下に真っ二つに切れていた。
なおも僕は、走る!走る!走る!

僕はひたすら逃げ出した。だがそれも虚しく、最後には
『しかし まわりこまれて しまった』
という言葉に、ぴったりな状況に陥ってしまった。
気がつけば、僕はホールの角に追い詰められていた。
かちゃり、かちゃり、と音を立て、
目の前の骸骨はにじり寄ってくる。

そして、目の前の剣が振りかぶられた時、
僕は、終った。と思った。

40 名前:猪(やせ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 21:47:21.34 ID:E32VWjc1O
しかし、僕の予想とは裏腹に、別の事態が起こった。
気がつけば、僕の剣と彼の剣はピッタリとくっついていた。
骸骨はなおも、その剣を僕に振り下ろす。
しかし、再びそれは僕の剣に吸いつけられる。
気がつけば僕の腕は勝手に動いていた。

(;^ω^)「おっ?おっ!?おっ!!」

気がつけば、それは時代劇の殺陣のようだった。
骸骨が振りかぶれば、僕の剣はそれを阻む。
骸骨がなぎ払えば、僕の剣はそれを弾く。
僕は、剣の動きに合わせて動くだけで良かった。


41 名前:猪(やせ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 21:48:37.81 ID:E32VWjc1O
( ^ω^)「おおおおおおおッ!!!!!」

最後に僕の腕は右斜めに剣を振り落とす。
すると、空に一閃を描いたあと、骸骨は真っ二つになり、
ガラガラと音を立てて崩れ去った。

( ^ω^)「すごい!!すごいお!!」

この剣の力に感心しつつ、
僕の視線は、再び階段の方へと向かっていた。

( ^ω^)「行くお!!」

そう言うや否や、僕は駆け出していった。

43 名前:猪(やせ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 21:51:21.11 ID:E32VWjc1O
スペースの関係上、
僕の冒険談は割愛させて頂くが、簡潔に説明しよう。
階段を登ったあと、僕は巨大なオーガに襲われるも、
この剣のおかげで何とか倒すことができた。
そして、階段を登るたびに別のモンスターが現れる。
ゴブリンの群れや、ぶよぶよとしたスライム、
鋭い牙を持った三つ首の猛獣に、大きな毒蛇。
数え切れないくらいのモンスターが現れたが、
僕はそれらを、ものともせず倒していく。

そして、僕はある大きなホールにたどり着いた。
そこには、一つの人影があった。



44 名前:猪(やせ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 21:53:21.43 ID:E32VWjc1O
「フフフフフ!!私は四天王の一人『不死身』のサイアーク!!
 ここが貴様の墓場となるのだ!!」

(;^ω^)「なにぃ!!不死身だと!?倒せないじゃないか!!
      チクショオオオオオオ!!!」

ならば、と思い僕は駆け出していった。

(;^ω^)「くらえサイアーク!
      新必殺音速火炎斬!!」

その剣に炎を纏い僕は突進する!!

「さあ来いブーン!オレは実は一回刺されただけで死ぬぞオオ!」

突然のカミングアウトをよそに、僕は彼の体を貫く!!

「グアアアア!
 こ、このザ・フジミと呼ばれる四天王のサイアークが、
 ……こんな小僧に…」

そして、彼は断末魔を上げる。

「バ…バカなアアアアアア」

そして、僕はそのまま突進を続ける。


47 名前:猪(やせ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 21:56:41.32 ID:E32VWjc1O
その一方、ここは、
暗闇に包まれたある部屋の中。
そこには異形の者たちが三人。
奇妙な椅子を並べ、彼らは何かを話しているようだった。
彼らの居る部屋の向こうからはなにやら断末魔が聞こえる。

『グアアアア』

「サイアークがやられたようだな…」

手前で、そう語る黒マントに鉄仮面を纏った男。
その名は四天王が一人、ゴクアーク。

「フフフ…四天王の中で最も最弱…」

それを聞き不気味に笑う、包帯のようなものを纏う男。
その名は四天王が一人、キョウアーク。

「人間ごときに負けるとは魔族の面汚しよ…」

その目に冷酷さを浮かべた、四本の角を持った男。
その名は四天王が一人、レツアーク。


48 名前:猪(やせ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 21:59:14.89 ID:E32VWjc1O
すると扉が不意に開く!!
そこには、剣に屍を突き刺しながら突進するブーンの姿!!

