12月のニュース
11月30日-12月5日 *グエンタンズン首相は南部のTien Giang省を訪れ、メコンデルタとホーチミン市を結ぶ高速道路の建設現場を視察した。更にCan Tho市も訪れ、ガスパイプライン敷設の起工式に出席した。高速道路は、BIDV高速道路開発会社が資金を出して建設し、34年間に渡って通行料を徴収して建設費用を回収する。ガスパイプラインは原油採掘公社が費用を出して敷設する。(訳者注:BIDV高速道路開発会社は、高級役人が出資して設立した民営企業である。役人が特権を利用して設立した民営企業は、既に10億ドル(1千億円)を動かせるほどの巨大企業に育っている。) *アメリカだけでなくヨーロッパ連合(EU)も、ベトナム政府の人権侵害を非難する決議をした。ベトナム外務省の報道官は、ベトナムでは憲法で人権が守られていると、ヨーロッパの非難に反論した。 *グエンミンチェット大統領はホーチミン市の有権者と会談し、先の国会の決議を報告した。多くの有権者は、国会では率直な質疑応答が行われ、非常に印象に残ったと感想を述べた。しかし一部の有権者は、政府は住民の土地を安い補償金で強制収用し、その土地を何年にも渡って放置し、住民の反感を買っている。国会は立派な法律を制定し、国民の不満を無くして欲しいと要請した。 *ASEAN諸国の女性国会議員の代表がハノイ市に集まり、男女平等や女性の地位向上について話し合った。女性のDoan副大統領も、大勢の女性国会議員と共にこの会議に出席した。グエンフーチョン国会議長は、会議の後で外国の国会議員と会談し、友好を深めた。 *Hung副首相は財務省の会議に出席し、来年の国家の歳入を増やすため、税金や関税の徴収額を5-10%増やすよう、全国の関係機関に指示を出した。国の経済を発展させるには社会基盤への投資が必要だが、それには金が掛かる。必要な資金を確保するために、税収を増やす必要があると語った。 *ハノイ市に、中越友好宮殿の建設が決まった。広大な宮殿の中には、事務所、ホテル、会議室など、様々な施設を建設する。敷地はベトナム側が準備し、宮殿の建築費用2160万ドルは、中国政府が提供する。 *運輸省は、ハノイ市を中心とする北部の自動車教習所54か所を調査し、不正に運転免許証を発行していた10か所を、営業停止の処分にした。法律によると、自動車の免許を取得するには50時間の教習が必要で、1時間当たり30万ドンの費用が掛かる。しかしこの規定は、ほとんど守られていない。 *ベトナム退役軍人協会が設立されて20年になり、ハノイ市で盛大な式典が開かれた。ノンドクマン書記長ら大勢の指導者が出席し、軍人は国家に大きな貢献をしていると賞賛の言葉を述べた。そして協会に、独立勲章を授与した。退役軍人協会は250万人の会員が居り、全国に16,000の支部がある。 *国会議員は出身地に戻り、地元の有権者に先の国会の決議を報告している。チェット大統領はホーチミン市で、チョン国会議長はハノイ市で、有権者と報告会を開いた。(訳者注:地元の有権者と言っても共産党の有力者で、一般の住民が大統領や国会議長と話ができる筈がない。書記長、大統領、首相は、国会議員を兼務している。) *前に日銀副総裁を務めた武藤敏郎氏が、日本の金融業界の代表を引き連れてベトナムを訪れ、ベトナムの金融担当の閣僚と両国の経済協力について話し合った。グエンタンズン首相も日本の来賓と会談し、両国の友好を深めた。 *ハノイ市で月例の閣僚会議が開かれ、役人が現状報告を行った。貿易赤字は1百億ドルを越え、輸出の20%に相当する。その結果、国内では外貨が不足し、闇市場ではドンが大きく切り下がっている。また政府が景気の刺激策として巨額の資金を投下しているため、インフレの危険が大きくなっている。グエンタンズン首相は、全ての政府機関と地方の人民委員会に、インフレを無くして経済を安定させるため、全力を尽くすよう指示を出した。(訳者注:経済は、首相の指示だけで安定するほど簡単なものではない。) *ベトナムを援助する外国政府と国際機関の会議が明日から始まるが、その前に国内と海外の企業家がハノイ市に集まり、ビジネス討論会が開かれた。ベトナムの経済発展に必要な事を企業家が提案し、それを政府の政策に反映させる。企業家は、最大の問題は劣悪な社会基盤だと意見を述べた。道路や港湾施設の能力不足や頻繁に起きる停電は、企業の生産活動を大きく阻害している。