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テーマ:今日の出来事(289260)
カテゴリ:きょうのできごと
11年前のちょうど今頃、ある途上国に上司とともに出張した。 同じメンバーで以前にもこの国に来ているので、首都の空港から市内に向かう車の中でも終始リラックスムード。前回はこんなゲテモノを食べた、今回はどんな珍しいものが食べられるか、みたいな話で盛り上がってた。
翌朝、上司は半身を起こして軽口をたたくまで回復した。検査の結果がでて、虫垂炎、かなりひどいので早く切除しないと、との診断。上司はここで手術を受けるより日本まで帰って治療を受けたい、と言う。そりゃそうだ。だれが好き好んでこんな衛生事情の悪い国のしかも一番奥地で、盲腸とはいえ腹を切られたいものか。 それから電話局へ行って日本のご家族に連絡。「大丈夫です、しっかりしていらっしゃいますからご安心ください。。。」 本当に自分もそう信じて奥さんに言ったんだけど。
血圧がどんどん下がる。 意識が遠のき、昏睡。 血圧がもう測定できないくらいまで低くなっている。 敗血症。
夕方、外はバケツをひっくり返したような大雨、屋根をたたく雨粒が大音響をとどろかす。
心停止
医者が馬乗りになって蘇生術をしている。
3分、5分、10分
目の前で起きていることが理解できない。取り乱してずっと叫び続けていた。
急に雨がやみ、静寂がやってきた。
それから5日間ぐらいのことはよく覚えていない。でもほとんど眠らずに、役所と警察の手続き、事情聴取、日本から来るたくさんの人の受け入れ、お別れの会の手配、そしてご家族への説明。心が死んだ状態になって、感情が高ぶることもなく淡々とこなしていった。 上司とご家族が帰国されて、後片付けもおおかたすんで、一人でエレベーターに乗っていたときに、急に涙がぼろぼろぼろぼろ出てきてとまらなくなった。 わたしが、いくつかあった決断の、どれか一つを変えていれば、こんなことにならなかったのに。どうにもならない後悔。いくら謝罪しても、何にもならない。自分が死なせたんだ、という重すぎる、取り返しのつかない現実。 毎年七夕は、あの日のことを思い出し、同じ悲劇を繰り返さないよう心に命じる。それがわたしにできる、唯一のご供養だから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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