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LOYAL STRAIT FLASH ♪

LOYAL STRAIT FLASH ♪

合作第4章上

224 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:05:31.53 ID:E2RE4V3X0


     第4章 歩く花


( ;^ω^)『僕の聞き間違いかお…?今、クーさんを殺すって聞こえちゃったお』

(;*゚∀゚)『あ、あたしもさっ!! 耳がおかしくなっちゃったかなぁwww』

( ,,゚Д゚)『聞き間違いじゃねぇよ。俺はクーを殺すって言ったんだ』

( ゚ω゚)『そ、そんな!! ギコさんはクーさんが生き返って嬉しくないのかおっ!!』

( ,,゚Д゚)『嬉しくねぇぞゴルァ』

ギコさんは落ち着いた態度を崩さず言った。

( ,,゚Д゚)『人生ってのはたった一度しかねぇから美しいんだ。
     たった一度しかねぇから後悔しないように生きるんだ。
     バットだか【欠片】だか知らねぇが、突然生き返った挙句腐って死んじまうんなら
     この俺の手で引導を渡してやるぞゴルァ』

ギコさんの意見は正論かもしれない。
それでも…それでも…。

( ゚ω゚)『僕は納得いかないですおっ!!』

( ,,゚Д゚)『好きにしろ。俺も納得いってねぇんだ』

僕らは睨みあう。そして、同時に扉を飛び出しクーさんを探して駆け出した。

226 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:09:19.87 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(;*゚∀゚)『あ~ぁ、行っちゃったよ…』

('A`)『ったく、しょーがねぇなぁ。あいつクーさんが行きそうな場所なんて分からねぇだろうに』

(主^ω^)『間違いなく、この街のどこかだと思いますお』

( ゚∀゚)『ほぉ。根拠は?』

(主^ω^)『この世界が【欠片】と相性がいいっていうのは先ほどお話しましたけど、
       特にこの街が、ずば抜けて相性がいいんだと思いますお。
       だから【欠片】も引き付けられる様にこの街に落ちたんだろうし、
       この街を出ようとするとなんらかの制御がかかって出られないと思いますお』

(´・ω・`)『ふむふむ。つまり、秋葉原・原宿・乙女ロードといった
      クーのお気に入りスポットは削除できるわけだね。ずいぶん絞られてきたぞ』

(*゚∀゚)『で、候補としては?』

(´・ω・`)『この店の他には、母校の【難杉高】・お気に入りの公園・事故にあった現場。
      こんなもんだと思う』

ショボン達が顔をつき合わせる様にして話し合っていると

ξ#゚△゚)ξ『…納得行かないわっ!!!!!!!』

突然ツンが大声をあげた。

231 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:12:08.61 ID:E2RE4V3X0
 (;*゚∀゚)『うわっ!! びっくりしたっ!!』

('A`)『ななななななななななんだ、突然っ!!』

その場にいた全員が一斉に彼女を見る。

ξ#゚△゚)ξ『さっきからクーさんクーさんクーさんクーさんクーさん…!!!!!
      あたしに喧嘩売ってるとしか思えないわっ!!
      5・6発殴ってやんなきゃ気がすまないっ!!』

( ゚∀゚)『…気の毒としか言えねぇな』

         ゴスッ!!

ξ#゚△゚)ξ『そこのブタっ!!』

(主^ω^)『……』

(^ω^主≡主^ω^)

σ(^ω^;主)『?』

ξ#゚△゚)ξ『あんたの他にブタがどこにいるのよっ!! あんた、クーさんがどの辺にいるか分かるんでしょっ!!』

(主;^ω^)『いや…この街は僕の【欠片】と相性が悪いらしくて』

ξ#゚△゚)ξ『殺されたくなかったら死ぬ気で探しなさいっ!!
      あいつは絶対にクーさんを探し出すはずだわっ!! 先回りするわよっ!!』

そう言うとツンは哀れな異邦人の顔面を鷲掴みにし、外に飛び出した。

234 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:13:57.29 ID:E2RE4V3X0
 (*゚∀゚)『…似たもの同士だねぇ』

(メ)∀゚)『で、お前らはどうするんだよ?』

右頬を腫らしたジョルジュが尋ねた。

(*゚ー゚)『ごめん…あたしはどうすればいいのか分からない…。
    ギコ君が言う事ももっともだけど
    でも、全面的に賛成できない気持ちなの
    だからギコ君を探して…もっとギコ君の気持ちを話してもらおうと思う』

それを聞いたショボンは納得したかのように頷く。

(´・ω・`)『いや、その方がいいよ。ギコが言う事は正論かもしれないけど、
      正論が全て正しいわけじゃないし、ギコはとにかく口下手で誤解されやすいからね。
      ギコの事を頼むよ』

('A`)『途中で内藤やクーさんに会ったら連絡してくれ』

しぃは俯いていた顔を上げ、もう一度『ごめんね』と呟くと扉の外へ駆け出した。




236 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:15:33.21 ID:E2RE4V3X0
 (´・ω・`)『さてと。それじゃ僕も行こうかな』

ショボンは寄りかかっていた壁から、腰に勢いをつけて身を離す。

(*゚∀゚)『…? 一緒に探してくれないのかいっ?』

(´・ω・`)『すまない。彼女とは2人で話をしたくってね』

('A`)『ショボンさんが一緒に行ってくれれば力強かったのになぁ』

口ではそう言いつつもツーとドクオが無理には誘おうとしないのは、
ショボンの表情に決意めいたものを見出したからだろう。

(´・ω・`)『…ジョルジュはどうするんだい?』

( ゚∀゚)『あぁ。俺様には俺様の考えってヤツがあるんでな』

(´・ω・`)『分かった。それじゃ、また後でね』

3人はジョルジュに別れを告げると扉の外に出る。
それを見届けたジョルジュは一人バースペースに向かうと、
冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

( ゚∀゚)『さて…俺様はどうするかね』

プルトップを空けながら呟く。
誰よりも確実にクーを見つけるためにはどうするべきか?

