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LOYAL STRAIT FLASH ♪

第十一章

52 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:51:20.93 ID:KW8Sy17O0

    第11章 月の爆撃機


8:30
俺は自然と目を覚ます。
一応携帯の目覚ましはセットしてあるのだが、それが鳴り出す前に目が覚めるのは
もう5年も続いている習慣のせいだろう。

かすかに鼻に香ってくるシャンプーと入れたてのコーヒーの香り。
ツーが朝のシャワーを浴びている音が聞こえる。
あと10分もすればツーが入れたてのコーヒーを両手に持って姿を現すはずだ。

俺は上半身を起こしサイドボードからタバコを探り当てると、それに火をつけた。

('A`)『そう言えば今日はスペシャルラーメンで内藤がトマトラーメンを作りたいって言ってたな』

トマトラーメンと聞いて最初俺は苦々しげな顔をしたらしいのだが、
内藤はホールトマト缶、ひき肉、豆板醤などを使って見事なミートソースを作り上げてきた。
この中華風ミートソースとサラダ用のほうれん草、フライドオニオンを使ってトッピングするつもりらしい。

('A`)『俺も負けてられないな』

麺場に移ってからの内藤、ランナーとしてのツーは日々活躍の場を増やしている。
まるで水を得た魚だ。
それならばこっちも先輩としてダラけてはいられまい。
俺はタバコをもみ消し、ベッドの下に落ちているだろう下着を探し始めた。



53 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:52:51.48 ID:KW8Sy17O0
9:40
ツーを自転車の荷台に乗せて店に到着する。
内藤とツンはすでに着替えを終えており、パイプ椅子に腰を下ろして朝食をとっていた。

( ^ω^)『おっwww2人ともおはようだおwww』

ξ゚△゚)ξ 『また同伴出勤? 朝から熱いわね』

(*゚∀゚) 『いやいや!! ブーちゃんとツンほどじゃないよっ!!』

ξ*゚△゚)ξ『何言ってるのよ!! あたしの趣味は白馬に乗った将軍様って言うか…』

( ^ω^)『おっwwwおっwwwまさに僕のことだおwww』

ξ゚△゚)ξ 『  一  回  死  ぬ  か  イ  タ  リ  ア  名  物  ?  』

そんな会話を聞きながらロッカーからクリーニングしたてのコックコートと前掛けを引っ張り出す。

('A`)『ツー。早く着替えちまえ』

全く。
何でこいつ等朝からこんな元気なんだろうな。




54 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:54:24.46 ID:KW8Sy17O0
10:15
冷凍庫を覗き込み本日のスペシャルランチを決める。

('A`) 『牡蠣が随分あるな…』

内藤が肉を使うならこっちは魚介類で勝負だ。

('A`) 『葉にんにくや筍を使ったオイスター炒めにするか』

倉庫に筍の缶詰をとりに行くとツーがなにやら業者と揉めていた。

( ´∀`)『そんな事言われたって…これだってトマトには違いないモナ』

(*゚∀゚) 『確かにそうだけどね!! わたしはちゃんと熟れたトマトが欲しいのさ!!
     こんな青いトマトもらったってお客に出せないよ!!
     熟れるまで待てとでも言うのかい!!
     とにかくこんなのじゃお金は払えないね!!』

うん、これなら大丈夫だ。
バーボンハウスが契約している青果業者【モナーフレッシュサービス】はこっちが目を離すととたんに
食材の質を落としやがる。
モナーが悪質ってわけじゃない。どこもこんなもんだろう。
安く仕入れて高く売りたいって考えるのは当然だ。
中にはもっとセコイ手を使う業者だってたくさんいる。
だが、相手がツーではそれも通用しない。

('A`) 『あぁ、モナーさん。悪いが時間の無駄だ。
    取引中止されたくなかったらとっとと戻ってちゃんとしたトマト持って来い』

俺がそう言うとモナーはすごすごと退散していった。

61 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:59:50.90 ID:KW8Sy17O0
10:45
朝礼。
今日のスペシャルについて説明する。

( ^ω^) 『今日のスペシャルはトマトラーメンだおwちょっと辛いからお子様には注意して欲しいお』

試食用に取り分けられた小皿を口元に運びながらウェイトレスは真剣に耳を傾ける。

ξ゚△゚)ξ『意外と美味しいけどちょっと辛すぎない?』

( ^ω^) 『夏だから辛めに仕上げてあるおww』

続いて今日のイベント情報。

(´・ω・`)『今日は18時からVIPアリーナでペニサス伊藤のコンサートがあるよ』

それを念頭に置いた仕事が必要になるわけだ。

11:00
開店。
いつも通りちらほらと入客があるのみ。
だが、ここで手を抜くと一日中尻をひっぱたくような目にあうのは経験上分かっている。
俺も内藤も自分のポジションの食材は何度も確認し、
少しでも少ない物があるとすぐに交換できるように準備する。

