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LOYAL STRAIT FLASH ♪

第十九章

161 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:33:07.25 ID:T9v5rC2I0


     第19章 終わらない歌


( ゚ω゚)『うぉわぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

咆哮し、
血まみれの拳で壁を殴りつけ、
買いあさったレシピ本を破り捨て、
すでに紙屑となったそれを蹴り上げる。
それでも内藤は止まらない。

( ゚ω゚)『僕が殺した!! 僕が壊した!! 僕が!! 僕がっ!!』

そんな意味の言葉を叫びながら、内藤の形をした小型台風は彼の部屋を所構わず破壊する。
彼は半ば狂っていた。
自らの手で自分を導く光を消してしまった。
そんな思いが彼の心を追い詰める。

料理人としての。
料理人を目指した自分の痕跡の全てを消し去りたかった。
いや、そうしなければいけない。
それが自分がクーに出来る罪滅ぼしであり、
完全に狂わない為の手段だと思えた。

電池が切れたおもちゃのように彼の動きが止まった時。
あたりはすでに真っ暗になっていた。


162 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:36:55.51 ID:T9v5rC2I0
( ´ω`)『…何か食べるかお』

呟き彼は台所の冷蔵庫を開けた。
そのまま食べられそうなものは何日か前に購入した食パンのみ。

トースターで軽く温める。
そんな簡単な調理さえ彼の心は拒絶し、仕方なく冷えて硬くなっているそれを口に詰めこむ。

( ゚ω゚)『うっ!!』

彼は突然口を押さえてトイレに駆け込んだ。
そのまま便器に顔を突っ込む。

( ゚ω゚)『げぼっ』

…内藤の体は食事を取る事すら拒否していた。


165 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:38:58.40 ID:T9v5rC2I0
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今。この場にツンの姿はない。
あの日、逃げるように駆けだした内藤にツンは追いついていた。

ξ;△;)ξ『待って…待ってよ内藤キャッ!!』

その彼女の顔を内藤は力任せに殴りつけた。
雪解けの水溜りに倒れこんだ彼女の髪を鷲掴みにし無理矢理立たせる。
ブロックの壁に叩きつけて両手で首を締め上げた。

ξ;△;)ξ『な…内藤苦しい…』

殴り、蹴り、その手を引き剥がそうと必死に抵抗するが内藤の力は緩まない。
彼女の顔面下半分を染める血があごをつたい、内藤の手に赤い斑点模様を描く。

やがてツンの体から力が抜け両手がだらりと垂れ下がる。
そこでようやく内藤は彼女を解放した。
またもや水溜りに倒れこむツン。

( ゚ω゚)『…これ以上追ってきたら…お前も殺してやる…次は本当に…』

吐き捨てて走り出す内藤。

それがこの時の内藤が見たツンの最後の姿だった。

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170 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:44:47.61 ID:T9v5rC2I0
散乱した部屋の中。
万年床に横たわり内藤は天井を見上げていた。

中華鍋を叩きつけられたエアコンは温風を送り出す事はなく、
部屋の中は凍てついた空気が満ちている。

それでも一人死んでいったクーの事を思うと辛さは感じない。

( ゚ω゚)『僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した
      僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した
      僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した
      僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した
      僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した
      僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が…』

いや。
彼の精神状態はすでに寒さを感じられるものですらなくなっていた。

眠る事もなく。
食事は喉を潤す程度の水だけ。
ひたすら噛み続けた親指の爪からはすでに肉が見えている。
それでも爪を噛むのをやめようとしない。

そうして昼になり夜が訪れた。
太陽が昇りやがて沈んだ。
どこまでも深い夜空が青空に変わり、また闇に包まれようとした頃。

ふいに内藤の部屋の扉が静かに開けられた。

ξ;△;)ξ『内藤…あたし怖くて…遅くなってごめんね…』

172 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:49:17.65 ID:T9v5rC2I0
 ツンの美しい顔は左頬に紫色の痣が出来ていた。
返事も返さずただ宙に視線を泳がせる内藤の横に腰を下ろす。