ジョルジュはソファに体を埋めると、思考を開始した。

239 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:17:09.38 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー('A`)(*゚∀゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

ぼべべべべべべべべべべべべべべべべべ。

そうとしか形容できない不気味な音を立てながら俺はスクーターを走らせる。
最近ツーがイヨゥから安く買い上げた代物だが、
随分と長く乗ってきたものなのか、走らせる度に『壊れるんじゃないだろうか?』
と俺を不安にさせる昨日が初期設定されていたのには閉口した。

イヨゥはかなり頑張って稼いでいるから、スクーターなんてすぐに買い換えられると思うのだが…
借金でもあるのだろうか?
そんな意味のない事を考えてしまう。

(*゚∀゚)『ほら!! もっと急いで!!
     今何キロ出てるの!? …って20キロ!?
     何やってんだい!! 日が暮れちまうよっ!!』

(;'A`)『いや、元々コレ一人乗りだから。2人乗りってのが無理があるんじゃないか?
    そもそもコレ、法律違反だから』

俺は荷台に無理矢理座ってヘルメットをペシペシ叩いているツーに答えた。

(*゚∀゚)『何言ってんだい!! 男なら法律に縛られるより、法律を作る立場になることを考えなっ!!
     あ、そのボタンなんだい!? もしかして押したら翼がにょろ~んって出るとか…?』

('A`)『どっかのドクスペと一緒にするな。
    これは只のクラクションだ』

(*゚∀゚)『…あ、そーなんだ』

246 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:19:16.90 ID:E2RE4V3X0
 ('A`)『…それにしてもツンも可哀相になぁ』

俺は誰かに聞かせようとするでもなく口にする。

(*゚∀゚)『ん? 何がだい?』

当然耳ざとくそれを聞いたツーが尋ねてきた。

('A`)『…内藤の事だよ。
    あいつ、クーさんが生きてる時も死んじまってからもクーさんにベッタリだっただろ?
    俺、ツンとは幼馴染だったからさ。
    分かるんだよなぁ…表面じゃただキレてるようにしか見えないけど、
    誰にも見せない部分で悲しんでる。
    それが見てて可哀相でなぁ』

言いながら俺は更にスピードを落とし、フラフラしながらカーブを曲がる。

(*゚∀゚)『そんな事わたしだって気付いてたさっ!!
     それにドッ君とブーちゃんは親友なんだろっ!!
     だったら何で言ってやらないのさっ!!』

カーブを曲がりきった俺はゆっくりと速度をあげる。

('A`)『…んな事はとっくに言ってやったよ』

(*゚∀゚)『……そしたら何だって?』

249 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:20:36.74 ID:E2RE4V3X0
 ('A`)『………』

言ってもいいのだろうか?
少なくとも内藤は俺が誰にも言わないと信じて俺に話してきたはずだ。

(*゚∀゚)『ちょっと、ドッ君!! 聞いてるのかいっ!!』

いや。
俺はツーに話したかった。
聞いて欲しかった。
話すべきだと思ったからこそ、こんな事を言い出したのだろう。

俺は再びボロスクーターを減速させ、コンビニの駐車場に駐車した。
完全に駐車したのを見計らってツーが荷台から飛び降りる。
俺はヘルメットの風除けを上げると、煙草をくわえ火をつけた。

(*゚∀゚)『…そんなにマジメな話なのかい?』

俺は答える代わりに肺に溜め込んだ煙を吐き出す。

('A`)『…あいつにとって俺達は本当の家族だったんだよ』

そう言って俺は再び煙草をくわえた。





250 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:21:48.55 ID:E2RE4V3X0
(*゚∀゚)『…なんだい、それ?』

('A`)『うん。本当はあまり人に話すべき話じゃないんだけどさ』

俺はそう前置きして続ける。

('A`)『…あいつがバーボンに入社する前。
    すげー駄目人間だったのは知ってるだろ?』

(*゚∀゚)『うん。なんとなく聞いた記憶があるさ』

('A`)『あいつ、すげー甘やかされて育ったらしいんだわ。
    で、自分だけが特別…つーか、世界は自分を中心に回ってる。
    自分の考えどおりに物事が進まないのは間違ってるくらいの思考の持ち主だったらしい』

(*゚∀゚)『…そりゃ…まぁ…なんつーか…捻じ曲がってるねぇ』

ツーは小さなリュックをガサゴソと漁ると、小分けのチョコレートを取り出し口に放り込んだ。

('A`)『そんな性格だから、どこに行っても心の底を打ち明けられる友達なんか出来ない。
    同じ様な負け犬だけが集まる場所に逃げ込んで…
    誰かと話しながらずっと孤独を感じてたって…あいつは言ってたよ』

(*゚∀゚)『ご両親は…何も言わなかったのかねぇ』

('A`)『…甘やかされてたって言っただろ。
    いつか内藤が自分から立ち上がるまで見守るつもりだったんだろうな』


251 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:22:52.32 ID:E2RE4V3X0
 俺は備え付けの灰皿に煙草を放り込むと、すぐ2本目の煙草をくしゃくしゃの箱から取り出した。
ツーはチョコレートをかじりながら苦々しい顔をしている。

(*゚∀゚)『…あたしなら嫌だなぁ、そんなぬるま湯みたいな生活。
     生きてる実感がないって言うか…
     もっと【めがっさ!!】【にょろ~ん】って生きたいと思うさっ!!』

俺は頷く。

('A`)『うん。あいつも心の底ではそれを望んでいたんだと思う。
    でも、そんな環境でも居心地が良ければ居ついちまうもんなのかもな。
    なにせ周りには自分の味方しかいないんだ。
    表面上じゃ居心地良かっただろうぜ』

俺が黙って手を差し出すと、その上に包装紙の解かれたチョコレートが乗せられる。

('A`)『丁度いい湯加減の底なし沼ってあいつは表現してたよ』

チョコを口に放り込み、言いながら俺は顔をしかめた。
その顔がよほどの物だったのか、ツーが心配そうに言う。

(*゚∀゚)『…ドッ君、大丈夫? 無理して話さなくてもいいんだよ』

違う。
違うんだ。
確かに話していて気持ちのいい話じゃない。
でも、話さなくてはいけない。
それより、むしろ…。



256 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:24:18.00 ID:E2RE4V3X0
(;'A`)『苦いよ、コレ!! 人間の食べるもんじゃないよ!!
    何これ!? 俺に何食べさせたの!?』

