クライバーのベートーヴェン7番
クライバーの新譜、ベートーヴェン7番を聴いた。 おそらく全世界のクライバー・ファン待望の新譜なのだが、これがあけてびっくり、あの大ヒットした4番と同じ日の録音なのだ。 その4番のアルバムは、1982年5月3日の“カール・ベーム追悼”演奏会の記録。美しさと力強さの見事な融合、繊細さと大胆さを悪魔的なまでに操り、怒濤のように終楽章になだれ込む。あっけにとられるほどのダイナミックな演奏にクラシックファンは皆度肝を抜かれ、クライバーの名声を不動のものにしたのだ。 今回の7番はその同じ演奏会の後半で演奏されたもの。「なんで今頃?」という疑問を誰しも持つと思うが、「録音恐怖症」を自認していたクライバーが生前、ストップをかけていたらしい。では4番がなぜリリースされたかというとチャリティ目的であった、などというのは私も今回初めて知った。 演奏は4番同様、ライヴの高揚感もあって冒頭から突っ走る。75年のDG盤よりも両端楽章がそれぞれ2分程短く、緊張と解放が絶妙なタイミングでブレンドされて聴く者を酔わせる。素晴らしい演奏と言っていいだろう。 ただし、気になったのが音質。今回はSACD仕様も兼ねており、ORFEOは相当な自信があったようだが、もとはステレオのデジタルリマスター。一聴して低音域がなにか軽く、重低音に迫力がない。高音も輝きがないというか、乾いて切れ味に欠ける印象。う~ん、気のせいか? と思って4番のCDを引っ張り出して聴いてみると、こちらは素晴らしい低音の伸び、高音の切れ味が楽しめる。同じ日の録音で同じ会社がリリースしているのに、この差はなにか?収録自体は同じ機器で行われたはずだから、これはもう今回のデジタルリマスターを担当した技師の主観によるものとしか考えられない。それともSACD仕様CDを通常のCDプレーヤーで再生したからなのか? ということで久々のクライバー、演奏は素晴らしいのだが録音に多少疑問が残る出来、という印象だった。こちらです ORFEOレーベル C700051 B こちらが伝説の4番ですORFEOレーベル C100841 Bクリックいただけましたら幸いです