( ゚ω゚)『…来たら殺すって行った筈だお』

ツンを見向きもせず内藤は言う。
彼女はその言葉にビクッと肩を震わせたが意を決したように口を開いた。

ξ △ )ξ『…殺したければ殺せばいいじゃない。
     あたしはあんたに殺されるために来たのよ。
     それであんたの心が死ななければ…安い物だわ
     ただ…あたしはそう簡単に殺されたりしないわよ』

(  ω )『…そうかお』

内藤は呟き身を起こす。

( ゚ω゚)『それならお望みどおり殺してやるお!!』

叫び内藤はツンの体を押し倒した。


175 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:53:09.44 ID:T9v5rC2I0
ツンの細い首に手がかかる。

その手を今度こそ払いのけ、ツンは内藤にしがみつき叫ぶ。

体を引き剥がし殴りつける。

負けじと殴りつける。

髪を掴みあい、二匹の獣のように取っ組み合う。

どちらともなく唇を押し付ける。

衣服を体から引き剥がす。

噛み付く。

強引に犯す。

背に爪を立てる。

愛する人を傷つける事で、自らを傷つける。

それを知り受け入れる。

何度も何度も繰り返される行為は、やがて互いを癒す為の儀式へと変わる。




…そして何時しか2人は時が経つのも忘れ…きつく抱き合った。

177 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:56:47.96 ID:T9v5rC2I0
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( ^ω^)『ここは…どこだお?』

内藤ホライゾンは真っ白い空間に一人立っていた。
壁もなく天井もなく床もない。
ただ本当に虚無の空間。

( ;^ω^)『誰か…誰かいませんかお?』

内藤は小さく声にしながら、とりあえず足を前に進める。
歩いてもどこにも辿り着けそうになかったが、それでも何となく歩き出す。

( ;^ω^)『……』

歩いても歩いても何も見えてこない。
内藤の緊張は頂点に達した。

( ;^ω^)『誰かー!! 聞こえたら返事してくれお!!』

ついに大声を張り上げる。
その時だった。

         ーーー内藤。わたしは今ものすごく怒っている。


彼が最も聞きたかった女性の声が空間に響きわたった。


180 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:02:00.26 ID:sGLbyoZr0
( ゚ω゚)『…!! どこだお!! どこにいるんだお!!』

内藤は辺りを見回す。
だがそこにあるのは一面の白。
彼女の姿はどこにも見えない。

         ーーーわたしが何度も呼びかけていると言うのに全く気付かないとはな。

( ゚ω゚)『一目でいい!! 一目でいいから姿を見せてくれお!!』

         ーーー…それは出来ない。

( ゚ω゚)『そんな…どうして…』

内藤はがっくりと両膝をつく。

( ;ω;)『あなたを失ったから…僕は道標【みちしるべ】を失ってしまったから…
      …どうやって歩いていけばいいのか分からなくなってしまったんだお。
お願いだお…顔を見せてくれだお…僕を助けて…。
      僕を導いてくださいだお…』

項垂れた内藤の瞳から大量の涙が零れ落ちた。

181 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:05:42.83 ID:sGLbyoZr0

         ーーーお前はなにを言っているんだ?

どことなく呆れ返った声が空間に響く。

         ーーーわたしが何度声をかけても耳を閉ざし、目を背けていたのはお前の方ではないか。

( ゚ω゚)『目を背けていたのは…僕?』

         ーーーそうだ。

なおも声は続ける。

         ーーーわたしはお前の道標【みちしるべ】だ。
            昔も。今も。これからもずっと。
            お前が最後にわたしに言ってくれた言葉だ。忘れたとは言わせんぞ。

( ゚ω゚)『…これからも…ずっと…』

         ーーー休暇は終わりだ、内藤ホライゾン。立ち上がれ。

その言葉と共に内藤の体は白い光に包まれる。
冷たいけど…暖かい光に。

         ーーーもし、お前が道に迷った時。また来るといい。
            わたしはいつでもここにいる。


         ーーーわたしはいつでもここで君を照らしている。


185 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:10:53.42 ID:sGLbyoZr0
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( ゚ω゚)『ま、待って!!』

