翠の小瓶

2009/10/04(日)10:41

バケツリレー

オカメインコ(46)

昨日の夕方、買い物に出かけた。今日は楽をして、この秋はじめてのうどんすきにしてやろうと思う。先日、美味しい旭ポン酢をこちらでもゲットできたから。私は、このポン酢が大好物である。 全部荷物を自分のステーションワゴンに積み込んだとき、ふと、空がかなり騒がしいと思った。見上げてみると、カラスが何かを飛びながら攻撃している。食べる目的なのか、虐めなのか、かなり執拗に追いかけている。追われているほうは、白い鳥。鳩ほどは大きくない。どう見ても、オカメインコが飛んでいるように見える。 白い鳥は、家具屋さんの前にある、回廊に飛び込んだ。人通りが多いので、カラスはそこまでは追ってはこない。でも、目の前にある駐車場の照明の上で、悠々としている。そこに同時に止まっている鳩には、意地悪をしていない。 とっさに、白い鳥に向かって歩き出してしまった。 回廊には、やっぱり、うずくまる白い鳥が。やはり、ホワイトフェースのオカメ。どこかの飼い主から、飛んできてしまったのだろう。鼻のあたり、カラスにやられたのか、血が固まっている。半分、鼻がなくなっているかもしれない。さっきまでカラスに追われて必死で逃げていた反動か、今は私の目の前で、目を閉じたまま、動こうとしない。人通りはあるが、他の誰かが立ち止まるでもない。足は太くしっかりとはしているが、頭の羽はまだ短く、尾羽も短い。また、尾羽の模様もはっきりしている。体格はいいが、もしかしたら、まだまだ子供なのではと思う。ヒカルをお迎えしたときよりも、幼い感じがする。風きりばね羽もクリッピングされており、尾羽はとても短い。 もしかして、私は試されているのか。この小さな命を救えるのか、、、 このままでは埒が明かないと思い、さきほど買い物をした、日本食材屋に駆け込んだ。そこに、日本人女性従業員がおられたので、カラスに襲われたオカメインコが蹲っている、しかし、今は籠も何も持っていないので、捕獲することもできないと、相談してみた。 彼女は私と一緒にオカメのいるところまで、きてくれる。自分も動物を飼ったことがあるので、この小さい命をそのままにしておくことはできないと言ってくれる。彼女は、オカメのお腹あたりに手を出してくれたが、威嚇の声を出して、噛みに来る。まずは、ダンボール箱で、捕獲できないだろうかと話し合い、私はそのままオカメを見守り、彼女はダンボールと助っ人を連れて戻ってくると言ってくれる。 彼女は二人の男性とともに帰ってきてくれた。二人は、日本食材屋の従業員。彼らとは、英語でしか会話が通じない。男性の手には、小さめのダンボール箱、彼女は大きな情報誌を2冊持ってきてくれている。ダンボール箱を持っている男性が、"It's Cockatiel."と言う。この男性は、鳥のことを知っているなと思う。 一番初めに、私が長袖を着ていたので、手ではなく腕の部分をオカメのお腹あたりにあてるようにしてみたのだが、威嚇するのみで、腕や手に乗ってくる気配はない。次ぎに、段ボール箱をオカメにかぶせ、下から情報誌をインサートして捕獲しようとしたが、失敗。幸運なことに、オカメが疲れているのか飛ぼうとせず、歩くだけだったので、作戦変更。箱を立てて、そこに情報誌で2方向から衝立をつくり、箱の中に追い込むことに。こちらは、見事、成功した。 捕獲は成功したものの、このオカメ、どうすればいいのかということになった。食材屋さんでは、衛生面の問題から、お店に置いておくことはできないという。あとは、動物のシェルターにこの子を託すか。お店に置いておくことができなければ、私が預かると言ったが、その時には、結論は出なかった。まずは、お店にあるPCを使って、インターネットで飼い主から逃げた鳥を持ち込めるところはないか、探してみてくれることになった。私のほうは、捕獲されたオカメがろくに食べていないだろうと思い、買った食材を家に持って帰ってから、餌などを持って帰ってくると伝え、一度家に戻った。 冷蔵庫に食材を入れてから、ヒカルがお世話になっているお医者様に電話をいれ、迷子の小鳥を収容してくれる団体はないかと聞いてみた。教えてもらったのは、Mickabooという団体。とにかく、トップページをネットで探し、印刷してから、餌と水入れを持って、日本食材屋に引き返した。 