(*゚∀゚)『…カカオ120%』

(;'A`)『やばいよコレ!! 毒だよ!!』

(*゚∀゚)『…はまると癖になる味なんだけどなぁ』

俺は口直しに煙草を思い切り吸い込む。
うん。
口の中で苦味が倍増して痺れる感じで最悪だ。

('A`)『…まぁ、でもここまで聞けばあいつにとって俺達が本当の家族だって理由がわかっただろ?』

ツーはそれを聞いて頭の上に大きな電球が輝いたような顔をした。

(*゚∀゚)『あ…そうか…』

そう。
内藤にとって俺達は本当の家族だった。
自分のエゴをぶつけ合い、
喧嘩し、
心の底から相手の事を思いやれる。
あいつが求めながらも手に入れられなかった絆で結ばれていたんだ。



259 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:26:55.69 ID:E2RE4V3X0
 ('A`)『あの時は偶然クーさんが死んじまったけど、
     俺達の誰が死んでもあいつは同じ位悲しんだと思う。
     ただ、ずっと自分を見守ってくれていた人が死んだショックは大きかったんだろうぜ』

(*゚∀゚)『…だからあの時あんなに取り乱したのかねぇ…』

そうかもしれない。
そうじゃないかもしれない。
真相はあいつにしか分からないけど、俺はきっとそうだろうと思う。

(*゚∀゚)『……あたしらは、ブーちゃんにとってそこまで大切な再会を駄目にしちゃったのかね』

ツーが珍しく肩を落とす。
俺は答える代わりにスクーターにまたがり、エンジンキーをひねった。

('A`)『あぁ。だからってここで立ち止まるわけにはいかねぇ。
    俺達が出来る罪滅ぼしは1分でも早くクーさんを見つけ出してやる事だけだ』

ツーは顔を上げると俺の背に体を押し付けるように荷台にまたがる。

ぼべべべべべべべべべべべべべべべべべ。

不気味な振動音と共にスクーターは加速を始めた。
目指すはクーさんが好きだったという公園。
速く。1分1秒でも速く。
俺は運転に全神経を集中させる。

だから、俺はコンビニの側の電柱の上に翼を持った女性が立っていた事も
彼女が俺達のはるか上空を飛び去っていった事も気がつかなかった。


261 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:27:57.19 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(*゚ー゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(*゚ー゚)『はぁ…はぁ…はぁ…』

わたしは今、全力で走っている。
腕が。足が。なにより胸が重い。
ツン姉みたいにぺたんこだったら走りやすいんだろうなぁ…と、
本人が聞いたら激怒しそうな嫉妬が頭をよぎる。
走ってる時ってどうして余計な事が頭に浮かぶんだろう。
そんな余計な考えがまた頭に浮かぶ。
今は少しでも速く足を動かさなきゃいけないのに…。

(*゚ー゚)『はぁ…もぉ…駄目…限界…』

わたしの足はそんな考えが浮かんだ瞬間、ついに止まってしまった。

(*゚ー゚)『…何やってんだろ、わたし…目的地も決まってないのに…』

わたしはブロック塀に寄りかかると、大きく酸素を吸い込み呼吸を整えようとする。
わたしがこっちに走っている理由は1つ。
この方向にはクーさんが住んでいたマンション、好きだったという公園、事故現場が集中している。
別の方向に走るよりギコ君を見つけ出せる可能性が高いと思ったからだ。

(*゚ー゚)『…でも…こんなにあちこちマンションだらけで…見つかるわけないよ』

口の中が粘りつく唾液で気持ち悪い。
わたしは更に酸素を取り入れやすくしようと顔を空に向け・・・・・・

それを見つけた。

265 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:29:29.69 ID:E2RE4V3X0
 (*゚ー゚)『…鳥?』

青い空を気持ちよさげに駆ける真っ白い一羽の鳥…。
違う!!
あれは鳥なんかじゃない!!
ワンピースを着た鳥なんかいるはずがない!!

(*゚ー゚)『…クーさん…本当に生き返ったんだ…』

わたしは溢れそうになる涙を堪え、動かない両足に気合を入れる。

(*゚ー゚)『大丈夫…まだ走れる…』

クーさんが向かう先にギコ君がいるかどうかはまだ分からない。
でも、クーさんと合流する事は決して無意味じゃない。

(*゚ー゚)『クーさん…待って…』

わたしは声にならない声をあげながら大空を羽ばたく天使を追う。
不思議と、みんなに連絡する事を忘れてしまっていた。


266 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:30:32.46 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー( ,,゚Д゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

( ,,゚Д゚)『ここで降ろしてくれ』

運転手『わかりやしたwwwwww1020円になりやすwwwサーセンwww』

( ,,゚Д゚)『…高いな。遠回りしたんじゃねぇだろうな?』

運転手『んな事ないっすwwwでもお客さん物好きッスねwwwこんな空き地に向かってくれなんてwww』

( ,,゚Д゚)『黙れ』

運転手『サーセンwww』

俺はお喋りな運転手のタクシーを降りると、その空き地の片隅に向かった。
元々マンション建設予定地だったそこは、死亡事故現場という縁起の悪い場所のせいか建設は見送り。
今ではただの空き地になっている。

無法者によってゴミが投げ捨てられ近隣住民は随分迷惑しているそうだが、
その一角だけは今でも綺麗に掃除され
ポツンと立った石の前に花や酒のミニボトルが供えられていた。

俺は手にした花をそっと置くと膝をつき、その事故の犠牲になった唯一の人物の冥福を祈る。
どれほどの時間そうしていただろうか。
背後に誰かが立つのが分かった。

『不思議な物だな。自分の死亡現場に花を供えてもらうシーンを見るというのは』

俺は自分の直感が正しかった事を確信した。


267 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:31:59.97 ID:E2RE4V3X0
 ( ,,゚Д゚)『…本当に生き返りやがったんだな』

