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Name's Story@書家香玉のうずまき帖

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2007.05.29
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週末、由布院で開かれた文化記録映画祭に参加してきました。
ドキュメンタリーの秀作が3日間にわたって上映されたこの映画祭
今年で10回目を数えるそうです。今回、縁あって私は
二日目のプログラムのテーマ「炭坑」の中で、
1954年に日本炭坑労働組合によって作られたという貴重な無声のフィルムに
生で語りをつけさせていただきました。
朗読の仕事は長年の夢でしたので、とても嬉しく、また
故郷・筑豊の歴史に関われる仕事ができたことに感激しきりでした。
DSC02982.JPG
46枚あるフィルムには
地の底で命がけで働く炭坑労働者たちの様子が
精巧な人形劇となって映し出されており
9人の登場人物の台詞とナレーションをはさみながら
ストーリーを紹介していきました。

これまで、なるべく感情を抑え淡々と読むことを求められる
ニュース番組のナレーションを中心に仕事をしてきた私にとって
お芝居の台詞を読むのはまったく初めてのこと。

最初はなんとなく気恥ずかしく、思ったような声が出せませんでした。
頭でイメージするのと、実際に声を出すのとは大違い。
しかも登場人物9人のうち、7人が男性です。
年配のおじいさんから血気さかんな青年、いばりんぼの上司に
なんといっても主人公である、千次という名の、物静かで生真面目な
男。その男が最後には、喜びをみなぎらせて大笑いするというのが
感動のラストシーンです。
笑う演技も、もちろん初めて。しかも男性の笑い声。
滅多に笑わない男の笑い声とは…
ああでもこうでもないと、ここ一ヶ月ほど、頭の中は常に
そのことでいっぱいとなり、誰もいない昼間はもちろん
家事をしながら、突然に笑い声を発したり
「ええくそっ またノミがつまってしもうた!」と怒りを
爆発させてみたり、ほんとうに変なおかあさんでした。
5歳の息子は…案外、楽しそうで、そのたびに大爆笑。
「もいっかい言って~」とのリクエストもいいお稽古のひとつ
になりました。

間に、「すすめ~すすめ~団結かたく~」と高らかに
普段、耳なじみのない労働歌をうたうシーンもあるため
原曲を携帯電話の着信音にしたりして、常に聴くようにし
頭にインプットしていきました。
マーチのリズムで気分も盛り上がり…息子もすっかり
お気に入りの一曲に。


今回、この絵ばなしの原作者である記録作家、上野英信さんの遺志を
受け継ぎ、息子さんである朱さんが、その台詞ひとつひとつに
込められた想いを丁寧に解説してくれました。
どんなに心強かったことか。
朱さんにチェックをしていただきながら、約一ヶ月。
ついに、みなさんにお披露目する日がやってきたのでした。
DSC00247.jpg
今回の幻灯上映をプロデュースしてくださった
上野 朱さん

石炭によって支えられてきた日本の近代化。
遠い過去のこととして、忘れられていくばかりですが
その時代がなければ今がなかったことを
時々は思い出し、その歴史に触れる機会を大切にしたいものです。

今回の映画祭に組み込まれたプログラム「炭坑」
いったいどのくらいの人が来てくださるのだろうと
想像もつきませんでしたが…
素晴らしかったです。
たくさんの人たちが関心を持って、心静かにスクリーンの前に
座ってくださいました。

その様子を見て、私は緊張どころか
嬉しくて嬉しくて、とても高揚した気持ちで
それぞれの役になりきって、約20分間
語りを続けることができました。
私はだいたいが、あがり症で、それを克服すべく
自分にムチうちいつも仕事をしているのですが
今回はなぜか不思議なくらい、まったく緊張せずに
すらすらと言葉が出てきました。
みなさん、どうぞ、見て聴いて~という気持ち。
それくらい、この幻灯自体がほんとうに素晴らしく
たくさんの人に知って欲しいという気持ちの方が
勝ったのだと思います。


無事に終えて、自然と拍手がわきあがり
すうっと体の力が抜けました。
心地よい疲労感、脱力感に包まれ、朱さんがガッツポーズ
「こげな嬉しいことは近頃ないばい」という
劇中の台詞そのままの気持ちでした。


上映中は、映写室の中でしたので
終わった後にいろんな人が、こんな若い?女性がひとりで
語っていたなんて!と声をかけてくださいました。
今日のゆふいんを作り上げた名士、亀の井別荘の
中谷健太郎さんにも
「いやいや~ あの労働歌。懐かしかったなぁ
 まさか、ほんとうに歌ってくれるとはなぁ」と
笑顔で言われ、本当にうれしかったです。

DSC00245.jpg
上映後に行われたトークショー
上野朱さんと、「炭鉱」の写真集がデビュー作となった、写真家であり
映画監督の本橋成一さんのお話も聞き応えがありました。



その夜の交流会も実り多いものとなり
由布院温泉にも浸かって、右手の傷をいやしつつ
本当に、言葉ではいい尽くせない収穫のあった
由布院滞在でした。














最終更新日  2007.06.08 00:26:47



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