また面倒な行政手続きや、法律が正しく機能しない状況が、企業家に大きな負担を与えていると述べた。 *ドイツ政府は、ベトナムに1億8千万ドルの優遇融資を行うと決めた。この資金でベトナムの送電網を新しくし、送電ロスを少なくする。 *日本とメコン川流域の国(ベトナム、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー)の代表がCan Tho市に集まり、貿易や観光を通して地域を発展させる方法を話し合った。出席者は、日本の資金援助で開発を図りたいと語った。(訳者注:関係国からは大臣が出席したが、日本の代表は外務省の役人。日本は金だけ出すが、政治家の労力は出さないと言う怠慢な態度がいつも現れる。) *ベトナムを援助する外国政府と国際機関の代表がハノイ市に集まり、来年の援助を検討する会議が始まった。その席で世界銀行は25億ドル、アジア開発銀行は20億ドル、日本政府は16億ドルの資金援助を発表した。外国の代表は、世界的な景気の悪化にもかかわらずベトナムは経済成長を続けていると、賞賛の言葉を述べた。しかしグエンタンズン首相は、ベトナムは多くの問題を抱えており、少しでも多くの援助が必要だと語った。(訳者注:日本では去年のこの時期、ベトナムの援助プロジェクトに汚職が発覚し、資金援助を凍結した。しかし直ぐに再開し、最終的に16億ドルの援助を約束した。) *ホーチミン市に関係する役人と国会議員が集まり、外部の住民が同市に転入するのを規制する法律を検討した。近年は外から同市に転入する人が急増し、同市は急激な人口増加で大きな問題が起きている。(訳者注:15年前まで国民には住所変更の自由がなく、自由に住む場所を変える事はできなかった。一方で貧困な農民は、強制的に中部山岳地帯やメコンデルタの南東部へ移住させられた。) *中央政府は国営企業と政府機関の監査を行い、不当な支出3億6500万ドルを発見した。市場を独占する国営企業や、貧困撲滅などを担当する政府機関に、多額の不当な支出が有った。 *ホーチミン市には、私立の大学と同じく私立の高校もたくさんできた。今では高校生の18%は私立の高校に通う。しかし私立の高校は、設備が非常に劣る。まず自前の校舎が無い。ビルの空き部屋を借りて教室にし、一つの高校が数か所に教室を持つ。そして体育館も校庭も無い。また借り部屋の都合により、教室は頻繁に変わる。待遇が悪いから、教師も頻繁に変わる。ほとんどの私立高校は小規模で、学生の数が1百人未満と言う高校もある。これらの高校は学生が集まらないから、他の高校を退学になった学生を受け入れる。同市には学校の設立基準が有るが、全く守られていない。なぜこの様な高校の設立が許可されたのか、本当に疑問である。 *ベトナムの援助国・機関の会議で、その他の国も援助額を発表し、最終的にベトナムは80億6千万ドルの資金援助を受ける事が決まった。これは過去最高の金額である。 *ノンドクマン書記長は北部のThai Nguyen省を訪れ、地元の国会議員と共に有権者に先の国会の決議を説明した。地元の住民は、共産党と政府は立派な政治を行い、ベトナムが益々発展するのは非常に喜ばしい事だと意見を述べた。 *日本経団連の御手洗会長がベトナムを訪れ、グエンミンチェット大統領と会談した。両国の緊密な関係を祝福し、今後は更に関係を強化する事を約束した。 *ヨーロッパ諸国(EU)が発表した新しい規定によると、海産物を輸出する企業は、どの漁船がどこの海域でいつ取った魚か、輸出書類に明記する事が求められる。しかしベトナム政府は指導を怠り、漁民はそんな規定は全く知らない。この規定は来年の1月1日から有効になるので、水産物の輸出に大きな障害が出る。 *北部は雨季の降水量が少なく、今年は深刻な旱魃に見回れる危険がある。紅河の水深は過去最低で122cmしか無い。上流にあるダムも、蓄えた水は例年より少ない。既に紅河では大型の貨物船の運行が止まり、輸送にも影響が出ている。農業省は農業用水が不足する地域に、稲の代わりにモロコシを植えるよう指示を出した。 *今年になってホーチミン市のタンソニャット飛行場で多額の現金を持ち出そうとし、税関に見つかった外国人は12人で、違反金の合計は40万ドルに達する。外国人が申告しないで持ち込んだり持ち出したりできる金額は、1人7千ドルまでである。税関は外国人の現金持ち出しを、更に厳しくチェックする方針である。