懐かしの家族HP

2004/09/12(日)15:13

破局と再会シリーズ・教習コース変更計画

回想とノロケ(12)

電話があった。 夕子「夕べ、一週間の仕事が終わってね、ホッと一息ついてたら、眠くもならないうちに、時間を過ごしてしまったの。それから思い出して書き込みしようとしたら、メンテナンスになっちゃってて、がっかりしたわ。どう、元気 ? 」 私「おかげさまでと言いたいとこだけど、あんまり元気じゃない。心配させてはいけないと思ったけどね、お前さんにはウソをつきたくなかったから、・・多分こないだのことが原因だと思うけどね、どうやら失恋の傷を受けたのは俺のほうみたいだ」 夕子「・・・そう。わたしはすこぶる体調も万全・・って言いたいとこだけど、実はあなたと同じで、このところ食欲ないの。ううん、体は、あの特にメニエルなんてのは、いいあんばいに出ないから、心配しないでね」 私「そうか、良かった。食欲なんてのは、時が来れば出て来るよ。俺たち、別に憎み合って別れたんじゃないんだから。ところで朗報があるぞ」 夕子「何 ? 聞かせてッ」 私「鉄人ジオラマ2がようやく終わったんだ」 夕子「それが朗報なの ? 」 私「ハハ、不満そうだな、興味のないことには。ま、聞けよ、話はこれからだ」 夕子「わたし、興味なくはないわよ、あなたのジオラマシリーズも全部見たし、だって何よりあなたに勧められて見た東宝の戦争映画の特撮にひかれてしまったのよ。偏見持たないで下さい」 私「お、元気が出たな。お前らしくていいや・・・」 夕子「あなた、泣いてるの・・ ? 」 私「もう、このところ泣いてばっかり。ん、もおって言うと、お前の得意の口癖になるけどな」 夕子「バカっ。って言うのも久しぶりみたい・・・」 私「なんだ、泣くのがお前にもうつっちゃったな。あ、そうそう朗報ってのはね。お前の合成加工画像のジオラマ、想科良次さんが、俺の名義のホームページに掲載してくれるって話」 夕子「ほんとうに ! ? 良かったあ。そのかた、優しい人ね」 私「ああ、この世にもう二人と巡り会えないいい人だ。ホントは鉄人3の予定だったんだけどさ、急なことでこんななっちゃって、それでも掲載してくれるんだ。俺もさすがに断わられても仕方ないと思ってたんだ」 夕子「ふうん。あなた、いい人とパソコンで知り合ったわね。そこへいくと、わたしなんか・・」 私「夕子、悪かった。でも、二人の記念のジオラマだぞ。それにな、お前が独りのあいだは・・・俺な、無謀な決心したんだ。イヤならハッキリ断われよ」 夕子「何なの ? 決心って・・」 私「俺、お前が前の所に引っ越したら、やっぱりお前の所にお邪魔するかも知れない。迷惑かな・・ ? 」 夕子「やだぁ・・。なんでそれ早く言ってくれなかったの。あなたってそういうとこ、イジワルなんだから・・。だいたい、住まいも知らせるなって言ったの、あなただったでしょ」 私「じゃあ、たまに訪ねるのはいいんだな。さすがにしょっちゅうってことになると、結局お前に迷惑がかかるからな。出来れば月一くらいっての、どお ? 」 夕子「やだぁ。それじゃ前とほとんど変わらないじゃない・・うぅっ・・・・・」 私「迷惑じゃない ? 」 夕子「ん、もおバカっ。私泣いてるのよ・・・うれし泣きに決まってるでしょ・・」 私「ただし見合い・・」 夕子「それ今は言わないで・・ ! それに・・もしかすると、わたしこのまま、おばあちゃんになってもいいって思い始めてるの。そんなのわたしの勝手でしょ。ねえ、あなたッ ?」 私「・・・・・」 夕子「ん、またイジワルね。わたし、おばあちゃんになって、顔もしわだらけになって、もちろん仕事からも退いて、もう毎日が休日よ」 私「待ってました。それ・・」 夕子「老婆(ろうば)の休日って言いたいんでしょ。でも、しわだらけのおばあちゃんじゃあ、気持ちが悪いでしょ ? 」 私「もうお前の顔にはとっくにあきたよ」 夕子「ええッ、ひどいこと平気で言うのね・・」 私「俺が今まで見ていたのは、キザだけど、お前の心の顔だよ。いくら美人だってお前の顔そのものは高校時代の顔さんざん見て、とっくに飽きてたの ! 」 夕子「ふんッ、やっぱりイ・ジ・ワ・ルっ ! 」 いい雰囲気のまま、電話を切った。ここからシリーズ始まり。 今だと、例えば性行為を一度した程度で、既にお互い離れがたい仲になったと思うのは、勘違いも甚だしいとテレビか何かで聞いたことがあるが、こと私たち二人に限って言うならば、唇を軽く触れただけのキス一つで、もうお互いが固いきずなで結ばれたかと言うと、やはりそうでもなかった。ハハハ、ふざけた書き方。 あとでわかったことだが、実は彼女、夕子には、ややムードが高まると、割合簡単に唇を求めて来るという、男にとってはとてもうれしいかどうかわからないが、まあうれしくなくもない妙な習慣があった。俗っぽい言い方をすると、キス魔というやつだ。 だからと言って、のべつ唇を重ねたわけではない。だいたい、前日書いた河川敷でのことにしても、あの時、工事車両が行き来していたし、人影が全くないわけではなかった。 