食材屋では、先ほどの男性はレジに入っている。私の顔を見ると、お客さんが少ないので、店頭にあるPCのところまで連れていってくれる。自分がネットで探した団体や、自分が今までかかわりのあった団体などを調べてくれていた。でも、どちらかというと、犬や猫が中心で、鳥を扱っているところは少ないらしい。私がお医者様からもらった情報を喜んで、そのサイトも検索して、読んでくれている。 彼は、昔、動物のシェルターでボランティアをしていたことがあるという。迷子になった犬や猫は、1週間は生きて飼い主が現れるのを待つのだが、その後の運命は惨いものだったという。せっかく助かった命なのだから、同じような目にあわせるのには忍びないので、できるだけその団体のポリシーを読んでから、このオカメを託したいと言ってくれた。そのとき、オカメは食材屋の隣、もとゴルフ屋が入っていた空店舗に入っていた。 また、以前、彼はオカメよりも一回り大きなオウムを飼っていたことがあるという。今なら、自宅にはまだ籠もあるし、食べ物もあるという。私にも、現在どういう状況が聞いてくれる。もしも自宅で引き取るなら、これから籠を買うつもりだと伝えた。彼は、カラスがこのオカメを襲っていたのかと、聞いてくる。正直に、かなりつつかれて襲われていたことを伝える。せっかく助かった命、彼も助けたいのだろう。ここで、先ほどの女性従業員が登場。彼は、彼女と私に、今まインターネットで調べたことを伝えてくれる。どの団体も、もう動物をキープしている場所とお金がないらしい。飼い主が見つかるまでは、どうやら見つけた誰かが面倒を見るしかないようだ。 とにかく、オカメに餌と水を持っていくことに。彼女と彼に、仕事中なのに、申し訳ないと詫びながら、隣の店舗に入る。 オカメは、ダンボール箱の暗がりの中で、小さくなっていた。ペレットとシードをまぜて、小さい器に入れて箱に置いてやると、がっつくようにしてつついている。水は女性に頼んでくんできてもらう。ちょっとほっとして顔を上げたオカメをみて、彼は自分の自動車に戻りカメラを持ってくると、何枚か写真を撮ってくれる。これで、ちらしを作ってこの近くのお店やガソリンスタンドに貼れば、飼い主が出てくるかもしれないと言ってくれる。その後、暗い箱の中に閉じ込めておくのはかわいそうなので、彼はお店のプラスチックの籠を持ってきてくれた。ダンボールのふたの部分を切り取って、籠を逆さにしてくれる。これで明るくなって、少しはましだろう。はじめは、緊張していたオカメだが、よほどお腹がすいていたのか、餌をまた食べ始めた。 その様子にほっとしながら、私と彼、どちらがオカメを連れて帰るかという話し合いになった。彼のところには、今は鳥がいないが、経験もあるので、連れて帰るのはかまわないという。もしも、今までの飼い主に会えなかったとしても、その後も面倒を見てくれそうである。 私自身、オカメを飼ったのはヒカルがはじめて。複数のオカメと暮らすのはどういうものか予測がつかず、内心、どうすればいいのかとちょっと悩んでいた。彼のオカメに対する暖かな眼差しを見ていて、仮にもしも飼い主が現れなくても、この人とオカメが一緒に暮らせる様になったら、お互い幸せではないかと思う。「よろしくお願いいたします」と、彼に一礼した。 彼は、家に連れて帰ったあと、ちらしを作ってはったり、迷い鳥の情報を取り扱っている団体に連絡を入れて、できるだけ飼い主を見つけるよう、頑張ると言ってくれた。 あのオカメ、今ごろ暖かな家の中で目覚めただろうか、などと、今朝、上品なホワイトフェースの顔を思い出しながら考えていた。昨日は、私は試されているのかと思ったのだが、今日起きてみると、そうではないような気がしてきた。あのオカメは、やっぱり助かる運命で、私や、オカメを引き取ってくれた彼、そして機敏に動いてくれた彼女の手で、命のバケツリレーをさせていただいたのではないかと。 昨夜の、「ひとつ、命を救えてよかったね」と言ってくれた夫の言葉が、とてもうれしかった。 迷子になったオカメインコの情報です。もしも見かけた方がおられましたら、どんな些細な情報でも結構ですので、yacoppo@gmail.comまで、情報お願いいたします。

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