LOYAL STRAIT FLASH ♪

2007/03/29(木)01:05

( ・∀・)二十年後、モララーはしょぼんと出会うようです(´・ω・`) (第六話上)

2 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 21:56:30.02 ID:XAMO4Drr0 第六話 予想はできていたはずだ。 しかし、私の衝撃は計り知れないものがある。 もしかしたら、このことについて考えようとしていなかったのかもしれない。 あの日以降、私は行方不明者として扱われたのだろう。 二十年も消失していれば、おそらく私と彼女は離婚したものとして処理されている。 彼女とて、私のことは早く忘れたかったに違いない。 この場所を引き払い、新天地を求めるのはおよそ当たり前の行動だ。 そして、住み手のいなくなった居住空間はある種当然の末路を辿った。 道行く人は、不審な目で眺めているだろうか。 駐車場となった土地の前で佇んでいる私を。 3 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 21:57:15.07 ID:XAMO4Drr0 住宅地の一画は、二十年前の面影を全く残していない。 父から譲り受けた、それなりに広い家は完全に取り壊され、 今では自動で運営される駐車場に成り変わっている。 あのあたりは風呂場だったろうか。 その上には確か私の部屋があったはずだ。 そこは父が生前使っていた場所で……。 二階には一つ空き部屋があった。 「この子が大きくなったらここに配置しよう」としぃが娘を抱きながら、目を輝かせていた光景が脳裏をよぎった。 しぃの部屋は一階にあったはずだ。 リビングから廊下に出て、右手にある畳の部屋が彼女の寝室だった。 ……どうやら自分は、思っていたよりも彼女たちのことを覚えているようだ。 途方もない脱力が私を襲う。 目の前に広がる狭苦しい景色がまるで幻想であるような感触さえ覚えた。 4 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 21:58:27.38 ID:XAMO4Drr0 おそらく私は救いを求めていたのだろう。 ここに来ることで、自分の内面的な変化が生じることに期待していたのだ。 そうすることで解決の糸口が見出せる……そう、信じ込んでいる部分があった。 だが、私は何も見ることができなかった。 今になって後悔する。 自宅の写真の一枚ぐらい、持ってくればよかった。 ……だが、自分に対する別の見方も浮かんでいた。 もしや自分は懐古したかっただけではないか。 あの頃、当たり前のように得ていた日常を取り戻したかったのではないか。 私は単純な事に、今更気づいたようだ。 結局、自分は受け入れてくれる場所を求めていたのだ。 そのためにタイムマシンを作り、あまつさえ未来に飛んだ。 そこにはもしや、楽園が広がっているのではないかと想望していた。 そしてそれは、しょぼんさんとバーボンハウスによって少しばかり叶えられた。 5 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 21:59:01.43 ID:XAMO4Drr0 彼は私に安らぎを与えてくれた。 私は甘え、あまつさえ虚言を吐いてまですがろうとしている。 そしてそのうち、娘が殺されていることを知った。 葬式に出たわけでもない、彼女の墓がどこにあるのかも知らない。 それを、贖罪という大義名分を振りかざして横やりを入れようとしているわけだ。 なんと情けないことだろう。 それをしたところで誰も喜ばない、むしろ嘲られるのではないか。 しぃはどこにいるのだろう。 そんな疑問が浮かんだ。 彼女に謝罪したかった。 自らの行いを悔い、許しを請いたかった。 しかし彼女がどこにいるのか、見当も付かない。 それに、彼女は今の私の姿を見てどう思うだろう。 受け入れてくれるとは思えない。 老いてもいない私は、彼女の目にはゾンビのように映るのではないだろうか。 6 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 21:59:54.10 ID:XAMO4Drr0 ( ,,゚Д゚)「ん、お前はモララーじゃないのか」 背後から肩を叩く者が一人。 そこにギコが、創痍した表情で佇立していた。 ( ,,゚Д゚)「何をやってんだ、こんなところで。       駐車場なんかを眺めてよ」 ( ・∀・)「いえ、別に」 ( ,,゚Д゚)「ふうん……ああ、そうだ、一つ二つ聞きたいことがある。       あれから、しょぼんは何か喋ってくれたか?」 私が首を振ると、彼は肩を落とした。 