俺はゆっくりと立ち上がり振り向く。

黒すぎて緑がかった長い髪。
光を反射して紫色に輝く瞳。
御丁寧に服装まであの頃と同じやたらヒラヒラしたの着てやがる。
あの頃と違う事といえば、背中につけた羽が玩具じゃなくて本物だって事くらいか。

懐かしい。
全く懐かしすぎて反吐が出そうだ。

川 ゚ -゚)『…全然驚かないんだな』

俺は反吐の代わりに唾を吐き出す。

( ,,゚Д゚)『内藤達から話は聞いていたからな。
     それより、内藤からはクソガキになっちまったと聞いたが?』

川 ゚ ー゚)『あの時のわたしは何も分かっていなかったからな。混乱もしていた』

クーはふふ…と笑い、言葉を続ける。

川 ゚ ー゚)『内藤の部屋を飛び出て…何度も自分に問いかけたよ。
     何故、わたしは生き返ったのか…とね。
     そうしたら【欠片】は答えてくれた。
     夢中になって【欠片】と語り合ったよ。
     今では【欠片】の力の全てを知っているし、使いこなす事が出来る』


270 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:35:07.71 ID:E2RE4V3X0
 ( ,,゚Д゚)『【欠片】と語った…だと?』

答えつつ身構える。
アドレナリンが全身から噴出すのが分かった。

川 ゚ ー゚)『そう。今のわたしはいわゆるOVER ZENITH状態というわけだ』

( ,,゚Д゚)『…なら、俺が何をしようとしているか…分かるよな?』

クーの顔が真剣なそれに変わった。

川 ゚ -゚)『あぁ。だが、わたしはまだ死にたくはない』

その言葉が終わるか終わらないかのうちに俺は跳びかかった。
クーは大きくバックステップして身をかわす。

川 ゚ -゚)『…何故、お前はそこまでわたしの死を望む?』

( ,,゚Д゚)『……お前なら分かるんじゃねぇか?』

川 ゚ -゚)『分かる。だが、ギコ。お前の口から聞かせて欲しい』

…ちっ。
どの道ここからではクーの所まで一跳びでは届きそうにない。
俺は構えを解くと、クーに向き直った。

( ,,゚Д゚)『…死んだ人間が生き返る。そんな事はあってはいけねぇんだ』



273 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:37:05.74 ID:E2RE4V3X0
 ( ,,゚Д゚)『人生ってのはな…一度っきりだから意味があるんだよ』

俺はついさっき内藤に言った言葉をもう一度口にする。

( ,,゚Д゚)『…人はいつか必ず死ぬ。それは避けられねぇ。
     だからこそ人はその人生を輝かせる為に必死になる。
     一期一会…人との絆を大切にする。
     二度と会えない人との思い出を守り、
     自分がくたばっても誰かの心に自分が残るように…命がけで生きようとする』

川 ゚ -゚)『……』

いつしか目の前が滲んできた。俺はそれを無視して続ける。

( ,,;Д;)『…そうやって…肉体は滅んでも心の中の真実の絆は永遠に続いていく…
     それこそが生きる意味…生きる全てだゴルァ』

頬をつたう涙が地面に落ち、染みを作った。

( ,,;Д;)『…お前が死んじまった時、悲しかったぞゴルァ…辛かったぞゴルァ…生き返ったと聞いて嬉しかったぞゴルァ…』

川 ゚ -゚)『……』

( ,,;Д;)『…でも…お前はすぐにまた消えちまう運命なんだゴルァ。
     そうしたら…残された俺達はどうやって生きればいい?
     また奇跡を待って…二度と起きない奇跡を信じて…
     心の中の本当のお前を否定して…妄想の中のお前を信じて…そんな人生に何の意味がある!!
     お前との思い出を…美しい思い出を壊したくねぇんだよ!!』

俺の叫びが2人きりの空き地に響きわたった。

278 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:39:46.50 ID:E2RE4V3X0
 川 ゚ ー゚)『…ありがとう。お前の気持ちはよく分かった』

( ,,;Д;)『ゴルァ?』

川 ゚ ー゚)『【欠片】の力で知っていたよ。どんなに暑い日も寒い日も。
     どんなに疲れていてもお前はここを綺麗にしてくれていたんだな』

( ,,;Д;)『…あぁ。ここに来ればお前に会える気がして…毎日毎日話しかけてたぞゴルァ』

川 ゚ ー゚)『それも知っている。嬉しかったよ。わたしが死んでもお前は変わらないでいてくれた。
     偏屈なトコも。頑固なトコも。口下手なトコも。昔どおりだ』

( ,,;Д;)『…!! だったら!!』

川 ゚ -゚)『それでもわたしにはやらねばならない事がある!!
     それを成し遂げるまでは死にたくないっ!!』

俺はその言葉を聞いてコートの袖で涙を拭う。
滲んでいた視界が一気にクリアになった。

川 ゚ -゚)『わたしは死ねないっ!! 皆の心の中のわたしの…』

( ,,゚Д゚)『お前を殺すっ!! 皆の心の中のお前の…』

川 ゚ -゚)( ,,゚Д゚)『 思 い 出 を … 絆 を 守 る 為 に っ ! ! 』

一陣の風が吹く。
それが戦いの合図になった。


281 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:41:22.47 ID:E2RE4V3X0
 川 ゚ -゚)『……接続…』

クーが呟く。同時に折りたたまれていた翼が大きく開いた。
その体が白く輝く。
光は突風となり、枯葉とともに俺を吹き飛ばそうと襲いかかってきた。

川 ゚ -゚)『……アクセス…』

その言葉と共にクーの右手に全身を包み込んでいた光が集合。
神々しい輝きの剣となった。

( ,,゚Д゚)『…これが…DATの力かゴルァ…』

初めて体験する圧倒的なプレッシャーに足が震えそうになる。
なるほど。
【欠片】とは言え、1つの世界を構成していただけの事はあるってか。
しかし俺も引くわけにはいかねぇ。

