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悩んだ末に行きついたのは、伏見稲荷へ行く事だった。
中国に居る時から、行きたがっていたからだ。 ”春休みに行こうね”と話していたが、それは、ずっと中国で暮らす事が前提の時の予定だった。 突然の本帰国で、引っ越しやら、入学の準備で、”とてもそんな時間は無いね”という事で、延期していた。 時折、”部活をやって居ると、夏休みも、ずっと練習があるって。”と言っていた。 それは、恐らく、”伏見稲荷には、行けないかも知れない。”という意味だったと思う。 何故、伏見稲荷か、と言うと、詳しく言うと長い話になるが、歌を通じて、九尾の狐に興味を持ち、その流れで、稲荷神社に興味を持ち、伏見稲荷になったのである。 私も、いろいろ調べて、那須の殺生石が、九尾の狐のかけらである事を知った。 朝、ぐったりと寝ているルナに、話しかけた。 ”京都行こうか、伏見稲荷、行ってみないか?” すると、すくっと起きて、”行く。”と答えるではないか。 それから、直ぐにホテルの予約やら、新幹線のチケットを手配した。 私は、18年前に京都に住んでいたが、伏見稲荷は、行った事が無かった。 これまた、深い訳があって、怖くて行けなかったのだった。 でも、仕方ない、行くしかない。 不登校になると、外の世界から遠ざかる。 一度、闇に落ちてしまうと、そこから這い上がるのは、大変だ。 落ちた深さが浅い程、上りやすい。 このまま、闇に入らないようにするためには、外の世界とつながる事、そのための、伏見稲荷。 どんな結果が出るか、解らない。これは、賭けだ。 山手線が東京駅に到着した時、突然”家に帰りたい。”と言い出した。 顔を見れば、真っ赤だし、相当のストレスがあるようだ。 私の中にも、緊張が走った。 でも、何食わぬ顔をして、エスカレーターを降り、”ここで、弁当を買おう。”と言ったら、好物のそぼろ弁当を見つけ、喜んでいる。何とか、切り抜けた。 ”お母さん、伏見稲荷って、鳥居多いの?” ”多いと思うよ。行けば、解るじゃないか?” 夜遅く、京都に到着して、朝、ホテルを出発し、JR奈良線で稲荷で降りた。 本堂の所で、お守りを買ったり、おみくじを引いたりして、もう、これで十分な感じもしたが、鳥居をくぐらないとね、と思い、歩き始めたら、参った。 伏見稲荷って、稲荷山なんですね。 標高は、233m位。 階段状で、鳥居は、ずっと、ずっと続いた。 足がつりそうで、息も切れてきたら、ルナが、私の荷物を持ってくれた。 何とか、三ツ辻まで上ると、茶屋があり、休憩する事にした。 そこで、私は、きつねうどん、ルナは冷やしうどんを頼んだ。 ルナは、きつねうどんのスープが飲んでみたい、というので、あげたら、 ”美味しい”との事。 ”関西は、美味しいよ。” と話した。 それから、又、更に登って、四ツ辻へ到着して、又、茶屋で休んだ。 ”もう、この辺で、いいじゃないか?”と私は、言った。 正直、もう、へとへとである。 すると、”嫌だ、頂上まで行く。” ”もう、鳥居は、十分、見たじゃないか。” ちなみに、伏見稲荷全体では、1万もの鳥居があるそうだ。 ルナは、どうしても、頂上まで行くと言うので、気を取り直して、頂上まで行った。 最後は、ルナもフラフラで、私の荷物は、自分で持った。 もう、これは、神社参拝では無くて、登山だった。 でも、何だか、達成感があった。 生きている、感じがあった。 山を下り、京阪への道のりは、いろいろな店が並び、ルナは、冷えたパイナップルを食べて、ご機嫌になった。 そして、丁度、電車が来たので、飛び乗ったのだが、その時に、ルナはSUICAを入れていたケースを落としてしまった。正確に言うと、運良く、SUICAは、電車の中に落ちたが、その鎖が、どこかで切れて、無くなっていた。 そのケースは、ルナのお気に入りのアニメキャラクターのもので、映画館で購入したものだった。 ”SUICAは、残って良かったね。”と話し合ったが、落ち込んでいる様子だった。 おみくじは、小吉で、失せ物は見つからない、と書いてあった、から、当たった、とルナが言う。 2駅目の東福寺へ到着する前、私は、決心した。 ”じゃ、もう一度、戻ろう。” ”無かったら、どうするの?” ”お母さんのおみくじは、大大吉だったから。お母さんが、探す。” それっと、降りて、反対側ホームへ行き、折り返した。 伏見稲荷駅の駅員さんに、事情を話したら、”届けられていない”と言われた。 それで、京都方面の改札へ行き、改札の所から、ホームの方へ目をやると、キラっと光ったものが見えた。 ”あれじゃないか?” 大声で騒いでいたら、駅員さんが、どうぞ、入って見て下さい、と改札を通してくれた。 走っていくと、まさに、SUICAケースのチェーンだった。 ”あったよ!!ほらぁ!!” 私は、本当に嬉しかった。 100%見つかると、思っていなかったので、無かった時のフォローの言葉を探していたから、本当に嬉しかった。 見れば、ルナも嬉しそうだった。 けれど、後で言われたのは、 ”もし、これが東京だったら、本当にあなたって恥ずかしい。” まったく、思春期の子供って、嫌だね、と思う。 ホテルへ帰ると、ぐったりで、他にも予定をしていたが、取りやめた。 そんなこんなで、帰りの東京行きの新幹線に乗る前に、きつねうどんを食べたが、美味しくなかった。 ルナは、言った。 ”又、お守りを納めに、伏見稲荷へ行く。そして、きつねうどんを食べる。” ”お守りってさ、他の神社に納めてもいいんだよ、それに、又、あそこまで、登るの?” ”あそこじゃないと、美味しくない。” ”・・・まぁ、そうだけど。” 見ると、闇から這い上がったルナだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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