2011/09/07(水)13:13
フォンターナ・フレッダ社の新しいブランド「ミラフィオーレ」その近現代史
インポーターさんが主催するフォタナフレッダ社の「ミラフィオーレ」
ブランドのワインをメーカーズ・セミナーテイスティング会に出席
してきました。
スピーカーは、フォンタナフレッダ社の取締役営業部長の
ロベルト・ブルーノ氏
でした。
僕と同い年ですが(^^;)、風格というか、頭の良さが比べるべきも
ないという感じで、きっぱりとした、歯切れの良い話しっぷりが
印象的でした。
「ミラフィオーレ」はピエモンテはランゲ地方の大生産者
フォンターナフレッダ社
の新しく、同時に古いブランドの名前です。
なぜ「新しくて古い」のか?
まず、「古い」の部分ですけど、フォンタナフレッダ社って
おそらくは、イタリアで一番「由緒正しい」生産者なんだと
思います。
というのも、その創始者というのは、イタリア国王である
ヴィットーリオ・エマヌエーレ 2世
で、彼が「千の花が咲き誇る地所=ミラフィオーレ」をローザ夫人に
プレゼントして、その二人の息子である
エマヌエーレ・アルベルト・ミラフィオーレ
が受け継いでできた生産者なんですね。
妻に購入した土地の名を取って、ローザ夫人は
ミラフィオーレ・フォンタナフレッダ伯夫人
の称号を与えられていたんです。「ミラフィオーレ」はトリノ郊外
の土地。フォンタナフレッダは、ご存知、バローロのセッラルンガ
ダルバの土地の名前。
そもそもフォンターナフレッダ社って、王家系の経営だったんですね。
そして「ミラフィオーレ」は、このエマヌエーレ・アルベルト・
ミラフィオーレの新しい経営センスの御陰で、バローロの知名度を
世界レベルに引き上げることに成功したそうなんです。
またイタリアでいち早く、
mezzadria メッツァドリアといわれる折半小作制を廃止して
農民たちに集合住宅を与え、すべての労働者が社会保障を受けられる
制度を導入するんですね。
ロンバルディア州に「クレスピ・ダッダ」という世界遺産がありますが
あの「労働者の理想郷」とも言われた、「近代のはじまり」とも
いえる精神世界ですよね。
日本の時代では「あゝ野麦峠」なんか連想しちゃいますが(^^;)
近代国家が通り過ぎるべきして通る、社会主義に通じる時代背景が
あります。
でも、その創始者が経営から外れると共に凋落が始まって、その
ブランド名をあの
ガンチャ社
に譲らなければならないレベルまでになってしまったそうです。
生き残ったのは、セッラルンガ・ダルバ、すなわちランゲにある
バローロのエステート=フォンタナフレッダの名前のみとなりました。
これが1932年の出来事。
フォンタナフレッダ社は、ピエモンテ随一の大量生産者ワイナリーと
して、またバローロの生産でもおそらく全体の10%以上は生産して
いるワイナリーですが、1999年に新進気鋭のエノロゴである
ダニーロ・ドロッコ氏
が来るまでは、質的にはかなりひどい生産者だったと記憶します(^^;)
果実味の薄い、「伝統」にあぐらをかいただけの生産者という感じ
でした。今で言えば、良く言えば「伝統派」なんですが、ブルーノ・
ジャコーザの足元にも及ばない、という感じ(^^;)
この新しい醸造家の下でフォンタナフレッダ社は質的にも充実
し始めるわけですが、ここまでが、「古い」方の話。
かつて、ミラフィオーレがイタリアの王家の一人によって、世界的に
躍進した時代があったということですね。
で、「新しい」方のはなしですが、この生産者には非常に先見の明が
あるということ。それは、この「ミラフィオーレ」の商標をガンチャ
社から、再び買収して、このブランド名のみならず、ワインの味わい
やスタイルも、当時そのままの形でリバイバルしようとした点が
とても興味深いんです。
ダニーロ・ドロッコ氏主導のフォンタナフレッダ社のランゲワインは
いわば、土地の個性ももちろん重要視しながらも、スタイル
そしてマーケット共に「アヴァンギャルド」な方だと思うんです。
モダンで都会的。インターナショナルにして、とても洗練されている。
ブランドとしてのミラフィオーレの立ち位置は、ワインのマーケット
としてはもっとニッチでマニアックな地点にあるようです。
つまりは、100年前と変わらぬ醸造を駆使。
もちろん様々なプロセスにおいて近代醸造を踏まえた上での
テクニックでしょうが、いわゆる「アヴァンギャルド派」の
果実の大げさな凝縮はありません。
味わいは極めて牧歌的で田舎的だけれども、田舎臭さとは
裏腹の洗練の極みとでもいうような、ランゲの霊魂が宿った
ようなワイン。
ちょっと大げさかな(^^;)
でも、いい意味での素朴さが充満してて、今回6種類の
ワインをテイスティングさせてもらいましたが、充実した
時間をいただいた思いがあります。
ワインについては明日書きます。