両腕を十字に組んで顔面をガードする。
暴力的なまでの風に逆らい、俺は地を蹴った。

狙いはこの事件の全ての元凶。

クーの背中で輝く翼……DATの【欠片】だ。

 



286 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:42:29.97 ID:E2RE4V3X0
 川 ゚ -゚)『剣状光!!』

( ,,゚Д゚)『ゴルァ!!』

俺が駆け出すと同時にクーは光の剣を下段に構え突っ込んできた。
すれ違いざま。俺は光の剣をかわしつつ、その翼めがけて渾身の一撃を叩き込む。
クーは俺の拳を避けつつ、光の剣を切り上げる。

交差は一瞬。

俺は疾走の勢いを殺すと同時に、背後からの追撃を警戒して
二度三度地面を転がって立ち上がる。

胸元にかすかな痛み。
しかし、俺の拳も確実にその翼を捕らえていた。
純白の羽が数枚。俺の体の周りを舞い落ちる。

振り向くと、クーは俺に背を向けて大地に膝をついていた。

女に手を上げるのは好みではないが、今のクー相手に手を抜けるほどの余裕は無い。

( ,,゚Д゚)『まだまだだぞゴルァ!!』

俺は叫び、剥き出しの標的目掛けて飛びかかる。

その攻撃をバク転の要領でかわし、クーは上空に舞い上がった。


291 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:44:12.67 ID:E2RE4V3X0
 ( ,,゚Д゚)『降りてきやがれ!! 卑怯だぞゴルァ!!』

俺は手の届かない上空にいるクーに無駄と知りつつ叫んだ。
しかしクーは冷ややかに俺を見つめるのみ。

川 ゚ -゚)『戦いは終わった。すでに君の勝ちは無い。
     いや。剣状光に目を奪われていた時から結果は決まっていた』

そう言って左手にした茶色い皮で出来た何かを見せ付ける。
あれは…? 俺はそれの正体に気付き、胸の裏ポケットをまさぐる。やっぱりない。

( ,,゚Д゚)『…俺の財布?』

何をする気だ? 全く理解できねぇ。
俺はその意表をついたクーの行動に一瞬戦意を削がれた。

川 ゚ ー゚)『ふっ…。これでわたしの勝ちは完璧なものとなる』

クーは言うやいなや、俺の財布の中身を空から撒き散らし始めた。
財布を奪い金を撒き散らす事で俺の集中力をそらす作戦か…いや、違う。
クーがそんな陳腐な策をとるわけがねぇ。

(*( ,,゚Д゚)『てめぇ!! 何しやがる!!』

川 ゚ ー゚)『はははははは。この財布の××××××は108枚まであるぞ』

その途端。
背後から俺を襲う新たな殺意のオーラ。
あぁ。そういう事か。
俺はクーの目論見と自身の敗北を理解した。

297 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:46:35.48 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(*゚ー゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

涙を流しながら絶叫するギコ君。
その姿を見たわたしは、ただ2人を見守る事しか出来なかった。

突然の風を合図に話は終わり、戦いが始まる。
ギコ君がその涙を拭い、クーさんの右手に光の剣が発動した。

(*゚ー゚)『!!』

すれ違いざまに一撃を叩き込もうとする2人。
互いに身をかわし、ギコ君の続いての攻撃を避けるやクーさんは上空に飛び上がる。

(*゚ー゚)『…あれって?』

クーさんが取り出したもの。
それは確かに見覚えのある…絶対に触られせてもらえないギコ君のお財布。
クーさんはニヤリと笑うと、その中身を宙にばら撒き始めた。

(;*゚ー゚)『…何やってんだか…』

その時、風に乗って数枚の紙幣とレシート。そして【それ】がわたしの足元に舞い落ちた。
わたしは【それ】を拾い上げる。
【それ】にはこう書いてあった。







303 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:47:54.83 ID:E2RE4V3X0
    【おっぱい女学園 あけみ ギコちゃんまた遊びに来てね(はぁと】

    【破廉恥超特急 みどり 090-×××・・・・・・・】

    【セクシーメイド喫茶 ご主人様。ちかは貴方の奴隷です】

(* ー )『……』

キレタ…キレチマッタヨ…

わたしは足を前に進める。
この戦いに終止符を打つ為に。

そして、敗者に鉄槌を下す為に。

クーさんは楽しそうに財布の中身を宙にまく。
ありがとう、クーさん。
ギコ君の不審な行動の意味がよ~く分かったわ。

大事なお話の途中で悪いけど、ちょっとギコ君借りるね。







川 ゚ ー゚)『はははははは。この財布の風俗嬢の名刺は108枚まであるぞ』


310 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:50:23.05 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー川 ゚ -゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

戦いは終わった。

川 ゚ -゚)『人の夢と書いて儚い…か。虚しい物だな』

         し、しぃ!?いつからココに!?

どこかで聞いた台詞を口にしながら、わたしは闘いが終わった後の冷たい風を身に受ける。

         ちょっと待て!! 今はそんな事言ってる場合じゃ…!!

ギコの気持ちは分からないわけではないし、少し嬉しくもあった。
だが、わたしはまだやる事がある。死ぬわけにはいかない。

         うるさいうるさいうるさい!!

川 ゚ -゚)『さらばだ、ギコ。この身があるうちにもう一度会いたいな』

ありがとう。   や、やめ…落ち着け…ハニャーーーーーーーーーン!!

