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LOYAL STRAIT FLASH ♪

第六章

339 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2006/12/31(日) 05:25:56.55 ID:KvImG4I/0


  第6章 やるか逃げるか


今は一体何時なんだろう?
さっきトイレに行った時は夕方の6時くらいだったから・・・まぁ、いいや。たいした問題じゃない。
そう言えば昨日から何も食べていなかったな・・・まぁ、いいや。別にお腹が空いてるわけじゃないし。
雨の音が聞こえる・・・まぁ、いいや。外になんか出たくない。
仕事辞めたって言ったらカーチャン悲しむかな・・・まぁ、いいや。僕には無理な仕事だったんだ。
ドクオ・・・怒ってたな。ツーさん・・・親切にしてくれたのにごめんなさい。あぁでも・・・まぁ、いいや。

もう・・・どうでもいいや。

遠くの方で音がする。何かを叩く音。それと多分チャイムの音。それはだんだん近づいてくる。
そしてついにはうずくまる僕に覆いかぶさるようにして騒ぎ立てる。

そんな変な夢で目が覚めた。カーテンごしに差し込む外灯の明かりが部屋を薄く照らしている。
ただ、あれは夢でなく現実らしい。ほとんど光源のない部屋にチャイムを連打する音とドアを叩く音が響き渡る。
そう言えばこの辺で酔っ払いが暴れてるって大家さんが言ってたっけ。
それにしても・・・なんで今日。僕の部屋なんだ。
僕は誰とも関わりたくないんだ。止めてくれ。止めてくれ。止め・・・。

( ´ω`)『もう・・・止めてくれお』

気力を振り絞ってドアを開けた僕の前に立っていたのは-----。

ξ゚△゚)ξ『ようやく開けたわね』

意外すぎる人物だった。

340 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2006/12/31(日) 05:27:26.41 ID:KvImG4I/0
 ξ゚△゚)ξ『ちょっとお邪魔するわよ』

少し雨にぬれた髪をかきあげ、僕を押しのけるように玄関に入り込んでくる。
そしてその影にいたのは

( ´ω`)『・・・ツーさん・・・』

俯いて表情こそ見えないが間違いなくツーさんだった。
僕はなんと声をかければいいんだろう・・・僕は・・・僕は・・・。

ξ゚△゚)ξ『ツー。何やってるの。早く入りなさいよ。それとあんた、タオル』

( ´ω`)『・・・え?』

ξ#゚△゚)ξ『タオルよこせって言ってるのよ!! 早くしなさい!!』

少しして。
タオル代わりに渡したTシャツで髪を拭き終えたツンさんは呆然とする僕の正面に立ち僕の顔を見上げた。
ツーさんはタオルを握ったまま玄関に立ちすくんでいる。

ξ#゚△゚)ξ『・・・あんたに話があるの』

( ´ω`)『・・・僕は話す事なんかないお・・・頼むから帰ってくれお』

一人になりたい。

ξ#゚△゚)ξ『あんたに無くてもあたしにはあるの。座りなさい』

断固として引かない。その目が語っていた。


341 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2006/12/31(日) 05:28:18.33 ID:KvImG4I/0
 早く話とやらを済ませて帰ってもらおう。
いや、話の内容は分かっている。
聞きたくない。

( ´ω`)『どうして・・・僕の家が分かったんだお』

自分でも意識しないうちにそんな質問を口にしていた。

ξ゚△゚)ξ『・・・何よ。そんな事が知りたいの? 分かったわ。教えてあげるからよく聞きなさい』

諦め腰を下ろした僕と向かいあうようにツンさんはあぐらをかいて座り込んだ。
そして、今から1時間前。僕の知らないバーボンハウスでの出来事を語りだす・・・・・・・。


342 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2006/12/31(日) 05:29:14.46 ID:KvImG4I/0
雨音と嗚咽だけが小さく響くバースペース。
誰もこの場に相応しい言葉が見つからず、口を開こうとはしない。
時折思い出したかのようにショボンがグラスを口に運ぶ以外は動こうとする者もいなかった。
ツンの細すぎる腰に腕を回し嗚咽を漏らしていたツーはやがて大きく深呼吸して顔を上げた。