山のように積み上げられていたキャベツ、人参、ニラ、青梗菜、浅葱、ナス、アスパラガス…
それらは既に切り刻まれ俺たちに料理されるのを今か今かと待っている。

戦闘準備完了。


67 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:03:19.95 ID:KW8Sy17O0
12:00
堰を切ったような入客ラッシュが始まる。
どこにこんなに隠れていたんだと思うほどだ。

ξ゚△゚)ξ『3番テーブル5名様ご案内です!!』

ツンの声は叫び声に近い。
ただでさえお客様の会話や厨房の物音で店内は騒然としている。
それに加えて各自が自分の作業に夢中になっているので、
叫ぶくらいの声で無いとスタッフが聞き取れないのだ。

(*゚∀゚)『新規オーダー!! 醤油ラーメン3丁いただいたよっ!!』

ツーはプリンターから吐き出される伝票を一目見ただけで暗記し、 
読み上げつつ俺と内藤のフォローをする。

(*゚∀゚)『2人とも7番テーブル行くよ!!
    ドクオ君!! これはスペシャルの筍とパプリカ、麻婆豆腐の豆腐も切ったからね!!
    ブーちゃん!! 遅れないでよ!!』

( ;^ω^)『7番!? くっ!! まだ6番のバーボンセットが出てないお!!』

(*゚∀゚)『はぁ!? 何分それに時間かかってんだいっ!? 
    作業台が散らかってるから時間かかるのさ!! ちゃんと片付けながら作業しないと遅れるよ!!』

('A`) 『ツー!! 俺は大丈夫だ!! とっとと内藤のフォローしてやれ!!』

料理を盛り付けた皿の縁に跳ねたソースをを拭き取りながら叫ぶ。


72 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:05:51.24 ID:KW8Sy17O0
ツーはあんな事を言ったが、決して嫌味で言うわけではない。
だから内藤もそれで凹むような事はない。
必死で俺のスピードに喰らいつこうとしている。

内藤の最大の欠点は慌てると周囲を散らかすことだ。
散らかるから作業スペースが小さくなる。
作業スペースが小さくなるから作業がしづらくなり、思うように動けなくなり作業が遅れる。
作業が遅れるからまた慌てる。

('A`) 『悪循環だな』

こればかりは内藤が自分で意識して解決するしかない。
俺がどんなに言っても解決の糸口にしかならないが、
自信で悩んで掴んだきっかけは内藤の実力を飛躍的に向上させるだろう。

( ;^ω^)『すまんお!! 7番いつでもいけるお!!』

(*゚∀゚)『7番は今出たよっ!! ちゃんと伝票確認して!! 
    しぃ!!そこのスペシャルラーメン7番に運んで!!
    一番左が麺固めさっ!! さぁ、8番9番一気に行くよ!! 超ダッシュさっ!!』


80 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:08:22.31 ID:KW8Sy17O0
15:00
ようやくプリンターの動きが遅くなる。
ツーを休憩に送り、俺と内藤はソースやらで汚れた作業台を拭き取り
ほぼ空っぽになった食材を補充、満杯にしておく。
遅番で冷菜担当のギコさんと製菓のジョルジュさんが出勤してくる。
俺は蓋をした寸胴に腰を下ろし、ショボンさんと今日のスペシャルの売れ行きについて意見を交換する。
内藤のトマトラーメンは注文したお客様の反応はよかったが、
注文するまでに躊躇してしまう傾向があったらしい。

(´・ω・`) 『味は悪くない。こっちでもっとお勧めできればよかったね』

向こうではジョルジュさんとギコさん、内藤が何やら楽しそうに話しこんでいる。

( ゚∀゚) 『超美乳の女の子が働いてるコンビニ見つけてよ…神様っているんだな』

(*( ,,゚Д゚)『夕べ縛って立ったままセクロスしたいって言ったら殴られてな…』

( ^ω^)『そんなの二次元では当たり前の事だおwwwこれだから3次元厨は困るおwww』

…なんか、2・3日前も同じ会話聴いた気がする。こいつら毎日同じ事しか話してないんじゃないか?
そう言えば昔一緒に働いてた流石兄弟も同じような事話してたな。
その時はショボンさんも『歌舞伎町に遊びに行ったらウホッにナンパされた』とか話してたっけ。

普段なら18:00まではアイドルタイム(客足が止まる時間帯)だが、
今日はコンサートがあるっていってたから17:00頃に最初の波が来るかな…。

('A`) 『今のうちに休んどくか』

コンサート前に軽い食事を取りたいという客心理を考えればその時間は一時的に混雑するはずだ。
俺は内藤を誘ってスタッフルームに引っ込んだ。

88 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:12:34.40 ID:KW8Sy17O0
 17:00
休憩を終えて厨房に戻ると、最初の攻撃は既に開始されていた。
どうやらコンサート前に『軽く』食事をしたいだけのようで
ハーフサイズのラーメンや、デザートばかりに注文が集中している。

