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トラックが眼前に迫り、見えなかったものが見えた。
しがみつく灰人同様必死な運転手。 何故車があるのか。 分からないが歩くより遥かに確かな移動法。 果てなく続くこの世界で、誰もが欲する。 群がる人はそれを奪いたい。 動かす人は独占していたい。 誰もが単純な動悸に駆られて車に飛び乗る。 危険などお構いなしだ。 もう失って等しい命を惜しまないようで必死で繋ぐ。 車のドアが剥がれ落ちた。 必死にハンドルをきる。 数人が激しく振り落とされる。 立ち上がる間もなく轢かれ死ぬ。 よく見れば車の通ってきた道は死体だらけだ。 誰かが助手席に飛び入る。 すかさず殴り飛ばす。 前輪の鉄板にしがみつく。 間髪入れず蹴り落とす。 しばらく私の目の前でトラックはふらついた。 目の前まで来たも足を踏み出せない。 群がる死んだ瞳が怖かった。 すると鋭く鈍い音が響いた。 銃声だ。 運転手が猟銃を持っていた。 黒い世界に赤い血が舞う。 直ぐさま灰に溶けて黒くなった。 それでも人はしがみついた。 数発の銃声に私は動けなかった。 音が止んで間もなく。 運転手が引きずり落とされた。 群集の足に踏み殺された。 群がる人と飛び付く人でままならない運転のままトラックは遠方に消えた。 そして私の前に運転手の死体と黒い赤だけ残った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.09.28 12:46:24
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