(;^ω^)「くらええええ!」

「グアアアアアアア」

次の瞬間、彼らは一斉に貫かれ、
サイアークもろとも串刺しになっていた。
一列に椅子を並べていたのがまずかったのだろう。

(;^ω^)「ハァ…ハァ…やった…
      ついに四天王を倒したお」

床には、四天王と呼ばれていた男達が地に伏していた。

(;^ω^)「これでベルゼバブのいる、
      魔龍城の扉が開かれるお!!」

目の前には、仰々しい装飾が施された扉。
それは、ギイイィ、とゆっくりと開く。
そして、その中から聞き覚えのある声が聞こえてくる。

『よく来たなソードマスターブーン。
 待っていたぞ…』




50 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:01:48.49 ID:E32VWjc1O
(;^ω^)(!!ここが魔龍城だったのかお…!!
      感じるお…ベルゼバブの魔力を…)

僕はその中に恐る恐る足を踏み入れた。
そこには、巨大な玉座に身を預けたベルゼバブの姿があった。

「ブーンよ…戦う前に一つ言っておく事がある」

「お前は私を倒すのに『聖なる石』が必要だと思っているようだが…」


「別に無くても倒せる」

(;^ω^)「な…なんだって~!?(AA略)」

「そして姫は退屈していたようなので、
 城の入り口に開放しておいた」

「後は私を倒すだけだなクックック…」


51 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:02:42.86 ID:E32VWjc1O
( ^ω^)「フッ…上等だお。
      僕も一つ言っておく事があるお」

( ^ω^)「この僕に妹がいるような気がしていたが、
      別にそんなことはなかったお」

「そうか」

どうやら、さらわれた者は人違いであったようだ。

そう言うと、僕は再び剣を持つ手の力を強める。
そして、体の底から振り絞らん限りに、叫呼を上げた。

( ^ω^)「ウオオオいくぞオオオ!」

「さあ来いブーン!」



ご愛読ありがとうございます。次回作をご期待下さい。


52 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:03:56.40 ID:E32VWjc1O
( ^ω^)ブーンはユメクイのようです改め
( ^ω^)ブーンはソードマスターのようです 「完」

58 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:07:21.10 ID:E32VWjc1O
ξ;゜△゜)ξ「…思ったより、姫役はつまらなかったわね。
       悪いけど先に出してもらったわよ」

( ^ω^)「そうかお?僕は結構おもしろかったお」

僕たちはあの城を背に再び歩いていた。

その後、僕は彼女に様々なアトラクションに引きずりまわされる。
魚の形をした潜水艦で、星の砂が舞う深海を彷徨ったり、
一角獣のメリーゴーランドに跨り、夜空を飛び回ったり、
クジラの船に乗って、七つの島々を巡り渡ったり、
数え切れないほどの乗り物を僕たちは堪能した。

それらの上から眺める世界も今まで同様に、
どれも見たことも、感じたことも無い世界で、
まさに、言葉では言い表せないくらいのものだった。


59 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:08:24.93 ID:E32VWjc1O
ξ;゜ー゜)ξ「疲れたわね。ちょっと休憩する?」

( ^ω^)「おっ」

そこには、カラフルに彩られたテーブルと椅子で満たされた広場。
それを囲うようにして、丸、三角、四角、様々な形のテントが並ぶ。

ξ゜ー゜)ξ「お腹が空いたわね。何か食べる?」

それらテントの上の方をを見てみると、
そこには、大きな、ポップな文字が描かれた看板。
『中華・点心』とか、『和』とか、
『FASTFOOD』とか、『French cuisine 』とか、
各々のテントにぶら下がっていた。
その中からは美味しそうな匂いが漂ってくる。

( ^ω^)「うまそうだおww」

僕たちはテントの内側をぐるぐると回っていた。
どのテントからも見える、思わず唾液が出そうな料理の数々。
中華に、和食。フレンチに、ファーストフード。
その他にも、世界各国の料理がよりどりみどりである。
僕は、何を食べようか?と迷っていた。


