イタリアワインスクール「ヴィーテ」中級編カラブリアその2
2本の白ワインのあとは、赤ワインのテイスティングです。最初はやはりリブランディからスタンダードな赤。ガリオッポ100%。カラブリアの土着ブドウといわれるブドウです。このガリオッポとカベルネ・ソーヴィニョンをブレンドしたグラヴェッロというワインが、”かつての醸造コンサルタント”(前日の日記参照)によって作り上げられ、ガンベロロッソ誌でトレ・ビッキエーリをカラブリアで初めて獲得したことで、一躍イタリアワイン界のスターダムに上っていくことになるのですが。僕の経験ですが、若くして比較的色素や酸も、そしてタンニンもやや粗めながら充実しているブドウ品種ですが、瓶熟が異様に早いように思います。リブランディ社では、このロッソもロッソ・リセルヴァもステンレスタンクのみでの熟成を行いますが、そのあたりにもグラヴェッロの特徴が見え隠れしているように思います。シンプルな赤に関してですが、南イタリアの太陽をふんだんに表現した赤ながら、シチリアのネロ・ダーヴォラ、あるいはプーリアのプリミティーヴォのような極めてアグレッシヴな果実味の濃さ、アルコールの濃さは持っておらず、バランスの優れた、やや引きのある味わい、そして強い個性としてのミネラルを感じさせる面白いワインだと思います。リセルヴァも同様です。なんと3年もステンレスで熟成させるのですが、ステンレスというのはいわばほぼ還元状態の熟成になるわけで、それでここまで熟成香、熟成の味わいがしっかりと出てくるのが実に不思議です。しかし、このワイン、ついにトレ・ビッキエーリ取ったんですよね、今年のイタリアワイン年鑑で。確かに深み、個性共にしっかりとしているものですが、いわゆるトレビッキエーリを獲得するようなワインかといえば個人的には???な感じがします。点が甘いんですよ。いえ、良いワインなんですよ。でもね~~~。トレビッキエーリもDOCやDOCGのように余り価値のないものにこれからどんどんとなっていく・・・・つまりガンベロロッソやその他のワイン評価本が今後は衰退していくしかないもののような気もしないでもない。あ、でも南イタリアでは、屈指のワイン、そして何よりもコストパフォーマンスはイタリア屈指、素晴らしいものがありますから、まだ飲まれていない人は絶対に試さないといけません!最後のワインは、リブランディ社を離れて、カラブリアのアヴァンギャルドな世界に足を踏み入れてみました!かのトゥア・リータの醸造コンサルタント、ステファノ・キョッチョリ氏が足のつま先でがんばっております。おそらくは、栽培においても、とんでもない仕立て、とんでもない収量を展開していることと思います。トゥア・リータのワイン作りのように。チロDOCがイオニア海側のDOCであるなら、このサヴートはシチリア側のティレニア海に属するDOCであります。ガリオッポを45%を中心に、グレコ・ネロ15%、マリオッコ・カニノ15%その他ネレッロ・カプッチョ、サンジョベーゼなどのまぜこぜワイン・・・でも南イタリアらしくてこのブレンドには非常に好感が持てます。果実の凝縮はいわずもがな・・・ならばあんたどこのワイン?とも言いたくなるような良く似た甘く「偉大な美味しさ」を秘めた深みのあるフルーツの香りが強く漂っています。香りの絢爛さからして、リブランディを引き離しています。モダンであるリブランディのワインが、ちょっと田舎臭いワインに見えてくるぐらいです。これだけ色んなブドウが混ぜこぜにされて、超モダンな醸造を施すと、テロワールというものが何なのかが非常に分かりにくくなってくるようにも思えます。でも、南イタリアでそのような議論はあまり意味がないことなのかもしれません。隣の畑がどうの、こちらの畑がどうの、というような差別を太陽はしないのですから・・・・。凝縮したエキス分から、何か個性的なものを捉えるという極めてマニアックで狂信的なまでのアプローチにはあまり興味が持てませんが(^^;)ともあれ、国際マーケットがよだれをたらずワインであることは間違いありませんし、今後、必ず価格の高騰を招くワインだと確信します。常連受講生であるYさんに、またしても、差し入れワインを頂きました。確か生産者のニコーデモ・リブランディさんが、「私のデイリーワイン!」といって底知れぬ愛着を見せてくれたワインです。マリオッコという土着ブドウを使用したモダンワインです。チロDOC地区、あるいはこのワインのヴァル・ディ・ネートIGT地区は古代ギリシャのオリンピックの勝者へのワイン「クリミッサ」の生産地区として有名な場所です。マーニョ・メゴーニョとは、ローマ時代の百人隊長(古代ローマ軍の最小グループは百人)の名前だそうですね。古代の匂いをぷんぷんとさせる名前ばかり出てきます。そういう指紋のようなものを持ちながら、脈々と続く人間とブドウとの共存関係が、このワインによって、現代に蘇っているということは素晴らしいことですよね!Yさん、貴重な機会を本当に有難うございました!さて、テイスティングが終わると料理との相性コーナーに移ります。今回会場である江坂ジラソーレさんの土屋シェフが腕を振るって下さったカラブリア料理を簡単なレシピと共にご紹介しましょう・・・ cucina calabrese di oggi●Costine di maiale e cavolo スペアリブとキャベツの煮込み 1.にんにくを香りだしたサラダオイルで、粗みじんの たまねぎ、セロリ、ニンジンを炒め、ソフリットをつくる 2.スペアリブに塩・胡椒をし小麦粉をまぶし、オイルで表面を やきかため、脂を捨てて白ワインを振りかけておく。 3.別鍋に上記のソフリットとスペアリブを入れ、水・ホール トマト・唐辛子・ローリエを加え煮込む。 4.味を整え、肉が柔らかくなったら取り出し、キャベツを 加え味を含ませる。 カラブリア料理とは、「唐ブリア」とも「辛ブリア」とも言われるくらいに、唐辛子を使った料理がふんだんにありますが、今回のレシピでも、唐辛子をしっかりと使っていただきました。以外に、あっさりとした料理で食べやすく、唐辛子の感覚も少なくて、皆さん、あっという間に平らげていらっしゃいました。唐辛子がしっかりと入る料理について、一般的なワインと合わすというのはソムリエ的な常識では考えられないことだと思います。確かに唐辛子の香りはガリオッポの果実香と実に相性が良いのですが、辛さが突出してしまうとバランスを保つ甘さが欲しくなりますので、如何にアルコールのしっかりした南イタリアの赤ワインとはいえ、ちょっと難しい。でも唐辛子を抑えると、チロ・ロッソに抜群に良くあって豚の風味とワインの果実が重なり合い、その上口の中をさっぱりと洗い流してくれて、とても良い相性でしたね!次回は、2月19日(木) プーリア特集です。絶対に来てよ!!http://viteitalia.com/ScuolaViteAppassionatiSud.htm