聞こえただろうか?
最後にそう投げかけ、騒々しいBGMを背にわたしは翼を羽ばたかせた。





         (#*゚ー゚)『10回殺してやるーーーーーーーっ!!!!!!!』

316 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:52:46.38 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(*゚ー゚)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(#*゚ー゚)『…はぁ…はぁ…はぁ……』

戦いは終わった。
足元にはボロ雑巾のようになったギコ君が転がっている。

(*゚ー゚)『風俗と書いて浮気。思い知ってね…』

呟いてからわたしは空を見上げる。
そこにはもうクーさんの姿は無い。
それを確認してからわたしはその場に座り込み、ギコ君の頭を胸に抱え込んだ。

あの時。ギコ君の背後に立った瞬間。
わたしには何故かクーさんの考えが理解できた。
クーさんが残された時間で何をしようとしているのか? 心の中に流れ込んできた。
だから、こんな形だけどクーさんの味方になってギコ君を止めた。

(*゚ー゚)『…ごめんね、ギコ君』

そう呟いて愛しい人の頭を強く抱きしめる。

(*;ー;)『最初から全部聞いてたんだ…。
    でも…何でも一人で抱え込んで解決しようとしないで。
    2人で乗り越えよう…それも…私達の絆でしょ?』

         すまなかったぞゴルァ。

胸の中でギコ君が小さな。本当に小さな声で言った。
でも…お願いだから風俗は控えてね。                                  コロスヨ

324 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:54:21.98 ID:E2RE4V3X0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(´・ω・`)sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(´・ω・`)『ふぅ』

僕は小さく溜息をついて目の前の金網を握り締めた。
金網の向こうのグラウンドでは体操着姿の女子生徒がバレーボールを楽しんでいる。

(´・ω・`)『……ハズレだったか』

そう呟いて缶コーヒーを一口。

僕は今、クーの母校である【難杉高】に来ていた。
学校の周囲をグルリと一周してみたのだけれど、クーは影も形も見えなかった。
僕なりに確信を持ってココに来たのだけれど……。

いや。
冷静に考えればココは僕とクーが初めて出会った場所だ。
個人的な思い入れが強すぎたのかもしれない。
僕はもう一度考えを整理しなおす。

……。

(´・ω・`)『やっぱりここしか考えられないや。もう少しここで待ってみよう。
      行き違いになった可能性だってあるしね』

そう結論を出した僕。
その時…背後から僕に声をかける者がいた。



327 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:55:40.87 ID:E2RE4V3X0
 竹刀マッチョ『君。こんなトコで何をしているのかね?』

(´・ω・`)『ウホッ』

竹刀マッチョ『ウホッじゃねーよ。質問に答えなさい』

その、いかにもタフガイな感じのする男は威嚇するように竹刀をもてあそびだした。

(;´・ω・)『あの…人を探しているんです』

竹刀マッチョ『あ? ここの生徒?』

(;´・ω・)『いえ…違いますけど…』

竹刀マッチョ『じゃ、どっか行ってくれませんかね?
       最近この辺で変質者が多くてね。生徒が脅えてるんだよ』

(;´・ω・)『…僕、変質者に見えますか?』

竹刀マッチョ『見えるね』

(´・ω・`)『…ふぅ』

僕はもう一度溜息をつくと、その場を後にした。



329 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:56:48.70 ID:E2RE4V3X0
 (´・ω・`)『難しいもんだね』

【難杉高】そばの公園のベンチで僕は禁煙パイプを揺らしている。
人探しがこんなに大変とは思わなかった。
どうやら僕には探偵は務まりそうにない。

(´・ω・`)『そう言えば…』

僕はハッと気がつく。どうしてこんな簡単なことに気がつかなかったのだろう?
全く。自分がどうかしていたとしか思えない。
厨房で培った冷静さもこんな時には無意味かと思うと悲しくなる。

(´・ω・`)『ここは内藤君にそっくりな彼を見つけた公園じゃないか!!』

つまり、いい男専用ベンチがある公園でもある。

(´・ω・`)『もしかして、学校の人はいい男さんを変質者と勘違いしたのかも!!
      あの人誤解されやすいからなぁ…教えてあげればもう少し近辺を探索できるかもしれない』

僕はそう考えてベンチから腰を上げようとして


突然目隠しをされた。

(´つω⊂`)『ウ、ウホッ!?』

高くも低くもない。美しく響く声で尋ねられる。

???『だ~れだ?』

334 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 22:58:21.50 ID:E2RE4V3X0
 (´つω⊂`)『……!!』

懐かしい。
僕は思い出していた。
そう言えばあの頃も、こうしてここで毎日待ち合わせたっけ。

仕事。学校。夢。ファッション。最近出来たケーキ屋。車。
話題は何でもよかった。
何時間も語り合った。

完全なアルコール中毒だった僕が禁酒するか?
ベッドを共にするか?
そんな賭けをして深夜に飲み比べ対決をしたこともあったっけ。
結局負けたけど。

あの時、すでに僕は恋に落ちていたんだ。

半開きの口から禁煙パイプが落ちた。
その声を聞いただけで僕の瞳からは涙が溢れる。
その柔らかい手のひらを濡らしてしまうのは本当に申し訳なかった。

僕は麻痺したように動かない舌を必死に動かし、ようやく言葉を口にする。

(´つω⊂`)『あ……』

???『……あ?』


(´つω⊂`)『阿部さん?』


340 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 23:01:18.75 ID:E2RE4V3X0
         違 う ! ! ! ! !


その怒声とともに僕の頭は強引に背後に向けられた。
そこにはあの頃よりも成長して大人っぽくなっている…
見慣れた。
でもずっと会いたかった美しい女性の顔。 

川 ゚ ー゚)『……このやり取りも懐かしいな』

(´・ω・`)『違うのはお互いに年を取った事と、僕の手に酒瓶が握られてない事だけだ』

川 ゚ ー゚)『代わりに裏ポケットに入ってるみたいだがな。中身は…ローゼス?』

(´・ω・`)『参ったな。ギコから連絡は受けていたけど本当に全てお見通しなんだね』

僕は降参とばかりにポケットタンブラーを取り出し、あの頃と同じようにクーに手渡す。
クーはキャップをひねると、それを一息に飲み干した。

川 ゚ ー゚)『美味い。まさに命の水【スピリッツ】だな』

僕らはまじまじとお互いの顔を見つめる。

クーは満面の笑みで。
僕は涙でくしゃくしゃになった顔で笑った。

342 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 23:02:55.31 ID:E2RE4V3X0
 ひとしきり笑いあってから僕らは並んでベンチに腰を下ろした。
クーは生前に一緒に原宿に買いに行ったお気に入りのゴスロリ風メイド服。
背中ではどう見ても玩具の羽が意思を持つように揺れている。
ただその服の色は好んで購入していた黒ではなく、
かすかに光沢のある白でそれだけが少し残念だった。

