「スターリン 超大国ソ連の独裁者」中嶋毅著(山川出版社)
1878年(または1879年)に生まれ、1953年に死去したスターリンについて書かれた本。本書のカバーには次のように書かれている。・ロシア帝国の支配下にあったグルジアで靴職人の子に生まれ、社会主義ソ連の最高指導者となったスターリン。・彼はソ連国家をアメリカ合衆国と並ぶ超大国へと導いたが、それは反対者を容赦なく弾圧し国民に多大な犠牲を強いた長い道のりであった。・独ソ戦に勝利した偉大な指導者か、大量抑圧を推進した冷酷非道な独裁者か、スターリンに対する評価は今日も揺れ動く。・本書は、ソ連国家の確立と拡大に重ね合わせて彼の生涯を描き出す。読みながら、かなり不快な気分になった。国家のため、そして自分のために国民があると考える権力者に嫌悪感を覚えた。だけど、これが今の地球上にも存在していることに暗澹たる気持ちになった。自分だけのことを考えれば、共産主義の国に生まれなかったことを幸せと思わなければいけないと痛切に思った。思うに、思想を柱として成立した国家は、最初に理想を掲げてしまっているために、理想が実現できないことを覆い隠すための作業に追われながら道を踏み外していくことが常。革命運動家と自認する人たちが繰り広げる現体制への辛辣な批判は、他者を批判している間は正論に聞こえても、革命や政権交代を成し遂げた後に、言ってきたことを実現できた事例は見当たらない。革命や政権交代達成時には、熱狂的に団結していたとしても、共通の敵が消えた途端、思想の解釈、あるいは当初に掲げた理想と現実のギャップを巡って対立や責任の押し付け合いが起き、内部分裂へと突き進んでしまう。それでも、今も理想の実現に向かっているかのように大衆をだますため、反対派の口を封じ、排斥し、抹殺し、情報を厳しく統制していく。本書によればスターリンも、自分の地位を守るために、ライバルと怖れる人物に対し捏造した批判を展開し、自分の晩年まで逮捕と処刑を繰り返した。大規模な飢饉にあっても、農民が怠けていると筋違いな主張を曲げすに農作物の取り立てを続け、数百万の餓死者を出した。第二次世界大戦では2,700万人の国民が犠牲になった。それでもスターリンを偉大な政治家だと崇める向きもあることが不思議でならない。