2007/01/19(金)22:24
( ^ω^)が料理人になるようです(第八章下)
207 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:24:22.15 ID:qvCnUHWG0
(´・ω・`)『じゃ、そろそろ内藤君に炒めの基本を教えようかな』
ランチタイムの喧騒も引いてきた頃、ショボンさんが言った。
(´・ω・`)『洋食がオムレツに始まりオムレツに終わる…と言われる様に、
中華は炒飯に始まり炒飯に終わると言っても過言ではない。
まずは君の技量を見る為に1つ作ってみてくれないか?
まずはドクオ。お手本を見せてあげて』
ドクオは普段作っている様に手早く炒飯を作り上げた。
ドクオが鍋を振るたびに米粒が宙に舞い上がる。
それをお玉で掬い上げ盛り付けるまではあっと言う間だった。
(´・ω・`)『うん。また腕を上げたんじゃないか?
次は内藤君。正直期待は全くしてないから緊張しないでほしい。』
心臓が大きく鳴っているのが自分でも分かった。
208 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:26:00.66 ID:qvCnUHWG0
僕は初めてコークスの前に立っている。
コークスとは、中華料理の命である超高熱を生み出すためのC字型のかまどだ。
緊張するなと言われても手が汗ばむのが分かる。
ガスの火をつけ、オイルポットから油を一すくい。
割って溶いてある卵をお玉で鍋に流し入れ、長ねぎの微塵切りとご飯を投下。
それから鍋を振ろうとして…
( ;^ω^)(な…なんだお、この重さ!! こんなのをツーさんもドクオも使ってるのかお!?)
鉄製の中華なべの重さは尋常ではなく、100均で買ったフライパンを愛用している僕には衝撃的だった。
これ、銃弾でも跳ね返せるんじゃないか!?
僕が全力で鍋を振るたび、ガス台の周りにご飯が飛び散っていく。
( ;^ω^)(あ…あれ? 鍋底に卵が焦げついて…これはお玉で削ぎとるしか…)
(´・ω・`)『うん。もうそれでいいよ』
ショボンさんからストップがかかり、僕の鍋デビューはksmsな結果に終わったのだった。
( ;^ω^)『簡単そうなのに…全然ドクオみたいに作れなかったお』
(´・ω・`)『気を落とす必要はないよ。全く予想通りだったからね』
ショボンさんがケロッと言う。
少し…いや、かなり悔しい。
(´・ω・`)『一般家庭の調理器具は概して洋食形式だからね。最初は僕だってこんなもんさ。
じゃ、サービスとして僕も作るから見ていてほしい』
209 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:27:05.00 ID:qvCnUHWG0
(´・ω・`)が炒飯を作るようです
1、白い煙が出るまで火力全開で鍋を焼きます。
(´・ω・`)『こうする事で鍋についた目に見えない汚れを焼き取るんだ。油が馴染みやすくなるってのもある』
2、オイルポットから油をお玉2~3杯鍋に注ぎ込みます。
(´・ω・`)『たっぷりの油を使う事で鍋に油をしっかり染みこませるんだ』
3、余計な油をオイルポットに戻し、卵と葱を入れます。
(´・ω・`)『1人前につき卵1~1.5個位。葱は歯ごたえを楽しむ為最後に…って人もいるけど、好みでかまわない』
4、ご飯を投下し、お玉の底で叩いてほぐします。
(´・ω・`)『炒飯はご飯を卵がコーティングすると共に、ふわふわ卵でないと美味しくないんだ。
だから、卵が生すぎても駄目。固すぎても駄目。タイミングとしては超半熟のスクランブルエッグ。
5分程度火が通ったらご飯投下って感じかな
ご飯を叩いてほぐすときは、力を入れすぎるとご飯が潰れちゃうからね。
あくまで【ほぐすために叩く】事を忘れないでほしい』
5、中華用固形スープ(上湯)で味をつけます。
(´・ω・`)『後で味を整えるから薄味でね。
塊になっている上湯を叩いてほぐしてあげてくれ』
212 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:31:42.61 ID:qvCnUHWG0
6、ご飯を炒めます(初級編)
(´・ω・`)『ここでの基本は鍋全体にご飯を広げながら炒める事。
これだけでも家庭で食べるくらいの炒飯は作れる。ただ最初は1人前づつ作る事。ご飯が多いと難しいからね』
6、ご飯を炒めます(プロ編)
(´・ω・`)『ご飯を鍋全体に広げるまでは同じさ。
鍋の振り方だけど、力は必要ない。
まず、鍋を軽く引いて手前を高く持ち上げるんだ。
自然と奥が下がって鍋のふちに火があたっているのが見えるだろう?