川 ゚ -゚)『すまないな。お前が買ってくれた服を着たかったのだが、
     【欠片】が天使のイメージにそぐわないと言って白以外認めてくれなかったのだ』

(;´・ω・)『え? え? 何で分かっちゃうの!?』

思わず口にしてから気付く。

(´・ω・`)『そうか…君には隠し事は出来ないんだったね』

川 ゚ -゚)『あぁ。ある程度接近する必要はあるがな。正直、お前の心の内を知った時戸惑ったぞ。
     こんな状況でなければ何日か時間が欲しかったほどだ』

(´・ω・`)『うん。ごめん』

川 ゚ -゚)『謝るな。わたしだって嫌なら姿を見せたりせんさ』

(´・ω・`)『…うん』

その言葉を最後に僕らは続く言葉を失った。
僕はそよ風に揺れる花をなんとなく見つめる。
僕らの手はどちらから求めるわけでもなく固くつながれていた。

344 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 23:04:30.28 ID:E2RE4V3X0
 じろじろ。ひそひそ。

そんな効果音が聞こえてきそうなほど、
目の前を歩く人達は僕らを物珍しそうに眺めつつ去っていく。

(´・ω・`)『…なんか僕達注目されてるね』

川 ゚ -゚)『あぁ。珍獣になった気分だ』

(´・ω・`)『珍しいってのは否定しないよ。ここはBLの聖地だからね。
      男女が並んで座ってるなんて一年に一度あるかないかだよ』

川 ゚ -゚)『いや、下っ腹が弛んできた中年男と美女の組み合わせが珍しいのだろう』

(;´・ω・)『ぼ、僕はまだ中年じゃない!! それに自分で美女とか言っちゃうのはどうかと思うよ』

僕の必死の否定にクーは楽しそうに声をあげて笑い出す。
それが嬉しくて僕も釣られて笑い出した。

しばらくの沈黙を忘れるように笑う僕達。
しかし、やがてそれはまた沈黙に変わった。

川 ゚ -゚)『…どうしてだろう。あの頃みたいに笑えないな』

(´・ω・`)『…うん。君が死んで落ち込んでる時…ギコに言われた言葉を思い出したよ』

川 ゚ -゚)『……』

(´・ω・`)『人生は一期一会。過ぎ去った時は戻らない。
      後悔したくなかったらそれだけは忘れるなって…ね』

345 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 23:05:31.49 ID:E2RE4V3X0

 川 ゚ -゚)『…重い…重い言葉だな』

(´・ω・`)『…うん。ギコは親父さんのお店を乗っ取られて追い出されて…。
      僕らと会うまでは相当荒れた生活だったみたいだからね。
      自分の経験から感じとった事も多いんだろうね』

僕は片手で禁煙パイプをクルクルと回しながら言う。

川 ゚ -゚)『そう…だな』

過ぎ去った時は戻らない。
彼女に想いを告げても、その想いが叶う事はない。
僕は留まる者で、彼女は明日にはこの世界を立ち去る者。
あの頃とは…何もかもが違いすぎている。
変わらないようで違いすぎているんだ。

それじゃ、また言葉に出さずに終えるのか?
そして、また明日【今日】言葉にしなかったことを後悔しながら生きるのか?

川 ゚ -゚)『ショボン!!』

僕は…僕はどうすればいい?
この後悔の連鎖を止める為には…どうすればいい?
いっそ、クーと同じ世界の住人になれば楽に

川 ゚ -゚)『ショボン!!』

叫ぶやいなや、クーは僕の首にしがみついた。


346 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 23:06:32.63 ID:E2RE4V3X0
 川 ゚ -゚)『バカな事を考えるな!! わたしは【欠片】を持っているんだぞ!!
      もし、万が一、【欠片】が君の願いに反応してしまったら…!!』

クーは強くしがみつき叫ぶ。僕も負けじと、その細い腰に両手を回し叫んだ。

(´;ω;`)『バカなのは十分承知さ!!』

そして、心の奥底に隠していた自責の念を曝け出す。

(´;ω;`)『僕は…!! あの時の内藤君の苦しみは…僕の苦しみだ!!
      あの日から何度も考えた…
      もし、僕が君に想いを打ち明けていたら…
      何があっても君を護ると言えていたのなら…
      君はもしかしたら死ななかったんじゃないかって…』

川 ; -;)『もしかしたらの…仮定の話にすぎないじゃないか…!!』

(´;ω;`)『それでも…僕は可能性を捨ててしまった…
      こんな終末が待っていると知っていたなら…どんな事をしてでも君を護ってみせたのに…
      あの時…生涯を懸けて君を護ると誓ったのに…
      それでも…時は戻らない…過ぎ去った時は戻らないんだ…』

川 ; -;)『…それならっ!!』

クーが翼を広げ、僕らを包み込む。

川 ; -;)『わたしが…君の願いを叶えてやるっ!!』

その翼が白く輝き、一瞬にして僕は光の濁流に押し流された。


350 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 23:07:56.50 ID:E2RE4V3X0
 (´・ω・`)『…いい気持ちだなぁ』

僕は今、光の中を流されている。

春に草原の木陰で昼寝しているような。

夏に母なる海に一人浮かんでいるような。

秋に紅葉降り注ぐ街道を歩いているような。

冬に雪を眺めながら程よく酔っているような。

それらを全て1つにしたような気分だ。

(´-ω-`)『…一生このままでいたい気分になるね』

そう言って僕はすぐそばにあった【モノ】に抱きつく。
柔らかくて…。
暖かくて…。
いい匂いがして…。
何かが鼻をくすぐる。

(´-ω-`)(…ここは本当に天国なのかなぁ)