(*;∀;)『し、心配かけてごめんねっ!! もう大丈夫!! ささっ、今日は帰ろう!!』

そう言って立ち上がりツンの腕を引くがツンはその場を動かない。

ξ゚△゚)ξ『・・・・・・せない』

( ,,゚Д゚)『あ? なんか言ったかツン?』

ξ#゚△゚)ξ『許せないって言ったのよ!! あいつの顔見て一言文句言って殴ってやらなきゃ気が済まないわ!!』

( ;,゚Д゚)『いや、気持ちは分かるが・・・そりゃ無理ってもんだろ』

この時間だしな、と続けるギコの言葉に地団駄を踏むツン。

ξ#゚△゚)ξ『うるさいわね!!やりもしないで無理とか出来ないとか・・・それじゃあのバカと一緒でしょ!!
それにこーゆー時のためにアレがいるんじゃない!!』

アレ呼ばわりされて苦笑するショボン。
だが・・・しかし・・・と繰り返すギコ。
理解不能といった顔でツンを見つめるツー。

ξ#゚△゚)ξ『あぁ、もうトロいわね!! ショボンさんはあのバカの履歴書持ってきて!!
      ギコさんはタクシー呼んで!! ツー!!準備が出来次第乗り込むわよ!!』



344 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2006/12/31(日) 05:31:32.73 ID:KvImG4I/0
以上説明終わり。分かった?
そう言ってツンさんは話を終えた。

僕はドクオの宝物を壊した。
そしてドクオは今もそれを治そうとしている。
それを聞いて僕の心臓が大きくドクンと鳴った。

僕は何をしているんだ。

( ´ω`)『・・・で、何をしに来たんだお』

言った瞬間パンッと言う音と共に左頬が熱くなる。それからゆっくり痛みが押し寄せてきた。

ξ゚△゚)ξ『言ったでしょ? あんたを殴りに来たのよ』

不思議と怒りは沸いてこない。

( ´ω`)『用が済んだら帰ってくれお』

ツンさんの顔が赤くなり、再び右手を振り上げる。

ξ#゚△゚)ξ『あんた・・・まだ分からないの!!』

それが振り下ろされようとした瞬間。

・・・ブーちゃんは卑怯だよ。

いつの間にか僕の真後ろに立っていたツーさんの声が背中越しに聞こえた。



345 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2006/12/31(日) 05:32:19.91 ID:KvImG4I/0
こんな事言ってゴメンね。
でも卑怯・・・よ。
どうし・・・て逃げるの?
いつ・・・・・・逃げ・・・の?
自分・・・か・・・逃・・・どこへ・・・

崩れ落ちるように座り込み両手で顔を覆うツーさんに寄り添い髪を撫でるツンさん。

ξ゚△゚)ξ『大丈夫。大丈夫だから』

何度もその言葉を繰り返す。

後半嗚咽ばかりになっていたツーさんの言葉を僕の耳は正確に聞き取っていた。
心臓がまた1つ大きく鳴った。

僕は何をしているんだ。
僕はいつまでこうしているんだ。

でも・・・僕はドクオのように【何か】を持っているわけじゃない。
ドクオのように強くない。

ξ゚△゚)ξ『・・・そこのバカ』

ツンさんが僕を睨みつける。
どうしてだろう? 不思議と怖くなかった。

ξ゚△゚)ξ『ついでだからドクオの事話してあげる。自分がどうするべきか、それから考えなさい』



346 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2006/12/31(日) 05:33:10.60 ID:KvImG4I/0
ξ゚△゚)ξ『ドクオと私は元々幼稚園から中学校までずっと同じ学校で・・・幼馴染みたいなもんだったわ』

幼馴染って言っても学校が同じってだけ。
特別な仲じゃないわ。
あたしはあいつを友達だと思っていたけど、あいつにとってあたしは不特定多数の一人だったみたい。
偶然会って挨拶した時も『あぁ』とか『うん』とか言うだけだったわ。
その度に殴ってやったけどね。

あいつ。人に愛される性格じゃないでしょ?
その上運動も勉強も人より出来るわけじゃない。
もしかしたら悩んでいたかもしれないけど・・・結局聞きだせなかったわ。
中学の後半は嫌がらせも受けていたみたい。
あいつが自分で言ってくる事はなかったけどね。