そこにお玉の底を使ってご飯を押すようにすくい上げる。
勢いでご飯が宙に浮くけど、それは鍋を元の位置に戻すように動かせば散らばる事はない。
これを何度かやって直火でご飯を煽っては叩いてほぐしてやるんだ。これの繰り返しさ』
( ^ω^)『勉強になりますお』
(´・ω・`)『あとは塩胡椒で味を整える。香ばしい香りを出す為に鍋肌に醤油を少し垂らして2~3回鍋を振る。
これで完成。
ところで内藤君はJOJO好き?』
( ;^ω^)『は?』
最後の質問の意味が分からない。
横を見ると、ドクオとツーさんが苦々しげに
(;'A`);*゚∀゚)『また始まったよ…』
とでも言いたそうな顔をしている。
そんな2人を無視してショボンはポーズを決めた。勿論JOJO立ちで。
216 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:35:00.51 ID:qvCnUHWG0
(´・ω・`)『炒飯のリズムはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ 幽波紋のリズムぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!
今からそれを見せてやるぅぅぅぅぅぅ!!』
料理長の顔つきが変わった。
(`・ω・´) 『オラオラオラオラオラオラ!!』
鍋を振る。
(`・ω・´) 『ドララァァァァァァァァァァァ!!』
ご飯を叩く。
(`・ω・´) 『無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!』
鍋を振りご飯を叩く。
(`・ω・´) 『URYYYYYYYY!! KHAAAAAAAAAA!!』
( ;^ω^)『……』
そうやって完成した炒飯は美しい金色をしていた。
(´・ω・`)『ゼェゼェ…炒飯が…基本って言われるのは…ゼェ…こうやって…
短時間に…16ビートで…自在に鍋を動かすのが大切…だからさ。
炒めすぎると…ウップ…ぱさぱさで美味し…くないし、
炒めが足りないとベチャベチャ…ゼェ…する。
この金色の炒飯が…ウォェップ…出来るまで…毎日作るんだ…いいね
ところで…だれか水くれないかな…』
219 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:40:05.96 ID:qvCnUHWG0
それから何日か僕はドクオの追い回しをしたり炒飯の練習をしたりの日々を送った。
ドクオは相変わらず淡々と作っているように見えるが、僕はそのスピードに喰らいつくのが精一杯だ。
( ;^ω^)『どうやったら…こんなに早く出来るんだお?』
そう思って麺の茹で時間を計るタイマーを見ると本来90秒茹でる麺を45秒であげている。
( ^ω^)『ドクオ。インチキは駄目だお。45秒しか茹でてないから麺が固いってクレームつくお』
('A`)『大丈夫だ』
( ;^ω^)『大丈夫って…おまwww』
('A`)『麺を湯切りする際の麺自身の余熱。丼に移してからのスープの熱。提供するまでの時間。
これを考えると1分30秒は茹ですぎなんだよ』
( ;^ω^)『こいつ…僕が必死でやっても全然追いつかないのに…そこまで計算してたのかお?』
前にツンから僕とドクオとツンは同い年だと聞いた事がある。
こいつは僕が遊び呆けてる間にいったいどれだけの料理を作ってきたのだろう。
そんな事をギコさんに話すと、
( ,,゚Д゚) 『今の心を忘れるな。体だけじゃなく頭もフルに動かせ。
そうすればいずれ背中くらいは見えてくるだろうよ』
そう言われた。
221 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:44:33.21 ID:qvCnUHWG0
ついに厨房内配置転換を発表する辞令がスタッフルームに張り出された。
辞令
・伊集院ドクオ。 左の者をバーボンハウス本店鍋場責任者に任命する。
・内藤ホライゾン。 左の者をバーボンハウス本店麺場担当に任命する。
両名及びスタッフは1週間後までに準備・体制を整え万全の姿勢で業務に励む事。
バーボンハウス本店料理長 ショボン
ツーさんは壁に貼られたその辞令を何度も何度も読み返していた。
無言で立ちつくすその顔は心なしか青ざめて見えた。