そんな事を考えた瞬間

???『こぉのぉっ!! バカショボンっ!!!!!』

僕は罵声とともに地獄に叩き落された。


354 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 23:09:16.31 ID:E2RE4V3X0
 (;´・ω・)『痛っ!! な、なんだなんだ!?』

僕は尻餅をついて辺りを見渡す。
そこには、草原も海も街道も雪も存在しない。
あるのは見慣れたベンチ。大時計。誰も乗らない錆びたブランコ。

(;´・ω・)『ここは…』

間違いない。
毎日のようにクーと話しこんだ。さっきまでクーと抱き合っていた公園だ。

(;´・ω・)『…夢…だったのかな?』

俯き、地面を見つめる僕の視界に誰かの足が映った。
踵を潰したローファーと、明らかに校則違反の短いスカート。ルーズソックス。

???『…夢…ならよっぽど幸せな夢だったんだろうね』

(´・ω・`)『……』

僕はその足の持ち主の顔を見上げる。

o川*゚ー゚)o『女子高生と抱き合って夢を見られるなんて普通ないわよ。
      ほら。いつまで座り込んでるのよ!!』

懐かしい。
なんて懐かしいんだろう。
僕の前に立っていたのは…【難杉高】の制服を着た。
出合った頃の姿のクーだった。

356 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 23:10:43.86 ID:E2RE4V3X0
 (´・ω・`)『よいしょーーー』

僕はセーラー服姿のクーの手を借りて立ち上がった。
クーは艶やかな黒髪を大きなリボンでオサゲにしている。

o川*゚ー゚)o『あ~あ。泥だらけ』

クーはそう言って僕の尻についた泥を叩き落とした。

(;´・ω・)『あの…ちょっと痛いんだけど』

o川#*゚ー゚)o『…痛くしてるのよっ!! もう2度とあんな事しないでよねっ!!』

これでお終いっ!!と言って最後に思い切り強く叩かれる。

(´・ω・`)『え…あんな事って?』

o川#*゚ー゚)o『…もう忘れたのっ!! バカショボンっ!!』

言うやいなや彼女は僕の鼻先にその幼さが残る顔をずいと近づける。
その柔らかい髪の毛が僕の頬を撫でた。

o川*゚ー゚)o『君、話してたら突然抱きついてきたんだよっ!! びっくりしたじゃないかっ!!』

(´・ω・`)『え…?』

僕は理解できないまでも何とか思考を整理しようとする。
でも…何だか…何かを思い出せそうな気がするのは何故だろう。

361 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 23:12:19.01 ID:E2RE4V3X0
 ペンキが剥がれかけたベンチに座るクーに促されながら僕は隣に座った。

o川*゚ー゚)o『さっきの話の続きだけど、勝負は0時スタートだからねっ!!
      遅刻しないでよ!!』

(´・ω・`)『勝負?』

o川*゚ー゚)o『…君、覚えてないのっ!!』

クーは『あちゃ~』と言いながら手の平を額にあて、首を横に振る。

o川#*゚ー゚)o『飲み比べ勝負の事だよっ!! 負けた方が勝った方の言う事を何でも聞く。
      わたしが勝ったら君のアル中が治るまで完全禁酒してもらうからねっ!!』

あぁ、なるほど。
僕はその言葉で全てを思い出した。
デジャブを感じるのも当然。

あの時、クーは僕の願いを叶えてくれたんだ。

審判はギコが務めてくれるとか、お酒はあらまッチが準備してくれるとか
一人話し続けるクーを余所に僕は必死に当時の事を思い出す。






(´・ω・`)『…ここは…初めてクーとあった頃の…10年前のあの場所だ』

366 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 23:13:49.36 ID:E2RE4V3X0
 過ぎ去った時は戻らない。
戻らない筈だった。
でも、僕は戻ってきた。
戻してくれたんだ。
クーが。【欠片】の力で。

o川#*゚ー゚)o『…ちょっと!! 聞いてるのっ!!』

クーは僕の両頬を掴み、自分の方に強引に向かせる。
そう言えば、この勝負はクーが何度も禁酒の約束を破る僕を心配して企画考案したものだった。
口調や行動に若さゆえの勢いこそあるが、
仲間思いな性格はこの時から変わっていなかった事を再確認して僕は嬉しくなる。

(´・ω・`)『そう言えば…』

【今】のクーの制服の背中にもおもちゃの羽が揺れている。
教師がうるさいってボヤいてたっけ。

o川*゚ー゚)o『む~。で、ちゃんと罰ゲームは考えてきたんでしょうねっ!?』

(´・ω・`)『罰ゲーム?』

反射的に答えつつも、僕の脳裏には当時の苦々しい思い出が甦ってきた。



368 名前: 美容師見習い(埼玉県)[] 投稿日:2007/03/19(月) 23:15:24.29 ID:E2RE4V3X0
 『僕と付き合ってほしい』

あの頃は…いや、この頃と言うべきなのだろうか?
とにかく、僕は何度もその言葉を口にしようとした。
でも、出来なかった。
酒に酔わなければ包丁も握れない料理人には彼女は眩しすぎたから。

この時も僕は言おうとしていたんだ。
言おうとして彼女を抱きしめた。

『僕が勝ったら僕と付き合ってほしい』って。

それなのに…いざとなって口から出た言葉は

『僕が勝ったらそこのラブホテルで一晩僕のモノになれ』だった。

クーは顔を真っ赤にし、散々文句を言いながらもそれを了解した。

勝負の結果。
僕は負けた。
正直に言うと、まだまだ体はアルコールを受け入れる余地はあった。
でも、未熟な体に青ざめながらも無理矢理酒を流し込んでいるクーを見ていると
このまま勝ったら自分が二度と立ち直れないような気がして…。
負けたフリをして寝てしまったんだった。

そして、僕は今。あの頃に戻ってきた。言うのは今しかない。
そう考えたから、クーは僕をこの時間に戻してくれたのだろう。
僕は決意を込めて口を開いた。

(´・ω・`)『クー。僕は君が好きだ』


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