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2007.06.11
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以下は当教室の今月号のメルマガに、私が投稿した教育コラムです。

 よろしければお読み下さい。


 

■■■■■



『教育問題の扱い方』

今月はじめに、教育再生会議から、「社会総がかりで教育再生を・第二次報告~公教育再生に向けた更なる一歩と「教育新時代」のための基盤の再構築~」 という報告がなされました。

その中には、これまでより授業を10%増やすという提案が含まれています。学校や地域によって対応が違うようですが、土曜日の授業の復活などがあちらこちらでありそうです。世間の注目度も高いようで、大きく報道されました。


どう見ても公立校の授業時間を減らしすぎてしまったと思いますから、それを増やすという方向性に異論はないのですが、なぜ10%という数字が出てくるのでしょうか。というのは、ゆとり教育で減らされた学習内容は3割(30%)と言われていたからです。


もともと3割削減すれば、生徒全員が授業がわかるようになるなどということ自体が、裏付けのない暴論でリスクが高いと思っていましたが、案の定、こうしてすぐに増やされる方向になったわけです。  


ただ、そのための改革なのですが、今回の10%という数字もまた、報告を見る限り、その根拠や検討の過程が伝わってこないのです。

(教育再生会議はホームページを開設しており、そこにいろいろな資料もありますから、よろしければご覧になって下さい。議事録はまだ公表されておりません。 

     ⇒ http://www.kyouiku-saisei.go.jp/



つまり、識者と呼ばれる方々が集まっていろいろ決めるとは言っても、何か具体的目標なり、科学的な裏付けなどがないまま、感情論や世間の風潮や思い付きによって政策提言がされていないかということを指摘したいのです。


報告書には、もう一つ、従来の「道徳」をやめて「徳育」という教科を入れるとありましたが、ねらいは何でしょう。そもそもこの二つの違いがわかりますか。変えるのなら、その前に「道徳」の授業の内容はどうだったのかという分析があってしかるべきだと思うのですが、報告書を見る限り、その形跡もありません。


単なる思い付きで、教育現場に何かを指示したり、方針を大幅に変えられたりしては、それを実行する現場、つまり学校の先生方はたまったもんではありません。


ゆとり教育導入による、相対評価から絶対評価への変更だけでも混乱しますが、総合的学習の時間、小学校の英語などなど、改善のために取り組むべき問題はいまだ山積しているはずです。  


忠実にそれに従って準備をしようとするまじめな先生ほど負担が大きく、おそらく減らされた授業の中で学力を維持することにまで、とても気がまわらないのではないかと心配になります。


その上、今度はよくわからない「徳育」の授業が入るとなれば、教科書の準備や教材研究に当てる時間が必要になります。未知の科目ですから当然です。


そもそもこの会議の座長を務める、野依良治氏。ノーベル賞を取った世界的大学者ですが、この会議の初会合で、自分が子どもの頃は、部活もやっていたし塾など行っていなかったと"個人の経験"を引き合いにして、「塾を禁止すべき」と言って失笑を買った人物です。これなら誰にでも言えますね。


再生会議の17人のうち教育現場を知っているのは二人だけという指摘まであります(藤川大祐・千葉大学教育学部助教授)。


こういう問題はノーベル賞学者や大会社のトップ、メダリストなどの有名人じゃなくて結構。  


現場を熟知している方、学力向上などの実績を上げている方々を集めて、議論をかわしていただきたい。そして何かを変更する場合には、その根拠となるデータや研究結果をぜひ公表してほしいというのが私の意見です。学校現場とかけ離れた提言は百害あって一利なしと考えます。

 

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Last updated  2007.06.11 21:54:40
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