61 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:11:17.65 ID:E32VWjc1O
しかし、僕はあるテントの前で、ふと足を止める。
まるでそれはパラソルのような形。
地面からは一本の柱が伸びていて、
その頂上を中心として、扇形が8枚広がっている。
そしてそれらが、赤、白、青、緑と順番に、一面ずつ彩られていた。

そこに立てかけられた看板は、
「SWEETS&CAFE」
正直、僕は腹いっぱい料理は食べたかったが、
なぜか、その店に漂う香りには惹かれるものがあった。

( ^ω^)「…ここで…いいかお?」

僕は彼女にそう問いかけた。

ξ゜ー゜)ξ「…ええ」

彼女はその二文字だけ答える。



62 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:12:07.65 ID:E32VWjc1O
そして僕は、そのパラソルの中に入る。
中心の柱の近くでは、小さいテーブルが一つ。
その奥では、先程の入り口に居たものと、
違う色をしたピエロが立っていた。
彼は、一枚のプレートを差し出す。
モカとか、カフェオレとか書かれているそれは、
どうやらメニューのようである。

( ^ω^)「ええ…っと」

僕は、メニューとにらめっこしながら、考える。
ふと、そして、確認し終えると、僕はそう言った。

( ^ω^)「カプチーノホットのM一つに、
      ホットチョコレートのS一つ。
      あとキャラメルフレンチトースト二つ」

と、言い終わったあとで、僕はハッ、とした。
彼女に確認もしないまま、
なぜかそう言ってしまったのだ。
これはヤバイ!!と思いつつ後ろを振り返る。


64 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:15:01.86 ID:E32VWjc1O

ξ゜ー゜)ξ「いいわよ…それで」

( ^ω^)「…へ?」

てっきり、また怒られると思ったが、
返ってきた反応は意外なものだった。
むしろ彼女は微笑んでいた。


「ありがとうございま~~ッスwwwwww」

やたら、ハイテンションなピエロの挨拶に背を向けて、
僕は小さなトレイを運んでいた。
その上には、ゆらゆらと湯気を立てた、
カプチーノとホットチョコレートが一つ。
そしてシロップのかかったトーストが二つ乗っている。


65 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:15:36.72 ID:E32VWjc1O
適当な席を見つけて、僕たちは向かい合って座った。
そして、僕はこげ茶色の液体の入ったカップとトーストを、
彼女の方へ置いた。

ξ゜ー゜)ξ( ^ω^)「いっただきま~す」

そう言うと僕は、泡立った薄茶色の液体を口に運ぶ。

(;^ω^)「あちっ!!」

しかし、それは僕が思ったより熱く、
反射的にカップを離す。

ξ;゜ー゜)ξ「まったく…よく冷ましてから飲みなさいよ。
       アンタは猫舌なんだからさ」

(;^ω^)「…!?」


67 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:18:15.42 ID:E32VWjc1O
僕は、また不思議に思った。
そうだ、何で彼女は僕のことを知っているんだろう?
と思いながら、フレンチトーストを一つ、口に運ぶ。

(;^ω^)「あの…どうしてそれを…?」

ξ♯゜△゜)ξ「ほらっ!!口に物入れて喋らない!!」

Σ(;゜ω゜)「はっ!はひっ!!」

ξ゜△゜)ξ「マナーがなっちゃいないわね…
      ほら、こぼれてるわよ…まったく子供ねぇ…」

そう言うと、彼女はポケットから白いハンカチを取り出し、
身を乗り出して、僕の口元を拭く。



68 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:18:57.27 ID:E32VWjc1O
ξ゜△゜)ξ「次は、あれに乗りたいわ」

そう、彼女が指差したのは、巨大な輪っか。
それはまるで、蜘蛛の巣のように鉄のパイプが入り組んでいる。
しかし、それらにも、電飾が付いているのだろうか?
まるで、クリスマスツリーのようにキラキラと輝いていた。

ξ゜△゜)ξ「観覧車…私好きなんだよね…
      遊園地のシメには必ず乗る事にしてるの」

そう言うと、彼女は、その魅力について次々と語りだす。
その合間には、
トーストを口に運んで、
それを噛んで、
ホットチョコレートを流し込む。
その完璧なコンビネーションを挟んで、また喋りだす。
器用に彼女はそれを繰り返していた。
そのおかげで、僕は、相槌を打つばかりで、
再び質問を投げかける余裕は無かった。


70 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:21:50.45 ID:E32VWjc1O
ξ゜ー゜)ξ( ^ω^)「ごちそうさまでした~」

結局、食事の間は、彼女の言葉で埋め尽くされてしまった。
それを遮って、僕は言葉を発そうとするも、
それは、彼女の、キッ、という目線に遮られた。
女性はどうして、ああもお喋り好きなんだろうか?

