週末JAZZ

SAXOPHONE SUMMIT

SAXOPHONE SUMMIT
このプロジェクトはデイブ・リーブマンが始めてから3年以上不定期ではあるが、
継続されていて、今回やっとレコーディングがされ、ライブを観ていないファンにその内容が明らかになった次第である。
リーブマン自身の他のサックス奏者との競演は、これまでも結構あって、
古くはエルヴィン・ジョーンズ/ライブ・アト・ライトハウスでのスティーブ・グロスマンとの競演、ライブ・アンダー・ザ・スカイ、コルトレーン・トリビュートでのウェイン・ショーターとの一騎打ち、最近では、マウリッツォ・ジャンマルコとのSOULNOTE盤、ドン・ブライデン、ダン・モレッティとのスリーテナーによるWHAILING CITY盤、ペーター・ウェットレとのHOUSEHOLD盤など同業者との作品が
多いミュージシャンといえよう。
今回のレコーディングも、
学者肌のリーブマンがセッティングしたステージ、録音ということもあって単なるブローイング・セッションに終わっていない。

現代のサックスシーンは、大きく二つの流派に分けることができる。
最も黒人のサックス奏者は基本的に除外しての話ではあるが・・・
その二人が、すなわち、マイケル・ブレッカーとジョー・ロバーノである。

70年代中盤から急速にシーンの中央に踊りでたマイケル・ブレッカーはその驚異的なテクニックによって独自のスタイルを築き、同世代、それ以降のサックス奏者に大きな影響をあたえるようになっていく。
俗に言う3人のボブ、すなわちボブ・バーグ、ボブ・ミンツァー、ボブ・マラックとの相互影響はもとよりラリー・シュナイダー、ウォルト・ワイスコフ、リック・マーギッツァ、ジョー・フラム、ヨーロッパではほとんどそっくりなオーベ・インゲマルソン、ラルス・モラー、トーマス・フランク、日本では清水靖晃、佐藤達哉など演奏スタイル面での影響は計り知れないものがある。

一方、ジョー・ロバーノも70年代から活躍していたが、名前が知られていくのは
マイケル・ブレッカーに遅れる事約10年、1980年代半ば、ポール・モチアンのECM盤や自己名義のリーダー盤やサイドメン参加作がSOULNOTEなどのヨーロッパのレーベルからでるようになってからである。
その頃からサックス奏者であった父親から譲り受けた木製のマウスピースで独自のあの野太くてやや高音部になるとややかすれる特長のあるサウンドを出し、マイケル・ブレッカーとはまったく違ったアプローチが次第に注目されていくようになる。90年代になるとBLUENOTEと契約し、その頃から台頭してきた若手ミュージシャンに尊敬の念を受けソロのスタイルよりむしろ音楽に対するアプローチ、サウンドメイキングの方法といった面から影響を及ぼすようになっていく。
ブルックリン派とも呼ばれているクリス・ポッター、クリス・チーク、シーマス・ブレイク、ビル・マクヘンリー、ダニー・マスキャリン、ノア・ベッカー、やジョシア・レッドマン、マーク・ターナー、トニー・マラビーにまでその影響を及ぼしていると感じるのは私だけではないはずだ。

マイケル・ブレッカー自身70年代後半から80年代初頭(スリーカルテッツやステップス)の頃に比べて驚異的なテクニックによる鬼気迫るソロパフォーマンスの面において現在は次第に変化が見受けられるようになってきており、楽曲全体にあったサウンド面へのアプローチ、思索的な面を覗かせるようになってきていると感じるのは私だけだろうか? これぞロバーノからの逆影響と言わずして何と言えよう!
もっとも昨年の東京JAZZでのソロパフォーマンスでの「ネイマ」での演奏など
前人未到ともいえる圧倒的なウルトラテクニックによる超絶技巧な演奏だったのでライブでは、ますますソロ指向が高まっているのかもしれないが・・・

さてデイブ・リーブマンである。

リーブマンはテナーサックスを(レコーディングで)96年のダブルタイムレコードから「リターン・オブ・テナー」をリリースするまで10年以上休業していたこともあってこの二人と正面きって対峙することはしていない。
4曲目のコルトレーンの「ピース・オン・アース」はソロの回しがないバラード演奏であるし、リーブマン作の5曲目は、必要最小限のインタルードとリズムの構成を決めただけの、ソロ時においては、完全にハーモニー的にフリーな状態にした場をつくりだした曲である。ファーストソロのリーブマンはルパートで演じ、次のロバーノはアルトクラリネットで無調の演奏をする。最後のブレッカーはDSとの対峙がメインのパフォーマンス。
リーブマンのアーティスティクでプロデューサー的面が顕著にでた曲だと解釈しておこう。
マイケル・ブレッカーがコルトレーンの「メディテーション組曲」に触発されて書いた6曲目も3人によるハーモニクス奏法の合奏から始まり、コレクティブインプロビゼーションによるソロを経てテーマの合奏で終わるという構成の曲でソロの応酬は一切ない。
テナーを吹く曲においてはソロの応酬を意識的に避けているように思えてならない。 こう書くといかにもリーブマンが悪者の様で、歩が悪いように思われるかもしれないが、ソプラノサックスのフィーチャー曲1曲目から3曲目は最もリーブマンが目立っている。
ジョー・アレキサンダー(JAZZLANDの「BLUE JUBILEE」が有名)に捧げたロバーノ作の1曲目や7/4拍子のインタルードがついた2曲目(フィル・マコ-ウィッツ作)ではファナティックで自由度の高い演奏を繰りひろげ最も印象に残る。

長々と書いてきたがこの作品はポスト・コルトレーン世代の現代サックスシーンの巨匠3人が自らのルーツ(コルトレーン)と対峙し、それぞれが発展させてきた音楽性から解釈を試みた邂逅、文字通りサミットに出席した記録だと言える。

個人的にはヘッドアレンジのみの一丁上がり的作品を聴きたかった。
次のような曲目で・・・
「コンファメーション」「インビテーション」「インプレッションズ」「ジャイアント・ステップス」「ネイマ」モンクの曲「エピストロフィー」や「ルビー・マイ・ディア」リーブマン作で「ニューブリード」ブレッカー作で「ノット・エチオピア」ロバーノ作で「デューイ・セッド」あとエリントンやミンガスなどなど・・・
この3人ならばソロの場を与えるだけで十分素晴らしい作品が産まれると思うのですが・・・

いずれにせよソロ指向のブレッカーとサウンド指向のロバーノ、そしてソプラノにおいてその特異性を発揮し全体のお膳立て役を担ったリーブマン3人の現代最高峰サックス奏者が会したアルバムがでたのである。









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