そう叫んで彼は跳ね起きた。
目に入る風景は白い空間ではなく、散乱した彼の部屋。
すぐ横では彼の恋人が寝息を立てている。
一体どれだけの時間抱き合い、寝ていたのだろう。
時計を見ると5時間かもしれないし、29時間かもしれない。
とにかく彼は羽化を待つ蛹の様に眠り続けた。

部屋の片隅でうっすらと月明かりに輝く何かを見つけて

( ^ω^)『…なんだろう』

彼は布団を抜け出した。

そこにあった物。
唯一被害を免れた彼の包丁。
冷たく暖かい輝きをした彼の愛刀。

一刀斎虎鉄。

内藤はそれを拾い上げ、初めて出合った時の様にただ見つめた。



188 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:14:42.07 ID:sGLbyoZr0
ξ゚△゚)ξ『内藤…どうしたの?』

そんな彼の背後に歩み寄って来たのはツンだ。
まるでローブのように毛布を体に巻きつけている。

( ^ω^)『…ツン、すまなかったお。大丈夫かお?』

内藤はいつもと同じ笑顔をツンに向ける。

ξ////)ξ『だ、大丈夫よ!! でもあんた準備も出来てないのに何度も入れるから…
     ヒリヒリして歩きづらいッたらないわ』

( ^ω^)『ツン…僕は道標【みちしるべ】を見つけたお』

疲れて足を止める事もあるだろう。
悩んで下を向く時もあるだろう。

でも道標【みちしるべ】は消えていない。

この光がある限り。
僕はどこまでも歩いて行ける。
僕はいつまでも走り続けられる。

僕は…

僕は料理人として生きていく。

( ^ω^)『行こう、ツン。僕にはやらなくちゃいけない事があるはずだお』

恋人をやさしく抱きしめ、内藤は言った。

190 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:17:00.44 ID:sGLbyoZr0
臨時休業明け初日。
バーボンハウスの空気は最悪と言えた。

バースペースに籠城する料理長を筆頭に、
事ある毎に物を蹴り飛ばす者。
無口なランナー。
まるで集中力のない鍋場責任者と、
今にも泣き出しそうなウェイトレス。

…葬儀会場かと思うような重い空気。
理由を聞いた常連客は美しいバーテンダーの早すぎる死に肩を落とす。
活気のない中華料理店で誰が食事を楽しみたいと思うだろうか?

( ,,゚Д゚)『…少し早いが…今日は店を閉めるぞ』

ギコの言葉に一同帰り支度を始める。

その時だった。

内藤の形をした風がツンをつれて飛び込んで来たのは。

( ^ω^)『…みんな…なにをやっているんだお?』

( ,,゚Д゚)『…見りゃ分かるだろ。帰り支度だ』



194 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:18:42.01 ID:sGLbyoZr0
違う!!
内藤は激しく首を横に振る。

( ^ω^)『これじゃ…こんなんじゃ…クーさんが愛したバーボンハウスじゃないお!!』

( ,,゚Д゚)『…!! 貴様に何が分かる!!』

ギコが内藤に詰め寄る。

( ,,゚Д゚)『クーは…あいつは死んじまったんだ!!
     俺は…俺達は…誰か一人抜けてもやっていけない!!
     そんな関係だったんだ!! 
     あいつがいない店で…昔のように出来るものか!!』

いつの間にか、2人の周りにはスタッフが輪を作り取り囲んでいた。

( ^ω^)『それが…それが違うって言ってるんだお!!』

( ,,゚Д゚)『…なんだと貴様』

( ^ω^)『ここにいないのはみんな…みんなの心がここにいないんだお!!
       クーさんはここにいるのに…!!』

内藤は自らの胸に手の平を押し当て叫ぶ。

       

         『光は…僕達の中で消えていない…!!
          クーさんは…クーさんは僕達の中にいるんだお…!!』



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