二人とも腰をおろした姿勢だったから、周囲からの死角がたまたま出来ただけだった。 それでも私はその日の帰宅後、もうずっとあの場面と感触が脳裏、体中に焼きついて、どうしようもなかった。母が「何ニヤけてるの ? 」と、非難の目で問うたから、これはいけないと、顔つきをキッと引きしめなければならなかった。 困ったのはふとんに入ってからだった。枕元にはテレビとビデオデッキと、かなりの本数のアダルトビデオのダビングテープがあったし、ついでにみっともないことを書くと、ティッシュの箱も常備しておいた。 土曜日までは別の切ない思いからなかなか寝付かれなかったが、日曜の夜はまた別なる思いから、やはりなかなか寝付かれなかった。 それでもこのまま寝るべしと、己れに言い聞かせようとした。 ところが手がティッシュに伸びそうになる。今夜はアダルトビデオは不要だ。昼間のことを思い描くだけで充分だった。 このあとどうしたか、もはや思い出せない。とりあえず理性が勝っておとなしく眠りに落ちたことにしておく。 私の生活は一変した。何より頭の中の私生活が一変した。それまでは一日刻みに家庭教師に出かけることを意識した生活だった。 だが、先日の日曜を境に、頭の中の生活サイクルは、週刻みとなった。「♪もう幾つ寝ると日曜日、日曜日にはキスをして、も少し進めばうれしいな、早く来い来い日曜日」などと、不届きな替え歌を頭の中で歌ったり、あたりに人影がない時は、か細い声で本当に鼻歌を歌ったりした。 持てないおバカ男の生活になっていった。寝ては夢にまではならなかったが、覚めてはうつつというように、始終娘の顔を、それも以前と違ってカメラで言うといきなりズームアップした顔を思い浮かべては、独り悦に入るという、どうしようもない精神生活となっていた。 その気持ちが行動を促した。 「そうだ。右左折の練習に、あの河川敷ではもう狭い。もっと広い適当な所はないか」と別なるコースをさがそうという気持ちになった。月曜の朝はそれまでからは考えられぬくらい早起きした。 私の朝食が遅い習慣なので、そんなに早起きしても、まだご飯はしたくしてなかった。 私はカワサキの250ccバイクを安物のビニールの車庫から引っ張り出すと、家庭教師コースをしばらく走りながら、見覚えのある「富士ハイツ」という小高い場所を目指した。 今もこの名の施設はあるが、当時「富士ハイツ駐車場」と呼ばれた場所は現存しない。のちに富士常葉学園という大学の立派な校舎が建てられて、駐車場の面影は全くなくなった。 今と違って治安が良かったのかどうか、わからないが、富士ハイツの駐車場は、終日開放されていて、深夜でも車が止められたし、場合によってはひそかなデートスポットとして利用も出来た。私ものちに利用した。 そんなことは今はどうでもよい。ほれた夕子ちゃんのためなら、たとえ火の中水の底といった心境で、富士ハイツに着いた。 「良し、ここに決めた。♪決めた、決めた、お前の教習に・・」などとらちもない替え歌ばかり歌っていたが、ここは日曜ともなると、家族連れでにぎわい、弁当持参で、親子で遊んだり軽いスポーツに興じたりする場所にもなっていた。子供に気をつければ、絶交の新しい教習コースになる。 教習の次の段階、次の段階の構想は既に練っていたから、再びバイクを走らせると、今度はある文具店に向かった。右左折はすぐに習得する。次はスラローム走行だ。これには工事現場にある円錐形のパイロンというものを使わなければならない。初め、あちこちから盗めないものかと考えたが、屈強の男たちにボコボコにされるおそれを感じたから取り止めた。そこで自作することにし、文具店に足を向けたのだった。 「円錐形はむつかしい。要するに何か柱の形のものを作れば良い」と考えて、厚ボール紙をたくさん買った。更にバイクをジャンボエンチョーという地域最大の日曜大工、DIYの店に向けた。柱の底に接着する重り代わりの板を買うためだ。リュックに入る程度の板を出来るだけ買った。 ところが帰宅した私は、ボール紙を適当に丸めているうちに「やっぱり本物に似せなきゃ」と思い立って、無理やり円錐形を作った。そしてテープで仮押さえをしておき、あとから粘着テープできつく固定し、何とかパイロンそっくりのものを作った。おかげでボール紙が足りなくなったので、再び文具店に行って、今度は更にたくさん買って来た。 底の部分に板を接着すると重心が安定した。 だがたくさん作った自製パイロンを運ぶ手段がなかった。私は普通免許を持っていなかった。バカは全く困ったものだ。作ったパイロンは中が空洞だから、重ねれば何とかなることに気づいた。 日曜日がやって来た。午後の家庭教師が終わるといよいよ彼女を新コースへ案内すべく、彼女の下宿へ向かってバイクを走らせた。と、言いたいところだが、前回の経験から、彼女が進んで富士駅まで電車で来ることを申し出てくれた。時間節約だ。私は待ち合わせ場所の富士駅へ急いだ。

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