ENZO RANDISI

ENZO RANDISI
その頃岡山のそのレコード屋はいつ行っても常に人が入っていて活気があった。
店長のHさんは本当にJAZZを愛している方で、お客からいつも頼りにされていた。
私も毎週の様に顔を出して、仕事の息抜きに30分くらいジャズ話をしてその都度新着のCDを2,3枚買っていた。そうそう、その頃は、最後のアナログ復刻と名打って
各レコード会社がこぞってLPレコードをリリースしていて、多いときは20枚くらい
注文分がたまってしまい、よく取り置きしてもらったことを覚えている。
そのうえにまた新たに注文するのを、嫌な顔ひとつせずにきいてくれた。

1992年の春先、なにげなく新着CDをチェックしていた中にSPLASC(H)の新作が何枚か入荷していた。購買意欲をまったくそそらないジャケット。
裏面にひっくり返さなかったらおそらく買っていなかったであろうこのCD.
曲目に目がいった。WHEN I FALL IN LOVE,MY FOOLISH HEART,POOR BUTTERFLY,THE SONG IS YOU,CON ALMA,ESTATE,EVERYTHING HAPPENS TO YOU,
ふーん・・・なかなかええ曲やってるやんかぁ・・・

とりわけ、ESTATEが目をひいた。その頃ESTATEに目がなかった。いや、今でも大好きな曲でこの曲がはいっているアルバムはついつい買ってしまう。

そして、ピアノがSALVATORE BONAFEDEであることで買いが決定。
ボナファデのピアノはジェリー・バーガンジィーの諸作やジョー・ロバーノが参加した初リーダー盤で評価していたからだ。

すぐにポータブルCDプレイヤーで再生した。
一曲目、TEN YEARS AFTER これからいい演奏が続くことを予感させるような
序章ともいえる短いが、良いメロディーの曲。
エンゾ・ランディシのVIBは端正でありながらスインギーで、べとつかない叙情性も
もちあわせた味のあるプレイで滋味深い。

このアルバムは1981年以来吹き込みがなかったランディシの10年ぶりのリーダー作でそこから10年後というタイトル名がついたらしい。
ボナファデも期待にそぐわぬ好プレイに終始し、アルバムの価値を高めている。

アルバム全体をおおっているそこはかとない叙情感、ペーソスといったものは、
何故か考えてみると、答えは演奏曲にあった。

チェット・ベイカーにちなんだ曲を選んだとライナーノーツに書いてあったのだ。

ENZO RANDISIは昨年、MISTER VIBES PLAYS MILT(PHILOLOGY)題名通り今度は
ミルト・ジャクソンに捧げるアルバムをだして元気なところを10年ちょいぶりにみせてくれた。私は残念ながらまだ未聴なのだが、近いうちに是非入手しようと思っている。

そのレコード屋には、その後3,4年通い続けたが次第に足が遠のいていった。
店長のHさんはその後独立されて、現在岡山の表町商店街でJAZZメインのショップを経営され、岡山のJAZZシーンを相変わらず牽引されていると伝え聞く。

もともとの老舗のその店は去年残念なことに倒産して、今はもうない。




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