食事の後にも関わらず、彼女はさらに駆け出していく。
僕は腕を引っ張られ、ついていくのがやっとだった。
なんだか、横っ腹が痛い。

ξ゜ー゜)ξ( ^ω^)「おお…」

そしてたどり着いたのは観覧車の下。
改めてその根元から見ると、それはとても大きい。
まるでその頂上が見えないようだった。
それは、電飾が眩しかったせいでもあったかもしれない。

ξ゜ー゜)ξ「じゃ、乗ろうか」



71 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:22:41.91 ID:E32VWjc1O
僕は彼女に引っ張られて階段を登る。
彼女の、カツ、カツ、という足音と、
僕の、トン、トンという足音だけが響く。
そして階段の終わりに近づいたころ、
僕の目に映ったのは観覧車のゴンドラ乗り場だった。

しかし、そのゴンドラの形は変わっていた。
上半分が全く無いのだ。窓すらも。
それは、まるでコーヒーカップのような形であった。
変な形だな、と思いながらも、
これで落っこちたらどうするんだ?
と僕はこの遊園地の安全管理を心配した。

そして、目の前には次のゴンドラがゆっくりと近づいていた。
正面に来たのを確認したら、
僕は、あわてて扉を開き、彼女を中に入れる。
次に僕も飛び乗り、ドアを閉める。

そして、次第に下の景色は小さくなっていった。


72 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:24:59.77 ID:E32VWjc1O

ξ゜ー゜)ξ「…綺麗ね」


僕たちの周り、360度の風景は、
それは幻想的なものだった。
そこは、見渡す限りの光の欠片。
変わった形の建物たちは、
丸、三角、四角、扇形、多角形、
その一つ一つが、
赤、青、黄、緑、燈、桃、紫、白…
僕が思いつく限り以上の色で輝いていた。
それは、まるで宝石箱を覗いているかのような感覚である。


( ^ω^)「…あの…」

その景色に飲み込まれていて、
しばらく僕たちは黙っていたが、
その静寂を遮るかのように僕は切り出した。



73 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:25:33.46 ID:E32VWjc1O
( ^ω^)「君は…一体誰だお?」

僕は疑問の核心、それを短くまとめて質問した。

ξ゜ー゜)ξ「………」

彼女は、しばらく黙っていたがこう答えた。

ξ゜ー゜)ξ「…あなたは、それを知っているわ」

ξ゜ー゜)ξ「…いえ、それを思い出しつつある…
      って言った方が正しいかも」

( ^ω^)「えっ…?」

僕は何か言おうとしたが、彼女はこう続ける。

75 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:27:30.78 ID:E32VWjc1O

ξ゜ー゜)ξ「…でも、あなたはあなたのままだったわ」

ξ゜ー゜)ξ「…知らない女性の前で敬語になることも、
      …私が怒るとすぐ謝るところも」

ξ゜ー゜)ξ「…熱いものを無理して飲むところも
      …口に物入れながら喋るところも」

ξ゜ー゜)ξ「…その穏やかな口調も、
      …その子供みたいな笑顔も」

ξ゜ー゜)ξ「全部…いつもと変わらなかった」

気がつけば、観覧車は、
その半分くらいの高さのところまで登っていた。



76 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:27:51.19 ID:E32VWjc1O
ξ゜ー゜)ξ「まさか、あなたが
      …訪れてくれるなんて思ってもみなかった」