( ;^ω^)『おかしいおwwwなんで僕ばっかりwwwいじめかおwww』

( ;゚∀゚) 『…やべ…仕込み足りなかったかな』

そんな事を言いながら走り回る内藤をツーがフォローし、ジョルジュさんをギコさんがフォローする。

鍋場の注文が極端に入らないので俺は悠々と食材の在庫を確認し足りない食材を発注表にチェックしていく。
剥きニンニク3キロ。生姜3キロ。玉葱6キロ…。
今日は金曜日。冷凍食材と精肉の発注もしなくてはならない。
俺は冷凍庫を開けると中身が少なくなったダンボールから食材を取り出し、整理しつつ在庫を確認する。
朝はあんなに大量にあって冷凍庫の片隅を占拠していた牡蠣の在庫量が若干心許なくなっていた。

('A`) 『大至急発注しないとな』

自分の料理が好評だったのは嬉しいが、
発注を任される身としては致命的とは言えないまでも計算違いをした事にいい気はしない。

( ;^ω^);゚∀゚) 『俺たち…この客足が引けたら結婚するんだ』

('A`) 『黙って働け』


98 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:17:24.11 ID:KW8Sy17O0
19:00
ようやく並び始めた鍋場の注文を片す間を縫って缶詰類等のドライ食材の在庫確認をする為に倉庫へ行く。

('A`) 『ホールトマトが余ってるな』

明日あたり海老のチリソースでもスペシャルでやってみるか。そうなると車海老の発注もしなくてはならない。
豆板醤、オイスターソース等が並ぶ棚を睨んでいるとショボンさんが話しかけてきた。

(´・ω・`)『ドクオ、ちょっといいかい』

('A`)『? なんすか?』

(´・ω・`)『クーさんから野菜の購入代金が随分高くなってるって言われてね』

やっぱりその事か。大雨の影響とやらで全国的に野菜の物価が上がっている。
同時に品質も低下の傾向があり、廃棄量が増えている感も否めない。
どこの店も品質がよい野菜を欲しがっているからどうしても購入代金は高くなってしまうのだ。

(´・ω・`)『うん、僕も気になってた。キャベツに白菜を混ぜるとか…
      なんか安い野菜見つけて工夫してみてよ』

('A`)『わかりました』

(´・ω・`)『それとオーバーポーションには気をつけて。 ツーは忙しくなると野菜を多く使う癖があるから』

そんな会話をしながら俺は仕事を続ける。

(´・ω・`)『それと、適当なトコで切り上げてあがっていいよ。あとは遅番組とバイトに任せよう』

時計を見るとすでに20:00近くなっていた。

103 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:20:50.69 ID:KW8Sy17O0
 厨房に戻るとちょうど内藤が仕事を終えたところだった。
ベテランバイトのイヨウが『わかんないんです、わかんないんです』を繰り返す新人に
何度も仕事を教えようとしている。

( ^ω^)『おっwwwドクオお先に失礼だおwwwこれからバースペースに行くおwww
       ドクオも来いおwww』

仕事を終えた内藤はいつも本当に嬉しそうだ。

('A`)『いや、今日は帰』

( ^ω^)『ツンとツーさんも先に行って飲んでるはずだお』

('A`)『…それを先に言えよ』

それを聞いたら行かざるを得ないだろ。
そう考えながらクレンザーで包丁についた脂を洗い流し、砥石で軽く研いでからタオルに包む。

('A`)『お先に失礼します』

ギコさん達に声をかけてから俺は厨房を出た。

スタッフルームでコックコートを脱ぎ捨てながら、タバコに火をつける。

('A`)『さて、今日は何を飲むかな』

俺は考えていた。




108 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:23:04.21 ID:KW8Sy17O0
俺の毎日は大体この繰り返しだ。
春も夏も秋も冬も。
いつでも基本を反復する毎日。

その結果として突然急激に実力が上がることはある。
だがそれは日々の訓練の賜物。
苦労し悩んだ結果がそれに繋がるだけなんだ。

だから、突然天啓のように全く新しい料理ができるわけじゃない。
それは試行錯誤と幾つも覚えてきたレシピの中からヒントを得て作り上げる物だ。

当然、高名な料理評論家が腕利きの料理人を連れてきて料理勝負…なんて事もない。

料理とは経験の積み重ねだ。
何千回・何万回と鍋を振り己を鍛え上げた経験だけがその時の自分にとって最高の一皿を作り上げ、
それを超えるべくまた鍋を振る。
そうして日々は過ぎ去ってゆく。











内藤がバーボンハウスに入社して2度目の夏が過ぎ去ろうとしていた。




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