だからあいつが高校に入ってすぐに中退したって聞いても驚かなかった。
驚いたのはあたしが17歳の時。
バイト先のバーボンハウスにあいつが面接を受けに来たときだった。
新巻さん・・・当時の店長兼オーナー。は断るつもりだったみたいだけど・・・熱意に押されたって言ってた。

でも、あいつは特別技術があるわけじゃない。
それにあの性格。現役時代のショボンさんやギコさんに厳しく指導されては仕事終わった後一人でよく泣いてたっけ。

でもあいつは逃げなかった。
必死にしがみついて・・・少しづつ皆に認められて・・・今の自分の場所を手に入れた。

内藤。
あんたがつまらない逆ギレの結果ダメにした包丁は
辛い時も苦しい時もいつもドクオの手にあった・・・ドクオの努力の結晶なのよ。

ξ゚△゚)ξ『あたしの話はこれでお終い』

347 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2006/12/31(日) 05:34:32.33 ID:KvImG4I/0
 雨音もツーさんの嗚咽も耳に入らなかった。
ただ聞こえるのは淡々と語るツンさんの昔話。
それが終わってからはただ静寂のみが残る。

ドクオは最初から【何か】を持っていたわけじゃなかった。
ドクオは最初から強いわけじゃなかった。

でも、自分だけの場所を手に入れた。

僕は何をしているんだ。
僕はいつまでこうしているんだ。

僕は・・・まだ自分から逃げるつもりなのか!!

(  ω )『・・・ドクオは・・・まだバーボンハウスにいるのかお』

そう言い終えた僕の右頬に突然の衝撃。

(*;∀;)『こいつはあたしからのプレゼントだっ!! 行っといで!! それで男らしくケリつけといでっ!!』

僕は立ち上がる。

( ^ω^)『ツンさん、ツーさん・・・ありがとうだお』

僕は歩き出す。

『ツンさん・・・じゃなくてツンでいいわよ!!』
『裏口がまだ開いてるはずさっ!!』
そんな声を背に受けて。
                                  僕は走り出した。

348 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2006/12/31(日) 05:36:48.66 ID:KvImG4I/0
雨の中僕は走る。
濡れた髪が目に入る。
口に入る水が呼吸の邪魔をする。
ジーンズが足にまとわりつく。

それでも僕は走るのをやめない。
やがてバーボンハウスが見えてくる。

その厨房の片隅にドクオはいた。


351 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2006/12/31(日) 05:41:49.01 ID:KvImG4I/0
( ^ω^)『ドクオッ!!』

僕の声に驚きドクオは振り返る。

( ^ω^)『その包丁・・・悪かったお。どんなに謝っても足りない事を僕はしてしまったお』

('A`)『・・・いいよ。貸した俺も悪いんだ』

僕は両膝に手を付き必死に呼吸を整える。
違う。言いたい事はこれだけじゃない。やるか逃げるか。どっちなんだ!?

( ^ω^)『僕は・・・もう自分から逃げない!!』

無言。

( ^ω^)『僕は・・・言い訳をしたくない!!』

返答はない。

( ^ω^)『僕は・・・強くなりたい!!』

沈黙。

( ^ω^)『僕は・・・君のような・・・僕は料理人になりたい!!!!!』

・・・一言も返さず僕に右手を差し出すドクオ。

('A`)『お前が本気なら・・・俺は俺の全てをお前に教えてやる』

ありがとう。ドクオありがとう。僕は何度もそう繰り返しながらその手を握り返した。

352 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2006/12/31(日) 05:43:35.63 ID:KvImG4I/0
場所は変わってここはバースペース。
内藤達のいないこの場所で、内藤達には聞こえないであろう会話が交わされていた。

川 ゚ ー゚)『内藤・・・戻ってきたみたいだな』

(´・ω・`)『やれやれ。雨降って地固まってくれたか』

( ,,゚Д゚)『・・・ったく。それにしても若いってのは羨ましいねぇ』

そう言って揃ってグラスを持ち上げる。

川 ゚ ー゚)『・・・いずれにしろ』

(´・ω・`)『あーゆーバカがいてくれる以上』

( ,,゚Д゚)『俺達ものんびりしてられねぇってワケだ』

グラスを掲げ嬉しそうに飲み干した。




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