ξ゜ー゜)ξ「急なことだったから…
      どうすればいいか分からなかったけど…」

ξ゜ー゜)ξ「ふと、思い出したの。
      『来週、遊園地にでも行こう』
      …ってあなたが言ってくれたこと」

ξ゜ー゜)ξ「そして、気がついたら、私はここにいた」

ξ*゜ー゜)ξ「まぁ…ちょこっと、変な形になっちゃったけどね」

そう言って、彼女は笑った。
その笑顔は、周りの光に照らされて透きとおっているようだった。

77 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:29:37.19 ID:E32VWjc1O
不意に彼女は僕の額に手を当てる。
そこに感じるのは暖かいぬくもり。
僕はちょっとだけ、ドキッ、とした。

ξ゜ー゜)ξ「…そう。色んな人に与えてもらったのね」

何かを感じ取ったのか、彼女はそう呟いた。

ξ゜ー゜)ξ「だったら…次は…私の番ね」

(;^ω^)「…?へっ?なn」

僕には彼女の言っていることが分からなかった。

ξ゜ー゜)ξ「ねぇ…聞いて?」

彼女に穏やかにこう続ける。



79 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:30:01.40 ID:E32VWjc1O
ξ゜ー゜)ξ「私はこんな性格だから、
      あなたに随分、うんざりとさせてしまったわ」

ξ゜ー゜)ξ「…それでも、あなたはただ笑って、
      私につきあってくれた」

ξ゜ー゜)ξ「あなたを選んで、内心、鼻高々だったのよ。
      …友達は色々いってたけどさ」

ξ゜ー゜)ξ「だから、私は一生あなたと一緒に歩いていこう
      …って決めたの」

ξ ー )ξ「…でも…その願いは…もう…」

その声は、次第にかすれていく。

81 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:32:06.37 ID:E32VWjc1O

ξ;ー;)ξ「…私…嫌だよ…怖いよ」

ξ;ー;)ξ「…嫌っ!!離れたくない!!」

(;^ω^)「…ちょ!?ちょっと!?」

そう言うと彼女は僕に体重を預け、しっかりとしがみ付く。
その体は力を入れれば折れそうなほど華奢だった。

(;^ω^)「…な、何だかよく分からないけど…
      君がそう言うなら…僕は何処にも行かないお」

僕の胸の中で、彼女は小さく震えている。
無意識のうちに僕は彼女の髪を撫でていた。
その感触はすごく柔らかかった。



82 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:32:38.67 ID:E32VWjc1O
ξ;ー;)ξ「…ごめんなさい」

しばらくの無言の後、そう言うと、彼女は再び顔を上げる。

ξ;ー;)ξ「また…ワガママ言って…あなたを困らせちゃったね」

ξ ー )ξ「でも…もう…大丈夫…」

そう言うと、彼女は笑う。
その目は、周りの明かりに照らされて、輝いている。
しかし、どこかその表情は無理をしているようでもあった。

気がつけば、観覧車は頂上に近づこうとしている。
下の宝石箱は、さらに小さくなっていた。

84 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:35:16.32 ID:E32VWjc1O
ξ*゜ー゜)ξ「…こんな…時くらい…素直にならなくちゃね…」

ξ*゜ー゜)ξ「…もう会えないって思っていた…」

ξ*゜ー゜)ξ「神様が…最後の願い…叶えてくれたのかな?」



そう言うと、彼女は僕の体をぎゅっと抱きしめてきた。

そして、その濡れた瞳は僕の瞳に近づいてくる。

無意識のうちに僕はそれに答えるかのごとく、抱きしめ返す。

彼女同様、僕も彼女の顔に自分の顔を近付ける。

そして、二つの顔がぶつかりそうになった瞬間、

彼女は僕の耳元で、こう呟いた。



85 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:35:40.53 ID:E32VWjc1O




「愛してる」




そして、僕たちの唇は重なった。

まるで、それは元々一つのものであったかのように。

その、感触は、柔らかくて、暖かかった。

その瞬間、僕の体の奥底から、

ほとばしるように、眩しい光がこみ上げてくる。


そうだ、彼女は…!!