予想通りだったのだろう。 そうかい、と呟くがあまり落胆したようには見えない。 ( ,,゚Д゚)「もうすぐ二ヶ月になるが……       このまま永遠にだんまりを続けるんだろうな」 私は一つ、画策する。 この男から、何か情報を引き出すことはできないか、と。 7 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:00:25.66 ID:XAMO4Drr0 そこに最早贖罪は関係ない。 ただ好奇心による追究。その方が気分的に楽である。 開き直り、と誰もが言うだろうが、それでもいいと思った。 ( ・∀・)「あの、よければ事件についての情報を教えてくれませんか?      いえ、特に意味はないのです。ただ、知っていることが多いほど彼からも聞き出しやすいと思いまして」 するとギコは、特に怪しむこともなく口を開いた。 彼も、情報に枯渇しているのかもしれない。 ( ,,゚Д゚)「まぁ大体は報道されてるだろ。       本来ならすぐに解決できそうなんだが、発生時刻や場所が悪い。       目撃者がいないんだよな。       一度目の女は然り、ホームレスにしてもわざわざすみかに近づく奴もいないだろう?」 彼の言葉に適当に相づちを打つ。 頭の中は、情報を整理する作業で必死なのだ。 ギコが歩き始めたので、私も歩調を合わせた。 8 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:00:56.35 ID:XAMO4Drr0 ( ,,゚Д゚)「それに証拠も乏しいんだよな。       現場に凶器が落ちていたわけでもない。       返り血を浴びた可能性は高そうだが……       何せ闇夜だ、通りすがっても気づかれない可能性が高い」 聞いているうち、私は言いようのない空気に怖じ気づき始めていた。 なぜ、この男はここまで私に語ってくれるのだろう。 最初は、単純に情報が欲しいのだと解釈していた。 しかしどうもそれだけではないようだ。 私は、古き時代に見たサスペンスドラマを思い出す。 大抵、そこには警察と関係のない人物が登場し、事件のことを聞き出す。 そういうとき、刑事は何を意図して情報を明かすのか。 一つは探偵などを信頼している場合。 一つはコメディチックに脅されている場合。 もう一つは、刑事自体が情報に枯渇している場合……今のギコのように。 そしてそういう場合、刑事はすべからく事件に異常な前に固執しているのだ。 ( ,,゚Д゚)「だがな……一つだけ、犯人の落とし物があったんだよ」 9 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:01:44.79 ID:XAMO4Drr0 ギコは私に、一枚の写真を差し出した。 そこに、小さなストラップが映し出されている。 デフォルメされたクマのついた、かわいげのあるものだ。 ( ,,゚Д゚)「二度目の殺人現場で発見された。       ま、残念ながら犯人の痕跡を見つけることはできなかったが。       ただ、少しばかり年齢層を絞り込むことができる」 ( ・∀・)「そんなもんですかね」 興味なさげに返すと、彼はそれを大事そうにポケットにしまいこんだ。 ( ・∀・)「しかし……そんな大切そうな証拠を、刑事個人が勝手に持ち歩いていいのですか?」 ( ,,゚Д゚)「厳しいことを言うね」 ギコはただ苦笑し、答えるということをしなかった。 いよいよ私が抑えきれぬ疑問を抱いたところで、彼は「さてと」と呟いた。 ( ,,゚Д゚)「そろそろ、署の方に戻る。       あんまり勝手な行動をしていると、うるさく言われるからな」 10 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:02:17.83 ID:XAMO4Drr0 ( ・∀・)「待ってください!」 一礼して立ち去ろうとするギコを慌てて呼び止める。 彼は柔和な笑顔で振り返った。 ( ,,゚Д゚)「何か、問題でもあるかい?」 ( ・∀・)「いえ。ただ、気になるのです。      あなたの、この事件に対する固執のしかたが、少し異常に思えて」 くだらない。 そう言いたげに、ギコは再び私に背を向けた。 そして、今度は止まらずに歩き出す。 ( ,,゚Д゚)「その理由は、気づいているはずだ。       お前の眼が、そう言ってるよ」 数秒後、我に返った私が彼にその意味を問いただそうとしたとき。 すでに、彼の姿は曲がり角の向こうに消えかかっていた。 □□□□□□□□□

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