122271 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

うずらの小部屋

うずらの小部屋

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2007.07.04
XML
カテゴリ:TS小説
「その、本当に、何もない、ですから」
無駄かもしれないと思いながらも、もう一度否定してみる。
「本当に?」
「はい」
「本当の本当?」
「は、はい」
オレ、別に悪いことしてないよな?
さっきからこの人、視線を外さない。
じーっと目を覗き込んでくる。
何もやましいところがなくても、ずっと見つめられたら気まずい。
つい、あさっての方向を向いてしまった。
「目が泳いだわ!」
「はぁ?」
途端に鬼の首をとったかのように騒ぎ出した。
何言ってるんだ、この人は。
展開についていけず、思わず素が出てしまった。
隅で小さくなっていた真人が、驚いたようにこっちを見た。
そりゃ、オレだって姉貴がそんなリアクションしたら、何かあったかと心配する。
「嘘つきは見つめられたら、視線をそらすものよ。いい? そもそも……」
真人を観察している間も先生の講釈は続く。
オレは聞く気がないから、独り言を言っているのと同じだけど。
今気にしないといけないのは、先生より真人だ。
さすがに自分の立場がマズイってわかっているんだろう。
背中を丸めて、困った顔をしていた。
でかい図体に似合わないその仕草を、不覚にもちょっと可愛いと思ってしまった。
飼い主に叱られて、うなだれているゴールデンレトリーバーに似ている。
これが世に言う、ギャップ萌えとかいうヤツだろうか。
「つまり、あなたは嘘をついている!」
ぼけっと真人について考えていると、いつの間にか演説が終わっていた。
先生がビシッとオレを指差して、決め付けてきた。
人を指差すなって子供の頃に教わらなかったのか。
失礼な。
「胸を揉んだり、キスしたり、色々したに決まってるのよ!」
と、今度は真人を無遠慮に睨みつける。
そんなことまで断言されても。
実際には何もやましいことなんてないくせに、真人は俯いてしまう。
それがさらに先生をエスカレートさせた。
「それだけじゃ済まないんじゃない? 変な写真でも撮って、脅すつもりでしょう!?」
もし姉貴なら、このタイミングで動けるわけがない。
でも、我慢の限界だった。
別に真人だから、とかそんなんじゃない。
ただ単に、下世話なこの女に腹が立っただけ。
怒鳴りつけないだけでも、褒めてほしいぐらいだ。
「ほんとうに、何もされてません」
ベッドから降りて、二人の間に割り込む。
特に意識してなかったけど、結果として、先生の目から真人を守る形になった。
「姫井……」
すがりつくような声が背中から聞こえてくる。
情けないと思うものの、この女相手がなら仕方ないかもしれない。
オレだって攻められる側だったら、真人と同じようになっていたかもしれない。
人の話、全然聞かないし。
とにかく、誤解を解かないと、な。
「なんでそんな人を庇うの? あ、やっぱり脅迫されてるのね」
「されてません」
「じゃあどうして? 変なことされたのに……」
ダメだ、この人。
当事者が何もされてないって言っても信じようとしない。
こうなったら、ごり押しだ。
「されてません」
「だってさっきは」
「何のことですか?」
続きを言わせない。
オレの剣幕に押されたのか、態度にひるんだのか。
先生が言葉に詰まった。
このまま主導権を握ってやる。
「さっきは……何かありましたか?」
「だ、だって、悲鳴が」
「悲鳴? 聞こえた、幸田君?」
振り返って真人に尋ねる。
目が合うなり、オレの意図を察したらしい。
力強く否定してくれた。
さすがに地元では名前の知られた学校に通ってるだけはある。
「いや、全然」
「と、いうことです」
「ちょ、ちょっと、待ちなさい! だって私は」
「気のせいです」
「センセー、疲れてんじゃないスか?」
真人も調子に乗って責め立てる。
意気消沈していたのがウソみたいだ。
でも、いじめるのが目的じゃない。
それ以上真人が挑発する前に、退散することにした。
とにかく、先生の誤解を解くという目標はクリアできただろうし。
「幸田君、行こう」
「え? あ、ああ」
ぐっと真人の腕を引っ張って、出口に向かう。
もっと責めるつもりだったみたいだけど、素直にオレに従った。
先生もオレたちを止める気力はなくなったようだ。
……ちょっとやりすぎた、かな。


保健室を出て、角を曲がったところで真人が口を開いた。
「いや、驚いたぜ」
「え?」
「だって、まるで別人じゃん? 普段の姫井見てたら、あんな風に誰かに向かっていくなんて想像できないって」
「あ、うん」
たしかに。
血が上っていたと言っても、うかつだった。
どうやってごまかそう。
今日はムダに脳みそ使う日だ……。
話をずらそうと思っていると、真人自身が路線を変えてくれた。
「なあ……昼休み、時間取れるか?」
「だ、だいじょうぶ、だけど?」
なんだろう。
やけに真剣な顔をしている。
「じゃ、屋上で待ってるわ」
「う、うん。行く、ね」





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007.07.04 22:33:18
[TS小説] カテゴリの最新記事


PR

Calendar

Keyword Search

▼キーワード検索

Category

カテゴリ未分類

(0)

TS小説

(32)

ひとりごと

(9)

お知らせ

(4)

Comments

=うずら=@ 下から二番目さん わざわざ恐竜くんまで……。 この作品が一…
下から二番目@ ふにゅ・・・(ちょっとぷれっしゃ~) To うずらさま まったりとおまちくだ…
=うずら=@ 下から二番目さん わ、ほんとですかー? 期待していいんで…
下から二番目@ (*^-^*) ふに~。 はぐ~♪ うずらさんのために…
=うずら=@ 下から二番目さん いえいえー。 来ていただけてることが分…

Favorite Blog

まだ登録されていません

© Rakuten Group, Inc.