僕は思い出した。

彼女は―――僕にとって一番大事な人。

87 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:37:24.66 ID:E32VWjc1O
乾いた衝撃音に気がつくと
目の前は眩しくなっていた。
まるで、その光景は、
空に大きな向日葵が咲いたように広がる。
そしてその花びらは、次第に散って、
小さなカケラに変わってゆく。
それは、何千、いや何万個にも分裂して、
僕らの上から降り注いできた。
そして、その光の粒は僕の頬にそっと触れる。
それはとても優しく、暖かい。


僕たちは名残惜しそうに、
お互いの体を離す。
しかし、その視線だけは離さないままだった。



88 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:38:34.52 ID:E32VWjc1O
(;^ω^)「………そうだ…君…は…!!」

ξ゜ー゜)ξ「やっと…思い出したのね…馬鹿」

しかし、彼女の表情は穏やかであった。

ξ゜ー゜)ξ「…でも…もう…時間みたい…」

再び、僕は、あの、不穏な空気を感じていた。

…いや…そんな…まさか…
…止めてくれ!!お願いだ!!
…もう少し…時間を!!


90 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:41:54.07 ID:E32VWjc1O
僕の淡い期待とは裏腹にそれは起こった。
びきっ。という鈍い音。
それは、今までのそれより嫌なものに感じた。

その変化は、まず、僕らに乗るコーヒーカップに起こる。
そして、それに続くかのように、
大きな円を支えていたパイプも欠け始めた。

下を見てみると、小さな宝石にもヒビが入っていた。
みるみるうちに、その輝きは細かく、ばらばらになる。

慌てて僕は彼女を見た。
その姿は心なしか虚ろに見えた。
僕は、再び彼女を抱きしめる。
決して逃がさないように。
決して離さないように。

すると、僕の耳に、優しく、穏やかな声が入ってくる。



91 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:42:19.00 ID:E32VWjc1O

「…ごめんね…」

何で謝るんだ。君は何も悪くない!!

「…私も…まだ…一緒に…居たい」

そうだよ!!まだ遊びきっていないじゃないか!!

「…でも…それは…ワガママ…あなたを困らせる…」

気にしなくていい!!困ってなんかいない!!

「…あなたには…あなたの…未来があるから…」

僕の未来は…君と一緒に歩く事なんだ!!!

93 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:44:34.94 ID:E32VWjc1O


突然、僕の腕は空を切る。
すると、彼女の姿は、宝石の破片に埋もれていた。

(;^ω^)「待ってくれ!!…まだ…」

透きとおった彼女の表情は、優しく微笑んでいた。

そして僕の目が、それを、
人であったことが確認できなくなってきたとき、
背後では、大きな黒い渦が、
まるで大きな生き物のように全てを飲み込んでいく。

(;^ω^)「まだ何にも伝えちゃいないんだ!!…だから!!」

その声も虚しく、周りの世界の、
あんなにも鮮やかだった色は黒に染まっていく。
そして、最後の色の欠片が吸いこまれようとしたとき、
彼女の声は聞こえた。




94 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:45:09.58 ID:E32VWjc1O




「大丈夫。私はいつまでもあなたの中に居るから」



その場に残ったのは僕と、
目の前の闇の中に一点だけ浮かぶ光。
それは、前に見たそれよりも、弱く、儚く見えた。
その光は否応無しに僕の中に入っていく。

そうして、僕は彼女の夢を喰い尽くしてしまった。

気がつけば、再び僕は最初の白い部屋の中にいた。



96 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:47:29.31 ID:E32VWjc1O

僕は、奇妙な感覚に襲われていた。
この気持ちはなんだろう?
喜び?怒り?悲しみ?楽しみ?
それが、ぐるぐると僕の体の奥底で渦巻く。
どんなに、体に力を入れても、
どんなに、歯を食いしばっても、
どんなに、拳を握り締めても、
それは僕の中では抑えきれなかった。

( ;ω;)「おおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

僕は思い切り拳を、真っ白な壁に叩きつける。
ドンッ、と鈍い音がした。



97 名前:猪(はげ)[] 投稿日:2006/12/23(土) 22:48:21.15 ID:E32VWjc1O


ぴきっ。

あんなに叩いても壊れなかった壁に、ヒビが入る。
それは、大きな亀裂を生む。
さらに亀裂は、壁の、床の、天井の上を走る。
それに気づいた時には僕は立っていれなかった。

一瞬宙を浮いた感覚。
そして、下に吸い込まれるような感覚。

僕は奈落の底へと堕ちていった。


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